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今川義元討死の事其陸
家老達の反対を黙って聞いていた左京ですが、
「くだらぬ! 其方達は型通りにしか考えられぬのか?」
樹里に教えられた通りに間違わずに言いました。
「それをばらすでない!」
涙目で地の文に抗議する左京です。
「そこをどけ! このまま進むぞ!」
馬の轡に取り付く家老衆を振り切り、左京は進みました。
この時、左京の軍勢は二千に届かない数でした。
中島からまた兵達が出撃しました。この時は、左京に縋りつき、左京の出陣を止めようとしたのですが、左京は、
「敵方の兵共は、宵に兵糧を使い、夜を徹して軍勢を進め、大高へ兵糧を運び込み、鷲津と丸根に手間取り、精魂尽き果てているはずだが、こちらは十分休息をとった兵だ。それから、『小軍であろうとも、大軍を恐れるな。勝運は天にある』という言葉を知らぬのか?」
今川の軍に怖じ気づきそうになる味方の兵を叱咤激励しました。
(樹里様、うまく言えました)
教えられた通りに言えて、心底ホッとする左京です。




