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大柿の城へ後巻の事其参
清洲衆との和睦が成立した事を喜び、平手政秀は坂井大膳達に和睦を祝う書状を送りました。
その中に織り込んだ一首が、有名な紀貫之の和歌です。
袖ひぢて結びし水のこほれるを春立つけふの風や解くらむ
細やかな心遣いのできる風雅な人物でしたが、うつけの左京のせいで死んでしまうのです。
「ネタバレさせるな!」
先読みをしてしまった地の文に切れる織田三郎左京です。
(今は退くが、いつかは捻り潰してやる)
坂井大膳は煮えたぎる腸を隠して、顔では笑ってみせました。
(獅子身中の虫が収まってくれればよいが)
政秀も大膳の腹の底を読み、不安に思っていました。
(殿がご健在のうちはよいが……)
バカ丸出しの左京なので、気が気ではない政秀です。
「更にうるさい!」
真実を述べただけの地の文に理不尽に切れる左京です。
きっと将来、都の本能寺で明智十兵衛光秀に討たれると思う地の文です。
「ネタバレさせるのはやめろ!」
もう一度地の文に切れる左京です。




