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試行錯誤の異世界旅行記  作者: 取方右半
第3章 精霊祭
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3-21 精霊祭 三日目〈Ⅱ〉

 轟音と熱風、そして途轍もない衝撃がミカロスを襲った。前線指令所にて戦略を練っていた彼は戦矛を地面に突き刺して吹き飛ばされるのを回避した。天幕は風に飛ばされ、兵士たちは天変地異に怯えた。


「―――っう! 一体、一体何が起きたんだ!?」


 揺れが収まり音のした方へと視線を向けた。そこには筆舌しがたい光景が広がっていた。防壁の一部が抉れ、大地は余波で燃え上がり黒く染め上がる。城壁は吹き飛び、火の手が上がっている。


 次いで、彼の耳に絶望を告げるかのような絶叫が飛び込んできた。静寂を突き破る獣の咆哮は特別地域だけでなくアマツマラ全域に響き渡る。まるで誰一人逃がさないと宣言するかのような咆哮だった。


 ミカロスは前線指令所を飛び出した。本来、あからさまに有事の際はそこに待機して情報を集め、指示を出さなければならない。それでも異変の元凶をこの目で確かめるために左翼側の防壁へと走り、見てしまった。


 氷で補強された防壁の上で人間を嘲笑するかのように牙を覗かせ、体皮に赤い鱗を敷き詰め、両翼もまた赤い。防壁を叩く尾も赤かった。唯一伝え聞いていた姿と違うのは額から突き出た角だろう。邪悪さをこれでもかと固めたようなどす黒い角が伸びていた。


 間違いない。あれはメスケネスト火山の主。古代種が一柱。赤龍だ。


 ミカロスは昨夜、内々で呼び出されたテオドールから二つの命令を思い出していた。一つは赤龍がスタンピードの最中に現れる事。もう一つはその際の対処だ。


 強靭な精神で恐怖を屈服し、彼は大声で指示を出す。


「各員に通達! これより私を含めたA級冒険者だけであの龍に挑む! 指揮は副団長のコンロンが務める。各自、龍より距離を取った後防御陣形をとれ!」


 だが、周囲の大半は腰を抜かしているだけで動けそうなものは居なかった。無理も無い、あんな圧倒的な存在を前にすれば誰でもそうなる。ミカロスは使いたくない切り札を一つ使う。


「《傷つき、怯える者よ。もうひとたび立ち上がる力を持て》!」


 ミカロスの技能スキル、《苦痛ノ療治》Ⅴ。効果は周囲の仲間の治療。それは外傷だけでなく精神的な消耗に対する治療も含まれている。効果範囲の兵士や冒険者たちから気味が悪いほど恐怖の感情が収まっていく。平静を取り戻した彼らは三々五々に分かれていく。絶大な効果の反面、リチャージまでの時間が圧倒的に長い。少なくともこれで半日は使えない。


 その中の一人がミカロスに自分が見た光景を話した。彼は防壁の上に居た一人だ。


「騎士団長。『氷瀑』のウォント殿が……討死したかと思われます」


「な……何だと!」


「ウォント殿は防壁上にいた者を大地に落としてブレスを防ぐためにお一人で立ち向かわれました。……しかし、おそらくは」


 そこまで言って兵士は肩を落とした。


 ミカロスは動揺を堪えるのに苦心した。それもそのはずだ。ウォントは対龍戦において切り札と言えた存在だ。龍とは古来より厄介な存在だ。吐き出すブレスや、前腕の爪、巨大な翼による高速移動など長所を上げればきりが無い。その中でも特筆すべきが鱗の防御力だ。剣や槍など斬撃系武器も打撃系武器の類は効果が薄い。龍に効果的なのは魔法だ。


 この戦場において龍に対してダメージを与えれるほどの魔法使いは『氷瀑』のウォントと王宮魔術師のヨグトゥースの二人。そのうちの一人をこうも簡単に失ったことに冷静さを失いかける。


「シャキッとしな!」


 そんなミカロスの背中を力強くオルドが叩いた。彼だけでない。同じA級冒険者のロテュスとディモンドが揃っていた。彼らの表情に恐れの色は無く、獰猛な戦士の笑みが浮かぶ。


