3-17 精霊祭 一日目〈XⅦ〉
「な、なんて予知をしちゃうんだよ!! 絶対に起こる方でそれを見たのかよ!?」
僕の情けない叫び声が屋上に響いた。シアラは頭を抱えながら反論した。
「仕方ないでしょ! そういう不便な技能なんだから!! ええ、そうよ。お父様が死んだ時も! ワタシが氷漬けになった時も! いつだって知りたくない未来ばかりを見せてるのよ。いっその事、この目をくり抜きたいと何度思った事か! ……でもね、それをすれば今度は怖いのよ。……未来を知れなくなる事がね」
シアラが切なそうな表情で叫んだ。大きな身振りで抱えてきた闇を吐き散らかす。その度に彼女の結んだ髪も揺れた。彼女は未来を知ってしまう恐怖と未来を知れなくなる恐怖の間に挟まれていた。ずっとずっと。
泣きたいのに涙が枯れた少女へと手を伸ばしていた。どうも、僕は悲しそうな女の子を見るとこうするしかできないようだ。伸ばした手が彼女の頭を撫でる。
「なによ……これ。同情? 憐れみ?」
「まあ、そんな所だよ。……一杯、辛い思いをしてきたんだな」
「……うっさい。……そんな……風に、分かったような振りをしないでよ」
悪態を吐きながらもシアラは僕の手を拒絶することは無かった。一度は上げかけた手を下ろした。その時、僕の目は薄くすれた傷口から血がにじんでいるのを見つけた。赤い血がたらり、と垂れている。その血を見て僕は何か引っかかる事を感じたが言葉に出なかった。
しばらくして、彼女はポツポツと見てしまった未来について語りだした。
「最初に見たのは単純に暴れまわっている龍の姿よ。この大陸に来た時にそのシーンを見て、それからこの都市に来て死の影が濃くなっていくのを見て龍が来ると理解できた。……こっちの未来予知はワタシがこの先に見る光景を引っ張り出して見せる。自分の死の影が濃くなったから、ワタシはその龍によって殺されるんだと思ったの」
「それで、檻の中からどうにかしようとしたのか」
彼女はこくりと頷くと言葉を継ぐ。
「だけど、さっき見たのはシーンが違った。あれが未来の続きを見せてるのか、未来その物が変わったのか分からない。そもそも今まで予知の更新なんて無かった。なのに、アンタと出会う事で運命がどんどん変わり始めてる。……まるでアンタを起点にしてる……本当に何者なの、アンタは?」
シアラの金色黒色の瞳がじいと僕を見つめる。縋るような視線を前にしても僕は自分の正体を口に出せなかった。リザ達に知られたとはいえ不用意に異世界人だと告げるのは得策じゃないと考えて彼女から情報を引き出す。
「それで? 新しい予知では何を見たんだ?」
「……アンタと複数の冒険者が龍と戦う姿よ。時間は……多分夜。凄く星の綺麗な夜よ。場所はこの都市のどこか。建物とかが見えたわ」
「その冒険者の中にオルド……禿げのオッサンの姿はあった?」
シアラは思い出すように黙ってから首を横に振った。僕の知る限りこの都市にいるトップクラスの戦力に頼る事は出来ないのかもしれない。
「どの冒険者も若いわ。多分、十代かそこら。数は……二十人ぐらいね。その中にはアンタの奴隷も居たわ」
「そして……君もいたと。何かほかに情報は無いのか? 例えば……龍が来る日付とか」
「無いわ。今のところ分かるのは時間とか……あとはそう、龍の特徴よ。人よりも巨大な赤い龍。額には大きな角を生やしてたわ」
身ぶり手ぶりで見た龍の大きさや威圧感、そして強さをシアラは表現しようとする。だが、いまいち、僕には分からない。そもそも龍の強さにもぴんと来ていない。ゲームとか物語ならとんでもない強さを持つ存在だけどエルドラドでも同じだろうか? まずそこから詰めていこう。
「モンスターの等級については知ってる? ギルドが発行してるランクだけど、その中で龍がどの位置にあるか知ってる?」
