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 城内の倉庫の整理が終わり、各種管理台帳の作成という地獄の行進(デスマーチ)にミレビスを投入した。


 まぁ、後の話にはなるんだが、結論から言えば彼はこの地獄の行進(デスマーチ)を耐え抜き、エルウィン家に管理帳簿を導入した実績により『帳簿の魔術師ミレビス』と呼ばれ、財務全般を請け負う筆頭内政官として活躍するのだ。


 要は俺の右腕として財政を把握するお仕事係として有能さを示した男であるが、今はまだただのマリーダの私的従者という立場でしかない。


 そんなミレビスに帳簿作りのお仕事を任せた俺は次なる案件を解決するべく、城下の商人組合の建物に顔を出していた。


「まさか、ご当主様のご使者が来られるとは思ってもいなかったので、すぐにお迎えの準備を致します。今しばらくのお時間の猶予を」


 嘆願書を送った商人組合の組合長をしているラインベールという初老の男が、周囲の部下たちに指示を出して会見の場を大急ぎで整えさせていた。


 アポなし突撃ではあったとはいえ、嘆願書を出している者がこうも狼狽えているのを見ると、長年の鬼人族当主の放置政治の酷さが垣間見えた気もする。


「いえ、お気になされずに。こたびはラインベール殿の嘆願書に興味を持ち、詳しい話を聞きに来ただけですので」


「な、なんとっ! エルウィン家に内政に詳しい入り婿殿が来られたとの噂でしたが貴殿がその入り婿殿か?」


「ええ、アルベルトと申します。一応、身分としては当主マリーダ様の家臣という形です。祝言は上げておりませんので、まだ家臣とだけ思っていただければ」


 当主マリーダ直結の家臣と聞いたラインベールの眼が輝く。


「回りくどい話は嫌いなので単刀直入にお伺いしますが、アルベルト殿がエルウィン家の舵取りを任されていると見てよろしいですかな?」


「そう思ってもらって結構です。エルウィン家の領地の内政は私が全権委任をお受けいたしておりますゆえに」


 俺が内政の全権委任を受けていると聞いて、更にラインベールの眼の輝きが増していた。


「ならば、先だって出した取引上のトラブルの件、是非ともアルベルト殿のお力をお借りしたい。他の地域とこの地域で重さの測り方、長さの測り方が統一されておらず、取引でトラブルになりこの商人組合に駆け込んでくる者たちが激増して困っているのです」


 ようやく自分たちの話を聞いてくれる者がエルウィン家に現れた期待感からか、ラインベールはすぐに嘆願書でも取り上げていた商取引におけるトラブルの解消をお願いしてきた。


 ラインベールの困っている問題は、簡単に言えば買った場所で一キロの重さだった物が、売る場所では九〇〇グラムになっていたとか、買った所で一メートル反物が、売る場所では九〇センチだったという話しである。


 え? よくわからん。


 別に運んでいる途中で品物が干からびて軽くなったとか、反物が湿気に反応して縮んだとかいう話ではないことは理解してくれ。


 ざっくりと言うと買った場所と売った場所で使っている重さを測る天秤や長さを測る尺が違っているんだわ。それが、このアシュレイ城下で起きている取引のトラブルの大元。


 簡単に調べただけでも領内で二〇種類ほどの分銅や尺や容器が流通しているし、他国まで含めれば数万ほどの分銅や尺や容器が流通していると思われる。


 それらを当地で買った商人からすれば、一キロ分買ったつもりなのに、さて売るべき場所に着いて量ったら九〇〇グラムだと言われたら、そりゃあトラブルにもなるだろう。


 要は重さや長さを測る基準が統一されていないのである。


 ならばどうすればいいか? 


 それは簡単である領主が強権を発動して公的に認めた分銅と尺と容器でしか商取引を認めないと宣言をすればいい。公的な印を押した分銅と尺と容器以外を使用すれば罰金刑に処するとすれば、正規の商取引を願う者たちはこぞって公的な物を使うはずだ。


「その件であれば、すでに動くつもりでいます。ラインベール殿の助力をお借りして城下の鍛冶職人たちをここに集めてもらえますかな」


「こ、これはすごい。すでに手を打つ準備をされていたとは……。早急に鍛冶職人たちを呼び集めますので、しばしお待ちくだされ。イレーナっ! アルベルト殿にお茶をお出ししろ」


 ラインベールが部下たちと鍛冶職人を呼びに飛び出すと、入れ替わりに金髪碧眼のロングヘア―をしているグラマラス美女が給仕盆にお茶を載せて奥から現れた。


「父上はお客様をほったらかしにして飛び出して行かれてしまったのですね」


 目の前の金髪美女に目を奪われる。


「お気になさらず。私がお父上にお願いをしたのですから。ところで貴方のお名前は何と申されます?」


「はっ! これは失礼を致しましたわたくし先ほど会われたラインベールの娘でイレーナと申します。アルベルト様におかれましては以後お見知りおきをくださいませ」


 恭しく頭を下げたイレーナの胸の谷間が目に飛び込む。


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