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上総介殿形儀の事其弐
左京の出立ちは、如意棒に水玉模様のつなぎという変わったものでした。
「違う!」
前々世と何かをごちゃ混ぜにした地の文に切れる織田三郎左京です。
左京は、湯帷子の袖をはずし、半袴をはき、火打ち袋をぶらさげ、髪は茶筅に結い、紅や萌黄の糸で結び、太刀は朱鞘のものです。
そんな格好をすると若い女の子にモテると思っていたようです。
「そ、そのような邪な思いなどないぞ!」
図星を突かれ、動揺が隠し切れずに言葉が拙くなっている左京です。
その上お付きの者には朱色の武具を着けさせました。
市川大介という弓の名人を呼び寄せてこれを習い、橋本一把には鉄砲の稽古を、兵法の指南を平田三位に仰ぎました。
鷹狩りもよくしていました。
(一体若は何を考えておいでなのか……)
教育係である平手政秀は頭を抱えました。
「そうなんですか」
左京の正室となった樹里は何故か笑顔全開でした。
(樹里様……)
そんな樹里にゾッコンの左京は哀れだと思う地の文です。