「冒険者でも兵士でもないのに知ってる訳ないでしょ。……でもあの龍はきっと龍の中でも希少な古代種だと思う」
「古代種? なにそれ」
聞きなれない単語に首を傾げた。シアラはそんな僕を呆れたような視線を送る。
「アンタ、古代種を知らないの? 古代種ってのは創世記。つまり世界が生まれた時から存在する生命体を指すのよ。それこそ13神の使い魔とまで呼ばれてる偉大な存在よ。肉の体を持つけど、生命としては私たちよりも神に近い種族」
「そりゃまた、とんでもないスケールの話だな。……何でそう思ったんだ?」
「女の勘! って言いたいけど、ここから南にある火山に昔から龍が住むって伝説があるらしいの。昔に起きた戦争で龍は北の大地に逃げていったから有りえそうなのは火山の主といわれた龍だけよ」
シアラの説明に筋が通る。スタンピードの群れも南から北上してきたとあちこちで噂になっている。龍とスタンピードが関係しているなら恐らくその火山の龍なのだろう。
「それじゃ、その古代種がどれぐらい強いか分かる? そうだね……ゲオルギウスと比べたらどっちが強い?」
「ゲオルギウス? アンタまた変なのを例えに使うわね。まさか、戦ったんじゃないわよね」
呆れた様にシアラは言い放った。ゲオルギウスの名を出したのはある理由からだが彼女はそのことに気づかない。僕は肯定する様に頷いた。
「……冗談でしょ? ……アンタ、あのゲオルギウスと戦って生き残ったの? あんな怪物を!」
信じられない物を見る目で彼女は僕を見つめる。信じられないのは僕自身もそうだ。未だにアイツの底知れない強さに身震いを覚える。だけど、もう一つ確信を抱く。
「なあ、シアラ。随分とゲオルギウスに詳しそうだね……その瞳の色もアイツに似ている。……君はアイツの関係者なのか? それにゲオルギウスで思い出したよ。どうして君の血は赤いんだ。魔人の血は青いんじゃないのか?」
「―――そう、今のはかまを掛けたのね」
僕はごめんと呟いた。シアラは気にしたようなそぶりを見せずに首を振ると立ち上がり街並みを見下ろした。明かりが僅かな街並みはまるで死者の世界のような寂しさを放つ。
「血が赤いのはワタシがハーフだからよ。純潔の魔人種の血は目も覚めるほど青い。それでも普通の人間種と違い、血自体に魔力が込められてる分特殊な血液なのよ。……それでアンタさ、ワタシがいくつに見える?」
彼女は振り返ると僕にそう尋ねた。僕は失礼にならない程度にシアラの姿を上から下まで見る。頭一つ分は小さい彼女は、薄い肩や体型から見た目だけはレティと同じぐらいに見える。だけど、アイナさんが魔人種の年の取り方が特殊だと説明していた。たしか人の十年で魔人種にとっては一年ぐらいだと。見た目が十歳以上ならそこに十を掛ければいい。
「百歳かそこらか? いや、でもハーフだとどうなるんだ」
答えてから疑問が湧いてくる。純潔とハーフだと血の色以外にも違いがあるのかもしれない。だが、シアラは小さく、はずれと言った。
「ワタシはな……今から三百年以上前に生まれたんだ」
自嘲気に少女はとんでもない事を口にした。
「ワタシの身の上はハインツから聞いているか?」
「……ああ。確かどこそこの城の奥で氷漬けになっているのを見つけたって」
「そうよ。それが三百年前。凍らせたのは……六将軍第二席、ゲオルギウスさ。アイツがワタシを……当時、人間種に換算すれば十を超えたぐらいのワタシを凍らせた。それも、その氷の中は時が止まらないんだぞ! 外と時間の流れ方が異なるけどワタシは三百年間、意識を保ったまま氷の中でじっと待っていたんだ!」
喋りながらシアラはヒートアップしていく。途方もない話に呆然としてしまう。彼女のいう事が正しければ、彼女は三百年間何かをすることも出来ない氷漬けの世界で時が流れていくのを見てた事になる。
おそらく、彼女を凍らせた後、ゲオルギウスは何者かと戦い手傷を負ってネーデの迷宮に逃げ込んだのだろう。酷い事をしやがって。
