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序章、夢告げ
地都の西、六海ロッカイの地に乙女あり。
その身に花を宿す――
北の鹿骨にて、夢告げ巫女が鳥笛を鳴らす。いわく、神々を総べる天帝が暁に夢枕に立ち、かくのごとく託宣をしたと。
「地都の西、六海の地に乙女あり。その身に花を宿す。かの乙女こそ、天帝の花嫁たる娘なり」
報せを受けた天都では、たちまち上から下に至るまでの大騒ぎとなった。今は眠れる天帝が嫁取りを宣言するのはおよそ千年ぶり。白羽の立った乙女は、六海にいるのだという。
「花嫁を探せ」
天帝に仕える天の一族の長は、眷属である鳥の一族、ならびにアルキ巫女たちにすぐさま命を飛ばした。六海の乙女らをあらため、花を宿した娘を見つけ出せ――。長の命令を受けたアルキ巫女たちは天道を通って六海へたどりつき、数日後、突如として消息を絶った。次に派遣された巫女たちも同様に。報せを受けた長は驚き、面を覆った。
さて、天帝の花嫁たる乙女はいずこか。




