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御徒町樹里の信長公記(四百文字小説)  作者: 神村 律子
首巻 是は左京御入洛なき以前の双紙なり
119/2152

今川義元討死の事其陸

 家老達の反対を黙って聞いていた左京ですが、


「くだらぬ! 其方達は型通りにしか考えられぬのか?」


 樹里に教えられた通りに間違わずに言いました。


「それをばらすでない!」


 涙目で地の文に抗議する左京です。


「そこをどけ! このまま進むぞ!」


 馬のくつわに取り付く家老衆を振り切り、左京は進みました。


 この時、左京の軍勢は二千に届かない数でした。


 中島からまた兵達が出撃しました。この時は、左京にすがりつき、左京の出陣を止めようとしたのですが、左京は、


「敵方の兵共は、宵に兵糧を使い、夜を徹して軍勢を進め、大高へ兵糧を運び込み、鷲津と丸根に手間取り、精魂尽き果てているはずだが、こちらは十分休息をとった兵だ。それから、『小軍であろうとも、大軍を恐れるな。勝運は天にある』という言葉を知らぬのか?」


 今川の軍に怖じ気づきそうになる味方の兵を叱咤激励しました。


(樹里様、うまく言えました)


 教えられた通りに言えて、心底ホッとする左京です。


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