「この瞳はね、特別変異。生まれた時からこの色だったそうよ。それと、これだけはハッキリさせておくけどワタシは人間種とのハーフだったからゲオルギウスたちとは敵対してたの。関係者じゃないわ。いいかしら!」
「お、おう。了解しました」
指を僕に向けると彼女は念を押すように言った。その迫力に負けて頷く。
「なら、宜しい。……それでアンタはゲオルギウスが万全の状態と正面から戦ったの? だったら古代種の龍は楽勝だけど……」
「あの時のゲオルギウスは心臓が二つ潰れていた状態でレベル100以上の冒険者三人を圧倒していた。……それと比較したら?」
シアラの綺麗な顔に影を差した。落胆したような表情で口を開く。
「それじゃ、古代種の龍の方が強いわ。少なくともその状態のゲオルギウスがもう一人いると思った方がいいわ」
そんなの悪夢じゃないか。あれ一人でもネーデの街を滅ぼしかねない怪物だったんだぞ。予知にオルドが登場しない以上、彼に助力を頼めないのがつらい。
「とにかく! アンタが何者で何を隠しているのか知らないけど、これだけは確実に言える。アンタはワタシの技能を覆す力を持っている。アンタならこの残酷な未来を―――変えられるはずよ」
その言葉はじんわりと僕の胸に暖かい感情を宿らせる。後ろ向きの自分に対して前を向くように彼女は励ましている。
しかし、僕の口から出たのはまたしても後ろ向きな言葉だ。
「だけど、僕に何が出来んだよ。レベルだって技能だって弱い。何も持っていないんだよ」
「だからなに? アンタがたった一人で挑むならそんな弱音を吐いても良いわよ。でもね、あんた一人で挑むんじゃないのよ。アンタには仲間がいる。ワタシだってついている。アンタは一人じゃないのよ」
僕は―――一人じゃないか。今までは自分で何とかしないといけないとずっと思い込んでいた。でも、シアラがそんな僕の勘違いを打ち砕いてくれた。
「ああ……冷えてきたわね。コートありがと。先に帰らせてもらうわよ」
山から吹いてきた風を避ける様にシアラは屋上を立ち去ろうとする。僕はそんな彼女に向かって尋ねた。
「そういえば……結局、年は幾つなんだよ?」
すると、シアラは振り返ると口元に年相応の悪戯めいた笑みを浮かべて言った。
「女に年を聞くなんて、そんな野暮な事はしちゃだめよ、ぼーや」
彼女は楽しそうに屋上を軽やかに降りていった。
僕は避難施設を後にして静かな街を歩いて行く。街灯はついておらず、月明かりを頼りに坂道を下っていく。頭の中ではシアラの明かした情報を整理している。
彼女の予知は彼女自身が思っているよりも絶対の予知かもしれない。なぜなら僕は彼女の予知通りに一度死んでいる。《トライ&エラー》のお蔭で死んだことが無くなったに過ぎない。つまり、彼女の予知はちゃんと的中しているのだ。だとすれば赤い龍が来るのは確実だろう。
それでも疑問は湧く。僕の死の運命を《トライ&エラー》で後出しじゃんけんのように変えたのは納得いく。だけどあの奴隷の少年は何故だ?彼女の《ラプラス・オンブル》で確定した死の未来を《トライ&エラー》を使わずに救い出せたのはなんでだ? フィクションの世界でも確定した死の未来を変えるのは並大抵では無い。
思いつく可能性は僕が異世界人だからだろうか。エルドラドの運命とは無関係の存在だから運命に飲まれることなく抗う事ができているのかもしれない。思い返せばファルナを助けたことは運命を変えた一例だ。死という一度確定した事実を覆したのだ。《トライ&エラー》は使わずとも運命を変えている要因を僕は握っているのか? 自分が世界にとって異端だと改めて認識した。もしかしたら、僕はこの世界の未来を知らずに滅茶苦茶にしてるかも知れない。
思わずぞっとしてしまう。だとすれば龍を倒すことは正しいのだろうか?
