第3-3 作戦
土日が明けた月曜日。
眠気眼を擦りながら一階に降りると、お姉ちゃんが朝ご飯を食べていた。
「おはよう、お姉ちゃん……」
「おぉ、おはよう泪」
こんがり焼きあがったトーストを齧りながら言うお姉ちゃんに生返事をしながら、私は席に着く。
そして、自分のトーストにバターを塗り、齧りつく。
「眠そうだね。って、月曜日の朝だからしょうがないか」
「んー……まーね」
眠くて真面目に受け答えをする気が起きない。
サクサクとトーストを半分ほど齧っていた時、お姉ちゃんがまた口を開く。
「そうだ。泪、今日夕食に優ちゃん呼びなよ」
「ガハッ!?」
突然の提案に、私は咳き込み、トーストを吐きそうになった。
胸をドンドンと殴ってなんとか落ち着くと、私はお姉ちゃんを見つめた。
それにお姉ちゃんはキョロキョロと辺りを見渡してから、身を乗り出してきた。
「だから、優ちゃんを家に呼ぶの。今日の夕食で」
「突然すぎて意味分からないよ……なんで?」
私がそう聞いた瞬間、お姉ちゃんはムッとして、私の額にデコピンした。
鈍い痛みを感じつつ、お姉ちゃんの顔を見てみると、彼女は頬を膨らませていた。
「泪。優ちゃんのことが好きなんだよね?」
「う、うん……」
「だったら待ってたらダメ。とにかく少しでも距離を縮めないと」
「うーん……」
迷っていると、お姉ちゃんはダンッと拳を机に打ち付けた。
それに、私はビクッと肩を震わせた。
顔を上げると、お姉ちゃんは物凄く真剣な顔をしていた。
「アンタは恋したことないから分からないだろうけどねぇ、待ってばかりいたら、その好きな子が別の子に恋して自分から離れるなんてよくあることだよ? そんな結末になっても良いの?」
その言葉に、私の頭には榊野さんの顔が浮かんだ。
彼女に優を取られる……?
「や、やだぁ……」
「でしょう? だったら、そうやってグズグズしていないで、自分から動きなさい! 分かった!?」
「は、はい!」
私が咄嗟にそう返事すると、お姉ちゃんは「よしっ」と言って、席に座り直す。
「お母さんにはもう話はしてあるよ。泪に新しく友達が出来て、その子を晩ご飯の時に呼んでも良いか、ちゃんとね」
「準備早過ぎじゃない?」
「早過ぎて困ることなんてないじゃない」
「そうだけどさぁ……」
私の言葉に、お姉ちゃんは「何さ?」と聞いてくる。
それに、私は「なんでもないっ」と返し、トーストを齧る。
お姉ちゃんはそれにムスッとしつつも、笑みを浮かべ、口を開いた。
「それじゃあ、優ちゃんオトすぜ作戦決行だよ!」
「う、うんっ! って、作戦名!」
咄嗟にそうツッコミを入れると、お姉ちゃんは快活な笑みを浮かべた。
さ、先行きが不安だ……。




