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丹羽兵蔵御忠節の事其伍
そんなやりとりがあった事を聞いた京童達は、二通りに解釈しました。
「大将の器にない言葉だ」
「いや、似合っている」
数日後、左京は守山(現在の滋賀県守山市)まで下りました。
その翌日は雨が降っていましたが、夜明け頃には出立し、相谷(現在の滋賀県東近江市)から八風峠を越え、清洲まで二十七里(約百六キロメートル)を進み、その日の寅の刻(午前四時頃)には清洲城に帰りました。
「お帰りなさいませ」
驚いた事に樹里は起きて待っており、出迎えてくれました。
「樹里様!」
樹里の膝枕を堪能したい変態猿は狂喜しました。
「猿ではない!」
そこにだけ反応する左京です。変態なのは認めたようです。
「へんたいとは何ぞや!?」
意味がわからないので切れ方が若干緩い左京です。
「そうなんですか」
樹里は笑顔全開で応じました。
今回の件も、くノ一達の知らせを受け、樹里が指図したのは内緒です。
「だから内緒にしろー!」
涙ぐんで地の文に切れる左京です。