「ウォントの爺が逝っちまったのは痛手だが、まだオレたちは負けたわけじゃない。そうだろミカロス」


「……オルド殿」


「それによ。陛下からあれを預かってるだろ? オレたちが時間を稼いでやるから取ってきな」


 言われてミカロスの脳裏にもう一つの命令が浮かぶ。テオドールからもしもの時に使うようにと命じられた封印された木箱の存在を。


 だが、あれは封印されるべくして封印されているものだ。この局面で使えばさらなる混乱を齎すだけでは無いか。そんな懸念を抱いたミカロスの背中を再び叩いた。


「お前が何考えているか分かる。……でもな、今はあれをどうにかしないとヤバいのはお前も分かるだろ」


「ほらほら。早いと女の子を喜ばせれないけど、遅いのも退屈にするだけよ」


「『双姫』殿……わんつか下品じゃ」


 オルドと同じように発破をかけるロテュスに対してディモンドは苦言を呈した。そして彼らは赤龍に対して一歩前へと踏み出した。その歩みに恐れなど無いように。


「……分かりました! 直ぐに戻ります、皆さんお気をつけて!!」


 戦士たちの背中を目の当たりにしたミカロスは来た道を戻る。足音が遠ざかるのを聞いてオルドは覚悟を決めた様に二人に話しかけた。


「さてと、予定と随分変わっちまったが、やる事は変わんないぞ。作戦は覚えているな?」


「おうさ。鍛冶王がいきやっしゃらまで時間ばわんどで稼ぐ」


「その間、他のモンスターは兵士や冒険者任せにする……あら、これって策といえるかしら?」


「そんなもんだろ? 冒険者の戦い方なんてよ。じゃあ―――行くぞ!」


 A級冒険者三人は駆けだした。圧倒的な強さをほこる怪物に対して。赤龍は挑む矮小な人間に対して威嚇する様に咆哮を上げた。




 二度目の咆哮が城の窓を叩く。宰相のルルスを始めとした謁見の間に集まった臣下たちは街を見下ろせるテラスへと駆け寄った。途中の兵士からもぎ取った双眼鏡を駆使して特別地域の方を見て、彼らは絶句した。


「あれは……まさか……赤……龍でしょうか。……ルルス殿」


 文官の一人がこの中で一番の年長者に問いかけた。ルルスは苦渋の表情で肯定する様に頷いた。


「そんな! 三万五千のモンスターに加えて赤龍なんて!!」


「ああ、なんてことだ。……都市が壊滅するのは時間の問題だ」


「こんなの悪夢だ。そうだ夢だ夢だ夢だ。ダラズが堕ちたのも夢なんだ」


「急がなくては。……バルボア山脈の秘密トンネルを使い、避難をしなくては!」


「避難とはどこに行くきか! 戦っている兵を、冒険者を、そして民を見捨てて逃げる気か!?」


 集った者達は各自バラバラの反応を示した。起きた現実を現実と認識できない物。絶望する者。逃亡を企てようとする者。それに反感を抱く者。果てはつかみ合いの乱闘へと至るのを止めたのはルルスの咳払いだ。


「皆の者、恐れを抱くのは無理も無い。じゃがな、最初に考えるべき意見が出なかったのは儂としてはかなしいのう」


「ルルス様。このような時に何を暢気な事を。相手は赤龍なのですよ! 考えるべきはまず―――」


「―――あれをどうやって倒す、かだろう? 師よ」


 文官のオリバーの言葉を遮ってテオドールがテラスに現れた。眼光鋭く、眼下にて火を吐く赤龍を見つめていた。その姿に集まった人々は押されるかの様に道を開けた。


「……行かれるおつもりですな、陛下?」


 唐突に、ルルスが口にした内容に全員が驚いた。一国の王が戦線に、それも人の手に余る古代種の龍が降臨する地へと赴くだろうか。そんな莫迦げた話が宰相の口から出てしまった。だが、王は肯定する様に頷いた。


