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御徒町樹里の信長公記(四百文字小説)  作者: 神村 律子
首巻 是は左京御入洛なき以前の双紙なり
12/2152

大柿の城へ後巻の事其弐

 時を同じくして、等京が美濃に攻め入っていた留守に清洲衆が等京の古渡城に進軍し、火を放ちました。


 等京はすぐさま尾張にとって返し、反転攻勢に出ました。


 清洲衆の家老には坂井大膳、坂井甚介、河尻左馬丞与一、織田三位がいて、守護の斯波しば義統よしむねや守護代の織田大和守信友はお飾りでしかなく、彼らが実権を握っていました。


 尾張は尾張で、等京が守護や守護代を凌ぐ勢いを持っていたので、どっちもどっちです。


 そんな間柄ですから、いざこざは絶えず、常に相手の隙を窺っている状態なのです。


 等京の重臣である平手政秀は何度も清洲側に書状を送りました。


 しかし、和睦は難航しました。何故なら、等京の嫡男の三郎左京がバカだったからです。


「違う!」


 勝手に事態を脚色をした地の文に切れる左京です。


 それでも政秀は根気強く粘り強く清洲の坂井大膳らと交渉を続け、翌年の秋には講和が成立しました。


「そうなんですか」


 それを知った樹里は笑顔全開で応じました。

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