表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
透明少女と仮面少女  作者: あいまり
第二章:狂い咲く百合
20/92

第2-8 一緒

「……ふぇ……?」


 私の言葉を聞いた瞬間、顔を赤くして優は固まる。

 あれ、思っていた反応と違う……。

 少し戸惑いつつ、私は続ける。


「もしダメなら、別にい……」

「いやいやいや! 大丈夫! ダメじゃないです! むしろ大歓迎です!」


 顔を赤くしながら早口でまくしたてる優に、私はホッと息をつく。

 それから備え付けのドライヤーを置いてあったであろう場所に置いた優は、押し入れに近づき、ふすまを開く。


「一緒に寝るなら、その……布団は一枚で良いん、だよね……?」

「う、うん……多分……」

「そっか……そっか……」


 やけにぎこちない動きで敷布団を引きずり出す優。

 本当に大丈夫なのかな? と心配しつつ、私もシーツなどを出していき、二人で協力して一枚の布団を敷き終える。

 布団を敷き終えた瞬間、私は、自分の鼓動が速くなるのを感じた。


「えっと、じゃあ……どうぞ」


 先に布団に入った優は、そう言って隣をポンポンと叩く。

 私はそれに頷き、ゆっくりと布団の中に入っていく。

 敷布団自体は、それほど大きくない。

 一人用の布団で強引に二人で寝ようとすれば、かなりくっつかないといけなくなる。

 結果として、私と優は掛け布団の中で密着状態になるわけで……。


「えっと、泪、大丈夫? 暑かったりとか……」

「だ、大丈夫……優は?」

「私は平気だけど……」


 微妙な感じの空気が流れる。

 私は無言で優を抱きしめる力を強くし、彼女の胸に顔を埋めた。

 やけに心臓が強く高鳴り、自分のものなのか、彼女のものなのか分からない鼓動の音が、耳元で爆音を鳴らす。

 その時、優しく頭を撫でられた。


「泪……なんで、急に一緒に寝ようなんて……言ったの?」


 その言葉に、私は少し戸惑う。

 顔を上げると、優が優しく微笑んだ。


「えっと……」

「急にあんなこと言うなんて……どうかしたのかなって」


 そう言って、ニコッと彼女は微笑んだ。

 私は、まず優の腕の中で少し身じろぎし、それから静かに口を開いた。


「榊野さんと優が話している時……すごく、胸が痛くなって……それに、優を見ていると、鼓動が速くなって、恋なんじゃないか、って思って……」

「……うん……」

「だから、確かめようって、思って……こうして密着したら、分かるんじゃないかって」

「……それで、どうだった?」


 そう聞いてくる優の声色は、やけに優しかった。

 私はそれに額を彼女の首筋辺りに当てながら、「内緒」とだけ言う。


「あはは……何それ」


 優は、そう言うと私の髪をワシャワシャと撫でる。

 恋なんて今までしたことないから、ハッキリと分かるわけではない。

 でも、きっと、これが恋なら……それはすごく、甘いものなんだろう。

 その人のことを見ると、緊張したり、ドキドキする。

 でも、こうして抱かれてみると、緊張だってするけれど、段々と安心できてしまって、気持ちが少しずつ安らいでいく。


 甘酸っぱい、なんて表現をするのを見ることがある。

 でも、恋をしてみて分かる。恋というものは、甘酸っぱい。

 その人が別の誰かと話しているのを見ると、苦しくて、苦くて、酸っぱい。

 でも、こうして密着すると、とても気持ちが安らいで、まるでアロマの匂いでも嗅いでいるかのように、フワフワした気持ちになって、甘い。


 そこまで考えて、私は微かに苦笑した。

 あぁ、なんだ……私はこんなにも、優のことが好きなんじゃないか。

 いや、本当はきっと、もっと前から自覚はしていたのだろう。

 でも、認めるのが怖かった。同性を好きになるなんて、普通じゃないから。

 けど、目を逸らそうとすればするほど、優のことしか見えなくなって。


「ねぇ、泪……」


 その時、耳元でそんな声がした。

 私はそれに「何?」と聞いた。

 すると、優はフッと息を吐くように微かに笑って、私の体をさらに強く抱きしめた。


「なんでもない」

「……変なの」


 私が笑いながら言うと、優もそれに笑った。

 その笑顔は、今まで以上に、私の心を揺さぶった気がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