「無論だ。俺が行かなくて誰が行く?」


「はぁ。齢五十をとうに超えて尚、脳には戦闘本能しか存在しておらんのですか。まったく。先王から教育係を仰せつかった儂の身になってくれませんかのう」


「すまんな、師よ。だが、これは俺の生まれ持った本能だ。業だ。宿命だ。この時にこの選択肢しか選べないのがテオドール・ヴィーランドの性なんだろう」


 どこか晴れやかな表情を浮かべてテオドールは言い切った。その在り様は歪ながら、纏う覇気はまさに王者の風格だった。テラスに集った人々は自然と傅く様に跪いた。


「あとは頼むぞ、ルルス。余はこれより龍退治ドラゴンスレイに赴く」


「存分の御働きを。我らが王よ」


「「「存分の御働きを! 我らが王よ!!」」」


 家臣に見送られながらテオドールは戦場へと赴く。かつてS級冒険者・・・・・と呼ばれた男の帰還だった。




 前線指令所に戻ったミカロスは片隅に置かれている木箱へと駆け寄った。それは不可思議な木箱だった。人が二人から三人は入りそうな大きさの木箱を封印する様に何重にも巻かれた鎖。側面には札のような物が貼られ、開封したら一目で分かる。劣化具合でここ何百年かは開けられた形跡が無い証明とした存在する。


 これは『紅蓮の旅団』が護衛したフェスティオ商会がオークションに出品した魔法工学の兵器だ。


 そもそも魔法工学とは何か?


 答えは単純だ。この世界に存在しなかった技術・・・・・・・・・だ。冒険王がギルドを設立したころ、ギルドはこれといった収入源を持たなかった。当時魔石は何の役にも立たない石ころに過ぎなかった。唯一の使い道が大地に埋める事で還元され肥料の様に栄養を与える程度。主な収入源は村や町を襲うモンスターの退治やキャラバンの護衛などのクエストの仲介料だった。


 そんな時。ある人間がふらりと現れ、当時のギルドに向けて告げた。


「私は異世界より転移した人間だ。そこでは科学者と呼ばれていた。すまないが助けてほしい」


 ギルドは彼を狂人と考えた―――事は無かった。エルドラドは神々が居なくなった時代よりも前の頃、異世界より転移したり転生した異世界人が現れていた。彼らの多くは元の世界の知識や経験をそのまま持ち合わせており、それらがエルドラドに齎された事は一度や二度では無かった。


 だが、『科学者』と名乗った男は彼が初めてだった。そしてそれ以後も居なかった。


 彼はギルドにて身柄を保護されるとしばらくは職員として働く傍ら魔石の研究に没頭。その後幾つかの事件を経て魔法工学の分野を切り開いた。


 結果、彼の生み出した作品は今日に至るまで彼の弟子たちの手で世に広く広まり生活を豊かにしていく。冷蔵庫などは彼の設計図を元に現代の職人が再現した物だ。


 だが、一方で彼は恐ろしい物を作り上げていた。一発で地形を大きく変える兵器。気象すら操れる兵器。食べ物だけを腐食させる兵器。そして自分で考え行動する自立型兵器。自分の持つ知識がこの世界でどこまで再現できるかを。そして、向うの世界で志半ばに途絶えた夢を追い求めた。


 彼は頼まれれば己の技量を全てつぎ込んだ傑作を世に広め―――戦争を引き起こした。


 それはとても凄惨な戦争だったと聞く。兵器が登場してからわずか十年で国は幾つも亡び、分裂を繰り返し、国境線を何度も引きなおした。ある部族が虐殺され、種族が絶える。大地が汚染された土地もある。シュウ王国の南西部に広がるメスケネスト平野もその一つだ。汚染された大地は人の棲めない場所へと変貌した。他ならぬ人のせいでだ。


 そして、その事に心を痛めた彼は一つの決断を下す。


 決して折れず、曲がらず、壊れず、腐らないといわれるオリハルコンを主材料とした対魔法工学兵器用魔法工学兵器を作り上げた。それは彼の死後も動くことを止めず、主の生み出した兵器の波長を読み取れば一帯を殲滅する機械乙女ドーターを。エルドラドに燃え上がった戦火よりもより悲惨な虐殺が横行した。


 結局、人々は専用の箱を用意し兵器を封印することで彼女を間接的に封印した。それでも人々は果実の甘さを忘れる事は出来なかった。時折、思い出したかのように封印を解かれた兵器が現れるたびに機械乙女ドーターが街を滅ぼしていく。


