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堂洞取出攻めらるるの事其陸
葵と謎の影が刃を突き合わせている隙に、左京は素早く軍勢を引き揚げさせました。
(其方の死は無駄にはせぬ)
左京はあっさりと葵を見限りました。
「私は死んでおりませぬ!」
敵と戦いながらも、突っ込みを忘れない葵です。
「死ね!」
敵が葵に急接近しました。
「くう!」
葵は辛うじてその斬撃をかわし、ようやく敵の顔を見定めました。
「お前は、星一族!?」
葵は驚愕しました。敵はスラリとした美女でした。
自分より遥かに美人なので、ムッとする葵です。
「うるさい!」
正直な意見を述べただけの地の文に切れる葵です。
「我が名は薫。今日のところはこれにて」
その美女はニヤリとすると、追撃を諦めた龍興の軍勢と共に引き揚げました。
「薫……」
葵は引きつりました。
(薫とは一族最強の忍びと噂されている女だ)
葵は美咲と茜を伴い、樹里の元へ戻って、事の次第を話しました。
「星一族は、其方達、月一族の宿敵でしたね」
樹里はそれでも笑顔全開で応じました。




