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 ヘイヘイ、ショタボーイ。


 モノホンのアルベルト様に触れたら、火傷するぜ!


 なにせ、伝説の男だからなっ!


 ショタボーイからの尊敬のまなざしを受け、俺はすっかりと舞い上がっていた。


 脳筋オリンピックのときもだったが、シュゲモリー派閥以外の他家の貴族から、俺に向けられる視線は『脳筋女将軍のヒモ男』が大半だったからだ。


 半分あたってるけどねっ! でも、ちゃんとお仕事も頑張ってるし、育児も頑張ってるし、嫁の孝行もしてる!


 スーパーヒモ男って言い切れるほどの活躍はしてるはずだ。


 こんな頑張ってても、貴族様たちの評価は上がらないんだよっ!


 それなのに、このショタボーイの過剰反応! マジで、こんなにフレンドリーな反応してくれるなんて! 嬉しすぎ!


 やっぱ即日でアルベルト変身セット贈った方がいいな! 会見終わったら速攻で届させよう!


「エルウィン家の陪臣にすぎない私を、四皇家当主ヨアヒム様がこのように褒めて頂けるとは……」


「魔王陛下が直臣にしたいと申し出たのを断ったという話も聞いております! 皇帝の直臣となれば、存分に力を振るえたはずなのに。あえて苦難の道である帰参を果たしたばかりのエルウィン家のマリーダ殿の家臣になることを選ばれたとか聞いた時は胸が熱くなりました!」


 そんな眼で見られると、パワハラ魔王陛下の部下になると、身体と精神が擦り切れる限界までこき使われるのが目に見えてたので逃げた……って言いずれぇ!


 それにマリーダはマリーダで実に仕えがいのある主君だぞ。


 おもに夜のサポートはバッチリ対応してくれるし、いくさでは頼れる強さを発揮してくれるし、領内のことは俺に一任してくれる。


 これだけなら百点の主君。


 わがままなのと、制御しにくいのと、突飛な行動と言動をすると、一族連中がヤベーでマイナス査定分を合計すると-二百点達成!


 ただし、有能な女性愛人たちのサポートポイントによって、トータル三百点満点達成してる良物件の主君だ!


「魔王陛下に直にお仕えするほどの能力をもたぬ私でも、マリーダ様がとても頼りにしてくださり必死にご恩を返しているところ」


「その主君に対する忠義心も見上げたものです。当家にも『金棒アルベルト』のような忠臣いれば……と夢想する日々。これは、聞かなかったことにしてください」


 聞いた! 聞いちゃった!


 事前にワリドの集めさせた情報で、ノット家の当主ヨアヒムと譜代の家臣との間に溝があると聞いてたけども。


 ショタボーイの表情を見る限り、小さくない溝があるようだ。


 いいねぇ、そそる。そそるよ!


 ぼっち臭のする俺の大ファンのショタボーイ当主! これは、ノット家ごと乗っ取る流れが来てるのかもしれない!


 チラリと隣のステファンの顔を見ると、彼もまた悪い顔をしていた。


 持つべき者は頭のいい親戚だ。


「聞かなかったことに致したいのですが、四皇家の一つノット家の当主であられるヨアヒム様がそのように憂いた顔をされていては、魔王陛下もさぞご心配されますでしょう。シュゲモリー家に属する者としては派閥の長の心配事は、我が事と同じ。非才な身ではありますが、ヨアヒム様のお困り事の聞き役くらいはさせてもらえませんでしょうか?」


 おっ! 俺の申し出にビクン、ビクンに反応してる!


 いい反応だ! 痛くしないから! さぁ、こっちにおいでショタボーイ!


 言っていいものか逡巡する表情を見せるヨアヒムだったが、周囲に執事だけしかないのを確認すると、俺たちを手招きした。


「これから私が話すことは、絶対に他言無用に願います。我がノット家の根幹に関わる話となり、多くの家臣に影響が及びますので。アルベルト殿とマリーダ殿、ステファン殿の胸の内に納めてください」


 四皇家の当主となると、エランシア帝国内にある半独立国家の国家元首と同じ。


 ステファンが辺境伯としての権限と人脈をフルに使って、私的な会見まで持ち込めたのも奇跡に近い。


 そんな四皇家の当主からお悩み相談されるなんてのは、千載一遇のチャンスでしかない。


 ここは、ショタボーイの信頼を勝ち取って、来るべき時に備えた方がいい。


「承知しました。胸の内に納めることをお誓い申し上げます」


「妾も人の秘密してくれと言ったことは、他人には喋らぬ」


「このステファン、口は鉄よりも堅いと自負しております」


 俺たち三人の返事を聞いたヨアヒムは、さらに近寄るように手招きする。


 相当、誰かに聞かれたくない話らしい。

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