091
バルトラードの部隊を掌握した俺は、農民反乱軍のリーダーたちの処分に踏み切ることにした。
農民反乱軍を俺が把握すれば、無駄な略奪をさせず、屯田に励ませて食い扶持は確保できる予定をしている。
ステファンに預けられた寄騎衆も魔王陛下の圧でそろそろ南下を始めるだろうし、そうすれば内乱長期化策の第一段階は完了して、俺も家に帰還できる。
俺の呼び出しに応じ、ティラナの領主の館に反乱軍のリーダーたちが一堂に会した。
バルトラード以外のリーダーは集められた理由を知らず、席についてざわざわと歓談をしている。
「私の呼びかけに応じて頂きありがとうございます。今日は農民反乱軍の今後を決める大事な話し合いをさせてもらいたい」
「今後についてですか?」
「ええ、その話はバルトラード殿からしてもらうつもりです」
屋敷の警護と称し、室内にいる兵はすでにバルトラードの手勢と、ゴシュート族の者が詰めている。
俺に呼ばれたバルトラードが部下に目配せを送り立ち上がった。
「悪いが、この農民反乱軍は俺が仕切らせてもらう。あんたらの戦いはここで終わりだ。じゃあな」
バルトラードの宣言で、リーダー全員の首が胴体と離れた。
処断されたリーダーたちの遺体を、兵たちが部屋の中から連れ出していった。
俺も随分とバイオレンス臭が漂う男になってきたな。
正直、死んだら地獄行きは確定だろうが、セカンドライフが充実した極楽生活だったら問題ない。
「ご苦労ついでに兵たちも掌握してきてくれるかい」
「おう、任せてくれ。戦闘部隊に使えそうなのは、引っこ抜いていいんだよな?」
「ああ、兵は半分ほどにする。ほかは周辺の放棄された畑で屯田兵させる」
反乱軍の大半は農兵であるため、戦闘に向かない人材も多くいる。
そいつらには半農半兵として、畑仕事に精を出してもらうつもりだ。
耕すべき土地はティラナ周囲にもいくらでもあるんで、自分たちの食い扶持は稼がせる。
「承知した。さて、じゃあ兵どもの前でリーダーたちが貯め込んでた財貨の分配してくっかー」
「多少は自分の懐に入れもいいぞ。金はあっても困るもんじゃないだろ?」
「いらんいらん、俺は強いやつと戦えれば満足だ。それよりか、カルア殿と鍛錬させてくれ。そっちが俺にとってのご褒美だ」
やっぱ脳筋の考えることは理解できん。
こっちとしては、管理がしやすくて助かるが。
あーそうだ。
鬼人族からバルトラードの嫁候補探してやっておかんとな。
肉食系女子がいいかなー。
少なく見積もっても武力95くらいは超えてそうな逸材だし。
パパ友作りもしたいな。
アレウスたんのお友達はいっぱい作っておいてやらんと。
あー、血なまぐさい現場仕事が続いてるから、お家帰ってアレウスたんのおむつ替えで癒されてぇ。
屋敷の外に出たバルトラードは大声でリーダーたちの不義理を詰り、気前よく財貨を兵たちに分け与え自分の旗下に加えていった。
多少の血が流れたが、農民反乱軍の指導者はバルトラードに一本化され、黒幕として俺が直接指示を出せるようになった。
数日後、バルトラードによる選別で戦闘部隊と屯田兵に選別は終えており、屯田兵とされた者は指定された地で農事に励んでいる。
一方、戦闘部隊は、バルトラード自身が新たに麾下に加わった兵を引き連れて、山賊退治の真っ最中である。
農村にオイタして周っていた連中は、次々にバルトラードの餌食になって壊滅させられているらしい。
これで第一段階での俺の現地でのお仕事は終わり。
あとは、ステファンが寄騎衆をけしかけて、侵攻戦で消耗させたうえで領地の召し上げを完遂すれば第二段階に入れる。
バルドラードには、万が一アレクサ王国が大軍を動員して攻めてきたら、アルカナ領に近いヒックス城にまで後退して籠城しろと厳命してる。
ヒックス城はこじんまりした城だが、わりと堅牢な造りをしているしアルカナ、スラト両面からの援護ができる場所だ。
そこにバルドラードの指揮する兵が籠れば、俺たちが駆けつけるまで十分に持ちこたえられるだろう。
農民反乱軍の緊急避難先として、整備に予算付けてもらうとしよう。
予定より持ち出しが多いから、帳簿を預かってるミレビス君がまた死んでるかも。
予算交渉には、なんぞ手土産を持っていかないといけないだろうな。
リュミナス特製栄養ドリンクとかがいいかな。
夜の方に効果はバツグンなのは、俺のお墨付きだし。
体力自慢の鬼人族の若い嫁の相手をするには必要な物。
なんか、ミレビス君のお土産考えてたら、マリーダの肌が恋しくなってきた。
そろそろ、脳筋たちが鍛錬に飽きて問題を起こしそうな気もするし、家に帰って嫁孝行しよう。
俺はバルトラードにティラナを任せると、単身赴任を終えて嫁と息子が待つエルウィン領へ帰還することにした。







