第Ⅰ-23 穴埋め
<凛side>
私が初夜を迎えたのは、18歳の時だった。
当時、私は大学一年生。
新しく入った大学サークルで飲み会に参加して、先輩に流されるまま酒を飲んだ。
どうやら私の体は酒に強くないらしく、アルコールにより意識はあっさり混濁し、気付いた時には男の先輩にラ〇ホテルに連れて行かれ、夜の営みを行った。
その先輩も流石にコン〇ームは付けていたようで、妊娠はしていなかった。
しかし、私からすれば、居酒屋で酒を飲んでいたのが気付いたらベッドで男性と眠っていたという状況なのだ。
驚かないわけがない。
とはいえ、別に初めてをこんな形で奪われたことに怒りとかは無い。
ただ……強いて言うなら、初めては泪としたかった。
しかし、その時私は、すでに諦めていたのだろう。
自画自賛になるが、私は大学ではモテる方だ。
よく男からも女からも告白されるし、友達からも私はモテる部類であるとよく言われる。
とはいえ、今までは告白されても、断っていた。
なぜなら泪が好きだったから。
しかし、先輩と一度そういうことをしてみて分かるのだが、この行為には充足感があるのだ。
誰かから愛されているという事実を、身をもって知ることが出来る。
泪に愛してもらえないからか、私は、別の何かで代わりにしようとしたのかもしれない。
しばらくは男とヤった。
私を好きだと言う男を誘ってみたら、皆あっさりと釣れた。
避妊はしっかりさせた。まぁ、双方とも学生であるため、そこは当然か。
だが、性別の違いからか、だんだんと偽りの満足感は薄れて行った。
泪への愛から生まれた心の穴を埋めるために、私は女生徒にも手を出してみた。
サークルの先輩、後輩、同級生……一度だけ、先生とやったこともある。
無論、最初から全員がレズビアン(もしくはバイセクシャル)であるとは限らない。
だから、初めて私とやった男のように酒を飲ませて酔わせ、ホテルに連れ込んでヤった。
結果だけ述べるなら、私は数多くの女子大生をレズビアンへと導いてしまった。
しかし、どうやら私が妹好きであることは周知の事実であるらしく、私に惚れる人はいなかったが。
彼女達は今頃レズビアン生活を謳歌していることだろう。
そんな一時の快楽に溺れ、泪のことを忘れてみようとはしたものの、やはり最終的には泪のことが好きなのだ。
泪の代わりを見つけることなど、私には出来なかった。
それに気付いた頃だった。泪から茂光という女の話を聞いたのは。
人見知りの激しい泪。
だからこそ、今まで、油断していた部分があった。
しかし、突然現れた茂光さんという転校生の存在に、私は焦った。
泪の無愛想さをものともせず、しつこく話しかけまくっているという存在。
何より私を動揺させたのが……その話をしている間の泪の表情が、今まで見た事ないくらいに、緩んでいたのだ。
恐らく彼女にとって一番話す相手であろう私にすら、今まで見せたことのない表情。
ヘラヘラと、ニヤニヤと、まるで恋人との惚気話をするかのように話す泪の顔に、私は嫉妬した。
しかし、それだけ泪が茂光さんのことを好きなら、姉としてそれを止めるわけにはいかないと思った。
泪は好きな人であると同時に、妹なのだから。
妹の恋の邪魔をするなんて、姉失格だ。
だから、私は泪と茂光さん……もとい、優ちゃんとの恋を応援した。
家に呼んで晩ご飯を振舞ったり、優ちゃんを送らせたりして、二人の関係を取り持った。
結果として、二人は結ばれた。
……苦しかったよ。
今思えば、何度も二人の関係を壊すチャンスはあった。
でも、そうしたら、泪は幸せになれない。
泪を幸せにできるのは、優ちゃんしかいない。
だから、諦めて帰るしか無かった。
このまま、一生片思いをしながら生きるか、この恋を諦めて次の恋を探すべきか。
そんな風に考えていた時だった。
泪によく似た少女……雛ちゃんに、出会ったのは。