 彼―――ノーザン・オルストラの残した遺産はエルドラドに豊かな生活と滅亡への火種の両方を残した。


 そして、今日。テオドールは決断した。例え赤龍をも超える怪物を招くことになっても―――民が全滅するよりもずっとマシだと。




 赤龍のブレスが放たれるたびに大地に火柱が立つ。開戦の合図となった巨大ブレス程では無いがこれも十分脅威だ。直撃すれば骨も残らずに燃えカスとなるだろう。


 しかし、オルドはその巨体に見合わない軽快なステップで距離を詰めれば振り回される尾に目がけて大斧を振り下ろした。鱗の無い部位とはいえ龍の皮膚は鋼鉄をはるかに凌駕する。浅い傷跡を残した程度だ。


 そのオルドを足場にロテュスが飛びあがった。二つ名に恥じない双剣が龍の翼を狙った。


「《風よ集まれ、さながら大剣の如く》!」


 彼女の技能(スキル)、《風ノ大剣》Ⅲ。双剣に集まった風が物理的な大剣の如く形を成し、翼の先端を切り裂いた。大地に翼の切れ端が堕ちた。


「グギャアアア!!」


 痛みで苦しむ赤龍の眼前に同じようにオルドを足場に飛んだディモンドが迫る。『剛剣』のディモンドは二つ名の通りのクレイモアを振るう。重装鎧を軽々と動かす筋肉は彼の意志を体現したかのような強烈な一撃を与えた。


 だけど、赤龍は怯むことなく口を開けた。開かれた口腔から漏れる炎の輝きがディモンドを赤く染めた。


「やらせるか!!」


 オルドは体を回転させた勢いで己の大斧を放り投げた。狙いは赤龍の頬。十分な遠心力が加わった大斧は竜の頭を弾く。結果、吐き出されたブレスはディモンドの横を通り―――そのまま街へと放たれた。


 空中で難を逃れたディモンドは軽やかに着地した。次いで空中から落ちてきた大斧を掴むとオルドに渡そうとする。だが、彼は笑顔でディモンドを蹴り飛ばした。


「な、何すんじゃかオルド殿」


「何じゃねーよ! お前もロテュスも俺を踏み台かなんかと勘違いしてないか!?」


「あらあら。ちょうど良い台があったから、つい」


「ついじゃねーよ!」


 激昂するオルドをロテュスは軽くあしらった。会話を交わしながらも三人は休むことなく龍へと挑み続ける。


 どういう訳だか赤龍は空という自分の領域を降りて地上にて暴れていた。遠距離の切り札を無くした三人とって好都合な事ではあったが。しかし、それ以上に解せないことがあった。


 頬の一撃から態勢を立て直した赤龍は自分の足元を這う、ホワイトタイガーを無造作に踏みつぶした。尾を振るいスケルトンをタダの骨へと砕いていく。出鱈目に吐き出したブレスにガーゴイルが巻き込まれた。


 恐らくこのスタンピードを引き起こした黒幕の最大の切り札であるはずの赤龍は自分の近くを通る生命体から手当たり次第に攻撃を加えている。そのおかげで少なくない数のモンスターが龍の餌食となった。


 とはいえモンスターの軍勢は三万五千。防衛側の戦力は兵士五千五百.冒険者七百弱。圧倒的に不利なのは変わらない。更に赤龍に挑むオルドたちに他のモンスターが近づかない様に誘導系の技能スキルを持つ冒険者は率先して囮を務めている。その分、敵の攻撃は激しくなっている。


 赤龍の意識が他所に向かわない様にオルドたちは必死に攻撃を加えていくが戦局事態は押され始めていた。


(早く来てくれませんかね! 鍛冶王!!)


 オルドがそう思った時。


「《留めよ、我が身に憎悪の視線を》!」


 聞き覚えのある声が背後から聞こえた。オルドは攻撃する手を止めて背後を振り返り、凍り付いた。


 魔物の群れをコントロールする囮として誘導系の技能(スキル)を発動したレイの姿があった。そばにはホラスの姿もある。城壁沿いの最終ラインを守護していたはずの予備部隊もついに前線近くまで引っ張り出されたようだ。レイは己にモンスターの意識を集中させた。


 それは赤龍・・も含まれていた。


 オルドたちにしか興味を示さなかった赤龍が初めて他の冒険者に興味を見せた。咢を開き炎のブレスを吐こうとしている。オルドは咄嗟に斧を投げてもう一度軌道を変えようと考え、位置関係に気づいて止めた。彼は今、龍と正対する位置にいる。此処から軌道を変えるとしたら上に向けるしかない。だがその放たれる方向はアマツマラの上層区画になってしまう。


