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次は城下街の商人たちからの嘆願書か。何々、領内における取引物の計量上のトラブルが多発しており、なんとかして欲しいだと。
交易の拠点として城下の街は色々な国から訪れる。色々な国から訪れるとなると重りや長さは荷を積んだ国の物で計量され、それが統一されていないために街で計量の際に量や長さが違うと揉め事になるようだ。
これは、他国との兼ね合いもあるが、まずは領内の度量衡は統一した方がいいな。
俺が基準として決めた長さ・重さ・体積でのみ領内での計量販売を認めるという強権を発動させてもらおう。どうせ、納税においても物品納入では統一した物を作らねばならないので、市場の方もまとめて統一した方が初期コストも抑えられるだろうし。
領地が増えれば、増えた領地にも適用し、利便性を高めれば、周囲の領地にも波紋のように広がっていくだろうと思う。
度量衡を制する者、経済を制する。ってな感じで商圏の拡大には、こっちが設定し有利な度量衡を相手側にも使わせることで利を増やすという側面もあるのだ。もちろん、相手も商売相手が増えるというメリットを提示してやらねば、使用してくれないだろうけどね。
そういった点で言えば、アシュレイ城下は東西南北の交易街道の交差する巨大な市場である。
そのため交易商人たちもこの地での商売に旨味を感じているだろうから、領内に新たな度量衡を制定し、その計量機器でしか領内の商売を認めないとすれば、爆発的に普及すると思われる。
嘆願者の氏名をメモに控えると、決裁待ちの方へ嘆願書を入れおいた。
マリーダが受け継いだエルウィン家の領地は、内政家にとり垂涎とも言える好条件を兼ね備えたハイスペックな領地であり、しっかりと内政に手を入れ、領内を発展させられれば、あの脳筋戦士集団はエランシア帝国一、いや大陸一の武装集団になれる実力を持っているのだ。
だが、現状は歴代当主の放置主義により、領内の自治能力が異様に高い状態にまで発展してしまっていた。
これをこれ以上放置すれば、鬼人族のお飾り化がさらに進み、武力で抑えられない状態にまで自治能力が高まってしまえば、最悪領内で、血で血を洗う内戦が発生する可能性も捨て切れない。







