第Ⅰ-5 雑誌
あれから凛さんとは何度か連絡を取りつつ、いつも通り毎日を送っていた。
髪型は、凛さんの編み込みを最初真似しようとしたが私には無理だった。
でも、彼女はもっと顔が出るように工夫しろと言うので、ヘアピンなどを使って顔が出るようにすると、友達も皆可愛いと言ってくれた。
しかし、女子の可愛いは社交辞令とよく言うので、あまり気にはしないが。
凛さん曰く、次のヤンデレ改善はあの雑誌が出てからにしようという話なので、あれから今の所彼女とは会ってない。
とはいえ、毎日LINEでやり取りはしているので、あまり仲が途切れたりすることはないが。
そんな毎日を送って数週間。転機は訪れる。
「お、おはよぉ……」
いつものように挨拶をした瞬間、クラスにいた女子の大半が私を見た。
そして、持っていた雑誌と私を見比べると、すぐに何人かが駆け寄って来る。
「ねぇ! これって、榊野さんだよね!?」
そう言われ、差し出された雑誌を見ると、そこには凛さんの手によって着飾られ、ページの中でぎこちなく笑う私の姿があった。
あぁ、そういえばあったなそんなもの。
ていうか手に入れるの早いなぁ……確か、今日発売日だっけ?
青島さんは発売日に私の家にも送ってくれると言っていたけど、帰ったらあるかな……。
「あ、うん……」
ひとまずそう頷いておくと、女子達がキャーキャーと騒ぐ。
やっぱり苦手だなぁ、こういう子……。
優を手に入れるためならと前までは我慢していたが、今は正直言って避けたい。
でも、凛さん曰く友達関係を築くことが大切らしいので、私は笑って誤魔化す。
「やっぱり! えぇっ……すごく可愛いし、榊野さん、こういうファッションするんだ?」
「この日は、知り合いのお姉さんに頼んで、オシャレさせてもらったの。普段の私は全然」
「でも榊野さんって顔可愛いし、何着ても似合いそうだよね~」
その言葉に、私は笑って誤魔化す。
凛さんに私服が微妙って言われたから、認める気が起きないのだ。
「あはは……そんなことないよ。この時お世話になったお姉さんは、私の私服とか髪型を微妙って言ってたし」
「あー……でもさ、こんな可愛い服考えれる人だからなぁ……結構、そういう系には厳しい人だったりして」
悪戯っぽく言う言葉に、私は苦笑する。
すると、別の子が「でもさぁ~」と言って雑誌を見る。
「すごいよねぇ……雑誌に載せてもらえるって」
「そんなことないよ……オシャレすれば、誰でもできるって」
「いやいや、榊野さんは元が良いし、これ、服と髪型変えてるだけでしょ? 私達はこれに化粧とかもしないと」
「そういうものなんだ……」
私の言葉に、皆頷く。
「あ、そういえばさ、今日放課後にカラオケに行く予定なんだけど、良かったら榊野さんも来ない?」
突然、とある女子がそう聞いてきた。
彼女の言葉に、私は「カラオケ……?」と聞き返した。
すると、周りの女子達も「それ良い!」と言う。
「そのモデルの時の話ももっと聞きたいし……どう?」
「あ、えっと……悪いけど、今日予定があって……」
私の言葉に、皆は「そっかぁ」と落胆した声を漏らす。
そんなに私と行きたかったのか……。
そう思うと、少しだけ胸が熱くなった。
しかし、それより、私には重要なことがあった。
……カラオケに行ったことないなんて、言えないよなぁ……。