 そこまで計算したオルドはくるりと反転してレイの方向に走った。精神力を込めて詠唱した。


「《超短文ショートカット低級ロー岩壁ウォール》!」


 彼の背後で岩盤を引き抜いたような岩の壁が出現した。そして続けざまにもう一つ魔法を放った。


「《超短文ショートカット超級ウルトラ強硬鎧アンブレイカブルアーマー》!」


 ごっそりと精神力が削れていくのが分かる。元来、精神力がそれほど多くないオルドはこの超級呪文を発動する事を前提に低級の呪文しか持ち合わせていない。それを長年の研鑽でどうにか威力を中級まで持ち上げた。もっとも赤龍相手に通じるとは思えない気休めだ。


「オルド!?」「団長!?」


 年の若い冒険者二人は全身を赤色の鎧で包みあげたオルドを見て声を上げて驚いた。一方でオルドはこの二人以外の冒険者が居ないことを確認した。どうやら彼らは囲まれそうになる仲間からモンスターを引きはがすための囮になっていたようだ。


 鎧に包まれたオルドは二人を抱き締めた。そしてその二人を包む様に砂が纏わりついて金属製の板に変化していく。三人は瞬く間に金属製の繭の中に飲み込まれた。


「二人とも! 息を止めていろ!! ブレスが―――」


 言葉は最後まで告げられなかった。オルドの意識を刈り取らんばかりの衝撃が背後にてぶつかった。オルドはレイとホラスを抱き締めながら歯を喰いしばる。自分の意識が途切れれば魔法が文字通り砂に還る。


 オルドにとって永遠に近いような時間が過ぎた。もしかするとそれはほんの数秒だったかもしれない。精神力が潰えたオルドは鎧を維持できなくなり砂に戻してしまう。三人の鼻に大地が焼け焦げた匂いと熱風が叩きつけられる。


「僕たち……生きてんの?」


「団長、団長! しっかりして下さい!!」


 レイは呆然と自分を見下ろし、ホラスは気絶したオルドを起こそうと揺らした。だが、精神力切れを起こした彼の意識は直ぐには戻らない。そこに絶望を告げる様に地響きが響き渡った。


 赤龍が動き出したのだ。彼の視線はいまだにレイへと固定されたままだ。


「―――っ! ホラス! オルドを頼む!」


「はぁ!? お前はどうすんだよ!」


「アイツの狙いは僕だ。ここにいりゃ皆巻き添えだ!」


 叫ぶなり、レイは二人の元を離れ駆けだした。彼の言うとおり赤龍は倒れて動かないオルドでは無くレイの方に意識を向ける。翼を勢いよくはためかせた。台風のような突風がレイの軽い体を拭き飛ばす。


「うわああああ!」


 大地を転がりながら悲鳴を上げたレイは積み上げられた土嚢にぶつかって止まった。しかし助かったわけでは無い。


 赤龍は止めを刺そうと再びブレスを吐こうとする。広げた咢から火の粉が零れた。


「……万事休すかよ」


 起き上がったレイは自分に逃げ場がない事を悟ると、諦めた様に目を瞑った。


「くそ、次こそは生き残ってやる」


 そう呟いて、ブレスを受け―――なかった。


 突然、戦場に異質な音が広がった。連続した音の津波のような勢いはそのまま力となって赤龍を襲う。色とりどりの光弾は連続して同一箇所を狙う事でより深くダメージを与えていく。胸元近くを狙う攻撃に音をあげた赤龍は遂に空へと飛びあがった。


 レイは信じられない光景を見た。A級冒険者三人を相手に一歩も引かなかった龍が一時的にとはいえ逃げ出したのだ。思わず攻撃元へ視線を向けて―――より大きな驚きに襲われた。


 西洋風な重装鎧に身を包んだ牛人族シュティーアが腰だめに抱えているのは鈍色の光沢が輝きを放つ、在りえざる兵器。


 複数の銃口・・が輪になって並ぶ。本来なら人が携行できないはずの兵器。


「なんで、なんでファンタジー世界にガトリング・・・・・なんかが在るんだよ!!」


 呪われた魔法工学の産物が姿を現した。


読んで下さってありがとうございます。


男のロマン兵器登場。

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