(いや! 龍を倒さないとシアラは、もしかするとリザやレティ、ファルナも死んでしまうかもしれない。龍を倒すかどうかで迷うなよ。龍は倒さないといけないんだ!)
決意を新たにしたがどうやっても龍を倒す方法は思いつかない。手負いのゲオルギウスだって最終的には人任せ。今回も自分の手に余る。やはりここは誰かに相談しないと駄目だろう。
そう考えているといつの間にかカザネ亭の前まで戻ってきた。道路から窓を見上げると明かりがちらほらとついていた。『紅蓮の旅団』のメンバーも戻って来たのだろう。だとすればあの人も帰ってきてるはずだ。
すると、僕の思いに応えるかのようにドアを潜り抜けてオルドが現れた。
「ん? こんな所にいたのか、レイ」
オルドは日頃の明るさは影を潜め、疲れを表情に滲ませている。やはり彼でもこのスタンピードにて疲弊しているようだ。手には酒瓶が握られている。
「どうも。……僕に用ですか?」
「ああ、うむ。……ちと話せないか?」
それは願っても無い申し出だった。僕も同じ気持ちだったため頷く。オルドは周囲を見渡すと宿屋の中庭を提案した。問題が無かったので僕らは中庭へと移動した。
中庭は井戸とベンチしかない殺風景な場所だ。ここでホラスにファルナをどう思うかと尋ねられたのが昨日の事なのにとんでもなく遠い思い出に感じた。ベンチに腰を掛けたオルドの隣に座った。
彼はグラスを使うことなく直接アルコールで喉に流すと口火を切った。
「ファルナを慰めてもらったようで助かった。礼を言うぜ」
言うなり、オルドは頭を下げた。僕は予想外のことを言われて驚いた。
「ファルナを探しにお前の部屋に行ったら嬢ちゃんたちと食事を取っていてな。多分、今日死んじまった仲間の事でお前らに話をしに行ったんだろ。葬式の時よりも幾らか元気を取り戻してたぜ」
「……僕は何もしてないよ。ファルナは強いから、きっと自分で立ち直っていたよ」
「そうかもしんないが、今回は違うだろ? 父親として礼を言わせてくれ」
再び頭を下げたオルドに対して僕は黙って礼を受け取った。手にした空いたグラスを僕に渡す。躊躇したが僕は結局グラスを受け取った。透明度の高いアルコールを口に流し込んだ。くらりと、頭に衝撃を受けたような感覚に陥る。
「はは。まだガキには早かったな。……それでお前、オレに何の用なんだ?」
「……気づいてましたか」
「まあな。これでも短期間とはいえお前の師匠だった人間だ」
再びアルコールを流し込むオルドに対してどう切り出そうか悩む。シアラの名を出せば話はスムーズに進むが彼女に迷惑が掛かる。僕は逡巡しながら口火を切った。
「……僕がこの先の未来が見えるって言ったら信じますか」
オルドは酒瓶を取りこぼした。ガラスが砕ける音と、揮発するアルコールの匂いなどをオルドの反応を探ろうと集中した五感が拾い上げる。彼は眉根を潜めて僕を睨む。その威圧感に負けない様に居住まいを正した。
これは真っ赤な嘘だ。未来が見えるのは僕では無くシアラだ。だけど彼女の存在を出さない以上、この選択肢しか思いつかなかった。仮に、この先オルドとの築いた信頼を失う事になっても後悔しない。それだけ龍に関する予知は重要だ。
「……レイ。……冗談とかなら笑えないぞ」
低い、威圧的な声で問いただされる。その声に僕は手ごたえを感じた。少なくともオルドは興味を示している。僕は畳みかける様に言葉を継ぐ。
「冗談でこんなこと言うと思いますか。……僕の予知だと、近い将来この街に角の生えた赤い龍が現れます」
