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今川義元討死の事其拾参
河内二の江の入道であるうぐいらの服部友定は義元と示し合わせ、武者船を千艘ばかり、海上に蜘蛛の子を散らしたように大高城の下、黒末川の河口まで乗り入れたのですが、これといった働きもなく、引き返しました。
引き返す途中、熱田の港へ船を寄せ、遠浅の所から陸に上がり、町に火を放とうとしましたが、町人達がわざと引きつけてどっと攻めかかり、数十人を討ち取る間に、どうする事もできないまま、河内へ戻りました。
上総介左京は馬に義元の首を下げさせ、急いで清洲城に戻りました。
樹里の膝枕が楽しみだったからなのは内緒にする地の文です。
「ばらしてるじゃねえか!」
血の涙を流し、口が泡よりも軽い地の文に切れる左京です。
そのお陰もあって左京は日のあるうちに城に到着しました。
すぐにでも膝枕を堪能したかった左京ですが、三千余りもある敵の首を翌日実検するので、そんな暇はありませんでした。
「ううう……」
項垂れながらも指図する左京です。




