表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
透明少女と仮面少女  作者: あいまり
第五章:咲き誇る百合
49/92

第5-3 行方不明

 優が来ない理由。

 最初は風邪とかの類かと思ったが、どうやら違うようで、先生にも欠席の連絡は来ていないらしい。

 それならば遅刻かと思ったが、結局彼女が来ないまま、その日の授業は終わった。


「……優、何があったんだろう……」


 帰り道を歩きながら、私は呟く。

 仮病であることは分かる。

 でも、なぜ……もしや、昨夜の告白が原因か……?

 そう思いつつ顔を上げた時、私は息をついた。


「結局、ここに来ちゃうんだなぁ……」


 どうやら無意識の内にここにきてしまっていたらしい。

 気付いたら目の前にあった優の家があるアパートに、私はもう一度ため息をつく。

 ひとまず、優に話を聞いてみれば良いか。

 そう思い、私は二階に上がってインターフォンを鳴らす。


 ピンポーン♪


 軽やかなメロディが寂れたアパートに響く。

 しかし、誰も出てこない。

 それに戸惑いつつ、さらに何度かインターフォンを鳴らしていた時だった。


「うるさいなぁ……」


 背後から聴こえた声に、私は慌てて振り返る。

 見ると、そこには金髪のお姉さんが一人立っていた。


「あ、えっと……」

「あれ、その制服……ここに住んでる子と同じ学校?」

「え、あの……」

「すっごい男の子みたいな子。でも最近の子にしては珍しく、優しくて挨拶も出来て、すごい良い子でさぁ。今朝もちょうど出会った時に元気に挨拶してくれて」


 その言葉に、私は「そうなんですか……」と返す。

 こんな雑談してる場合じゃないのに……そう思っていた時、彼女は顎に手を当てて「そういえば……」と呟く。


「今日はなんか、駅の場所聞かれたなぁ」

「駅……ですか……?」


 私の問いに、彼女は頷く。


「理由を聞いたら笑顔ではぐらかされたけどね。まぁ、若い内はそういう時もあるかなぁって思って」

「……そういうもの、なんですか?」

「さぁね。まぁ、あの子を探してるなら、駅とかだと思うよ?」

「……分かりました。ありがとうございます」


 私はそう言いつつ頭を下げると、お姉さんは「良いよ良いよ」と言って軽く手を振る。

 駅、か……優、なんでそんな場所に……。

 そう思いながら道路に出て歩道をトボトボ歩いていた時、前からクラクションを鳴らされた。


「へ……?」


 顔を上げると同時に、車は私の真横で止まる。

 やがて窓がゆっくり開き、中からお姉ちゃんが顔を出す。


「お姉ちゃんっ……」

「暗い顔してるね。乗りなよ。……話聞くよ?」


 そう言って明るく笑うお姉ちゃんに、私は、自分の顔が綻ぶのが分かった。



「へぇ……優ちゃんが行方不明……」

「駅に行ったとは聞いたけど、それ以外は全然情報無しで……どうすれば良いのかな」


 そう呟いて鞄を抱きしめた時、頭を優しく撫でられる。

 見ると、前を向いたままのお姉ちゃんが、私の頭を撫でていた。


「そう悩むなって。……アンタ等二人はすでに深い愛で結ばれてるんだから。たまには直感を信じてみれば?」

「そんな適当な……! 間違ってたら、私……!」

「……自分達を結ぶ愛情を、たまには信じてみれば良いじゃない。大丈夫。泪ならできるよ」

「お姉ちゃん……」


 私はそう呟きつつ、俯く。

 ……私が優なら、どこに行くだろう……。

 電車まで使って、この街から逃げて行くとするなら、それは……―――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