第3-8 脈
「「「「いただきまーす」」」」
そう挨拶をした私達は、早速ご飯を食べ始める。
ちなみにお父さんは今日はいない。電話で、残業するという話があった。
「モグモグ……あ、すごく美味しいです!」
「本当に? 優ちゃんにそう言ってもらえると嬉しいわぁ」
お母さんがそう言ってケラケラと笑うと、優も嬉しそうに笑う。
そしてオカズをパクパクと口に含んで、微笑んだ。
「すごく美味しいです……泪が料理上手なのは、お母さんの遺伝なんだね」
「料理に遺伝とか関係ないじゃん……」
「フフッ。優ちゃん面白い子だねぇ」
お姉ちゃんはそう言って笑いつつ、オカズを食べた。
すると、優ちゃんは照れたように笑った。
私はそれに笑いつつ、箸でニンジンをコッソリ避けた。
しかし、それを目敏く見つけたお姉ちゃんが「泪~?」とジト目で言う。
しまった……。
「ニンジン避けてるねぇ?」
「そ、それは……その……」
「全く……ホラ、口開けて」
そう言って箸で摘まんだニンジンを差し出してくるお姉ちゃん。
私はそれに「恥ずかしいよ……自分で食べれるから」と言ってみせるが、お姉ちゃんはムッとする。
「自分で食べれないから避けてたんでしょ?」
……正論だ。
仕方なく口を開くと、お姉ちゃんはそれに満足そうに微笑み、私の口にニンジンを入れる。
うぅ……こんなの、恋人みたいじゃん……。
そう思って優を見ると、優はいつものように優しい笑みを浮かべていた。
「お姉さんと仲良いんだね」
そして出た言葉は、至って普通の言葉。
私はそれに、しばらくポカンと口を開けていた。
「ふむ……これは脈ナシか……」
そしてお姉ちゃんが呟いた言葉に、私は首を傾げる。
すると、お姉ちゃんは身を乗り出し、私の耳元に口を寄せる。
「好きな人が、誰かとイチャイチャしてたら、誰だっていい気分にならないでしょ? でも、あれは全然嫉妬とかしてない顔だよ」
「そもそも姉に嫉妬なんてしないでしょ……普通血の繋がった相手を恋愛対象として見たりしないし」
「……こっちも脈ナシ、か。知ってたけどさ……」
ボソッと呟かれた言葉に、私は疑問に思い首を傾げた。
すると、お姉ちゃんは「なんでもない」と言って笑い、また食事を再開する。
私はそれに、まぁ良いか、と思いつつ、なんとなく、優に視線を向けた。
「ん? なぁに、泪」
すると、ちょうど目が合い、優がそう言って微笑んだ。
私はそれに顔が熱くなる感覚がして、「なんでもないよっ!」と言って、慌てて視線を逸らした。




