第4-2 人形
寂しさの理由に気付いたのは、小学五年生になった時だった。
それは、とても単純明快な理由で、分かってしまえば他愛のないことだった。
私は、他人に全く興味が無いのだ。
それこそ、母以外の全ての人間が、マネキン人形に見えていた。
病気……そう思われても仕方がない。でも、事実、そうなのだ。
母のことは愛している。でも、その母を心配させないために仲良くしているせいか、周りの人間が道具にしか見えなくなっていた。
この状況は将来的にかなり危ないと思い、私は、治すために色々調べた。
しかし、インターネットで調べようにも、どう調べれば良いのか分からず、仮に検索しても、良い結果は出なかった。
途方に暮れていた時、学校で友人に進められ読んだ恋愛小説を読んで、私は驚いた。
なぜこの主人公は、こんなにも熱心に、一人の女性を愛せるのか……と。
元々、私は、活字はあまり好きではないので、好んで読むことは無かった。
しかし、その小説を読んで、私は考え直す。
これは、私の現状を直すのに効果的ではないだろうか……と。
人を愛すること。異常性癖でも無い限り、人が人形を愛することはない。
誰かを愛することができれば、この孤独感からも解放される。そう思った。
しかし、周りの人間は、すでに私の中で人形と化しており、今更愛することは不可能に近かった。
仕方がないので、他校の生徒が混ざって来る中学に期待しよう。
そう思い、一年ほど経過した小学六年生にて、転機が起きる。
父が、初めて私を殴ったのだ。
その日、後から聞いた話では、父は会社をリストラになったらしい。
いつも以上に機嫌が悪かった父は、外で酒を飲みまくり、帰ってからは母に当たった。
最早、見て見ぬふりできないくらいに、大暴れ。
唯一人間に見える母だから、私は彼女を守りたかった。
だから、床に倒れ伏す母と父の間に立って、私は何かを叫んでいた。
罵詈雑言を叫んでいたような気もするし、命乞いだったかもしれない。
でも、父は必死に叫ぶ十二歳の娘を容赦なく……ぶった。
それからのことは、よく覚えていない。
私を傷つけたことにより、母は激怒して、何かを怒鳴っていた気がする。
父はそれに激昂して、何か叫んでいた。
殴られたことのショックやら何やらで混乱していた私は、その光景を、ただ呆然と見ていた。
そして、気付いたら、私は母に連れられて家を出て行くことになった。
しばらくは遠くから母に送ってもらって小学校に通っていたが、中学に上がってからは、引っ越した先の近くの中学校に通った。
そしてそこで……雛に出会ったんだ。