「―――赤龍だと! 古代種のか!?」
オルドの反応は思っていた以上だ。目を吊り上げて怒気を放つ。興奮からか目が血走っている。僕は壊れたロボットのように頷くしかできない。
「まさか……しかし、メスケネストの迷宮だとすれば。……六将軍なら古代種も操れる? しかし、角だと?」
オルドは小声で呟くと僕を睨んだ。
「レイ。今の話を誰にもしていないな」
頷くとオルドは僕の肩に手を回したオルドの顔が近づく。アルコールくさい吐息が顔に掛かる。
「このことは誰にも話すな。……理由はわかるな?」
「パニックの回避のため……ですよね」
「分かってるな。いいか、絶対に誰にも話すなよ!」
オルドは再度念を押すと中庭を早足で立ち去った。僕は思わずベンチにへたり込んでしまう。これで良かったのだろうか? シアラの存在を明かせない以上、自分が予知したというしかない。簡単には信じてもらえないだろうと思っていたのにあそこまでのリアクション。拍子抜けしつつ嫌な予感もしている。どうもオルドも何かしらの情報を隠しているんじゃないか?
そんな疑念を抱きつつ僕も中庭を後にして部屋へと戻る。静かな宿屋の階段を上り、部屋の前に立った。
(そういえば、夕食を取ってないな。何か食べ物が残っているといいんだけど)
そう思いながら何気なくドアを開けて部屋に入り―――硬直した。
室内にはリザとレティとファルナが居た。
なぜか―――裸で。
最初に視界に飛び込んできたのは眩しいばかりに研ぎ澄まされたリザの白い肌だ。衣服からでは薄い胸と思っていた彼女の体はこうやって直接見ると女性らしい丸みを帯びている。まるで西洋人形のようなしなやか美しさを放つ。まだ十五歳という年齢を考えれば決して劣っている方では無い。手足も細く長く、将来きっと美人に成長するだろう。
視線をずらすと今度は対照的なファルナの生命感に溢れた瑞々しい褐色の肌が目に入る。元居た世界でいう所の中東系のようなオリエンタルな美しさと扇情的な美しさの両方を有している。柔らかな華奢な体にやや膨らんだ胸。手足のバランスもリザと比較しても負けておらず、きっと彼女も将来男の目を捉えて離さない美女へと育つだろう。
最後に飛び込んできたのはレティの無垢な少女の肌だ。二人に比べたらまだ幼いレティは、幼い少女なりの可愛らしさを振りまいている。未完成の美とでもいうのだろうか? 数年後には消え去っているからこそより美しく見えるのかもしれない。ちなみに僕はロリコンでは無い。なので、レティに欲情なんかしていない。むしろ他の二人の方が―――何でもない。
どうやら三人は桶に水を汲んで汚れた体を拭いていたようだった。非常事態宣言が出された街では公衆浴場も閉まっている。ベッドの上で美少女三人(内一人幼児体型)が互いの体を拭きあっているという官能的な光景が広がっていた。僕が部屋に入ると三人は硬直して、大事な所を隠す余裕すらない。逃げるなら今だと本能が叫ぶ。
「お邪魔しまし―――」
「―――死ね! バカレイ」
「―――ご主人様、お覚悟を!!」
「やぁん。ご主人さまのへんたーい」
逃げる事はかなわなかった。リザとファルナが手当たり次第に投げた荷物が僕の額を直撃したのを最後に―――僕の意識は落ちた。
願わくば、目が覚めた時に《トライ&エラー》が発動していないことを祈る。……その場合、下手人は顔を赤くして殺意を振りまいてるリザとファルナだろう。
こうして精霊祭一日目が終わりを迎えた。
読んで下さってありがとうございます。




