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今川義元討死の事其漆
左京は更に続けました。
「敵がかかって来たら退け。退いたら追え。何があろうと、敵を倒し、追い崩すべき事など、考えてみるまでもない。敵の持ち物には目もくれるな。打ち捨てておけ。戦に勝ちさえすれば、この場に参加した者は、家の面目、末代まで高名ぞ。只、励め」
左京が語っているところへ、前田又左衛門利家、毛利河内長秀、毛利十郎、木下雅楽助嘉俊、中川金右衛門、佐久間弥太郎、森小介、安食弥太郎、魚住隼人らが、手に手に敵将の首を取って持ってきました。
左京はこれらの者達にも策を告げました。
山際まで軍勢を進めた時、石か氷を投げつけたような激しいにわか雨が降り始めました。
今川勢には真正面から、左京達には背後から雨が打ち付けました。
(樹里様の仰せの通りになった)
左京は、くノ一から聞いた樹里の見通しを思い出し、身の毛がよだちました。
(一体樹里様は何者?)
怖くなる左京ですが、
(可愛いから差支えなし)
ニヘラッとしました。




