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大柿の城へ後巻の事其壱
織田等京は大垣城へ斎藤道三の軍勢が攻めてきたと聞き、木曽川を越えて美濃と尾張の国境に近い竹が鼻(現在の岐阜県羽島市)を焼き討ちにして、茜部(現在の岐阜県岐阜市)の入口まで攻め入りました。
道三は機を見るに敏な人だったので、大垣城の包囲を解き、居城である井口(現在の岐阜市)の稲葉山城に引き上げました。
等京はこの素早い攻撃で手柄を立てたのは言うまでもありません。
この頃、嫡男の三郎左京は洟垂れ小僧でしたので、何の役にも立っていません。
「うるせえ!」
率直な意見を述べただけの地の文に切れる左京です。
(父上のように早く戦場を駆け巡りたいものだ)
呑気な左京はそんな事を考えていました。そして、
(樹里様に会いたい!)
敵対している斎藤家の姫である樹里の事を思い出しました。
(戦国の世とは悲しいものだ。許婚同士であり、敵同士であるとは)
柄にもない事に悩む左京です。
「更にうるさい!」
またしても地の文に切れる左京です。




