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家康公岡崎の御城へ御引取りの事其弐
続いて、左京は加冶屋村を焼き払い、また野陣を敷きました。
翌日、今度は伊保(現在の豊田市)の城を自ら攻めました。
麦畑を薙ぎ払い、そこから更にすぐさま矢久佐の城を攻めました。
また麦畑を薙ぎ払って帰陣しました。
まるで小学生の日記みたいだと思う地の文です。
「うるさい!」
率直な意見を述べただけの地の文に切れる左京です。
「そうなんですか」
樹里は笑顔全開で応じました。
そこへくノ一の中で年増の葵が戻ってきました。
「うるさい!」
正しい年齢設定を伝えた地の文に理不尽に切れる葵です。
「武衛様(尾張の国の守護の斯波義銀)が今川方と通じているようです」
葵が跪いて告げました。
「何!?」
芝居ががって驚いてみせる左京ですが、
「そうなんですか」
樹里は笑顔全開で応じました。左京は自分の大袈裟な反応を恥じて項垂れました。
「武衛様のご様子、逐一報告するように」
樹里は笑顔全開で命じました。
「承知しました」
葵はフッと姿を消しました。




