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試行錯誤の異世界旅行記  作者: 取方右半
第3章 精霊祭
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3-14 精霊祭 一日目〈XIV〉

 モンスターの軍勢が突如撤退してから一時間。謁見の間にて宰相のルルスやギルド長のヤルマルなどの文官やミカロスを始めとした前線で戦っていた武官などが報告のために集まっていた。その中にはオルドの姿もあった。


 彼は着席しながら横目で出席者たちの様子を伺った。どの者も疲労の色を濃く残し、中にはあからさまにため息を吐いている。下から吸い上げた情報を目の当たりにしてこれからの事を考えて不安に思っているのだろう。


 だからといって、そのような姿を人目につくところでやるなと言葉に出さずにオルドは思ってしまう。謁見の間には兵士や下級文官は入室していないがそのような疲れ切った顔を上に立つ役目を持つ人間は見せてはならないとオルドは考えている。『紅蓮の旅団』を率いる時も常にその辺りの事を注意している。


(それにしても……モンスターが引いたのは正直助かったな……あのまま夜戦に突入されたとしたらぞっとする)


 オルドは防壁の上から見た光景を思い出していた。まるで津波が起きる前の海岸のように不気味なほどモンスターたちは距離をとった。


 初日だけで地上に一万八千、空中に三千の計二万一千のモンスターは夕方の時点で半分以上数を減らしていた。それでもあのまま戦闘を続けることは可能だったはずだ。それなのに奴らはあれから一時間、動く気配が無かった。


 前線指令所も敵の不可解な動きを受けて意見が二つに分かれた。様子を見るべきと訴えたのはオルドとウォントの二人。過去、別の場所でスタンピードの経験があるだけに二人はこの行動が違和感どころか気持ち悪くさえあった。それに向うが引くなら引かせればいい、藪をつついてとんでもない物が出てきたらシャレになってない。


 だが年の若いディモンドと騎士団副団長コンロンは強硬に追撃戦を訴えていた。あの時点で満足に動けた兵の数は凡そ五千。そこに冒険者と予備兵を合わせれば七千弱。数では負けていたが戦力としてはモンスターたちとそこまで変わらなかった。


 その意見を退けたのはミカロスだった。彼は二つの理由から平地での決戦を避けた。一つは時間。春とはいえ、まだ上月。あと三十分も経てば日は確実に沈む。夜戦を仕掛けるほどの準備も練度も連携もこちらには無い。二つ目が予備兵をこの局面で戦闘に使う事だ。確かに、彼らの中に戦場の経験がある元兵士もいる。だが、大半が軍事訓練を受けただけの一般人。今回が初陣というのも大勢いる。普通の兵士と同じように扱うのは難しいだろうという理由だった。


 結局、ミカロスの意見に二人は自分たちの意見を撤回した。もっとも、不満げな表情は浮かべていたのがオルドには気にかかっていた。


 その時、兵士が王の入室を告げた。


「テオドール王のご入室也!!」


 一同は立ち上がり王へと頭を下げた。テオドールは颯爽と上座へと歩み寄ると全員を座らせた。王の顔色は凛々しく、その覇気は難局に対しても衰えていない。


(流石鍛冶王と呼ばれるだけあって鉄火場には慣れっこか?)


 大黒柱が揺るぎない様を見せるだけで一同の士気は上がる。テオドールは眼光鋭く全員の顔を見てから口を開いた。


「皆の者。今日一日、御苦労であった。此度の難事に対して皆懸命に戦ってくれた。そのお蔭で見よ、アマツマラの街並みは無事のままだ。これは其方らの功績だ。誇るが良い」


 尊大な口調だが、王なりに労わる気持ちがあるのだろう。臣下は心を打たれたように肩を震わしている。ミカロスも目頭が熱くなるのを感じている。


「そして、今日という晴れやかな日に悲しくも御霊に逝ってしまった者達に哀悼の意を捧げ、しばし黙祷を」


 王が目を瞑ると一同もそれに習った。昼間の論争とは打って変わって謁見の間に静寂が齎される。


 一分ほど時間が経過してから、会議が始まった。司会進行を務めるのは宰相ルルスの部下、オリバーだった。


「それでは会議を始めます。まず初めに今回のスタンピードにおける被害者数について。一般人の被害は死者五百九十二名。負傷者二千四百五十三名。幸いにもこの中に我が国及び他国の貴族豪族名士などの上級階級の方は含まれていません。多くが奴隷市場や商店の関係者や観光客ばかりです」


 オリバーの心無い言い方に一同は反感を抱くが会議の進行を阻害させないために堪えた。知ってか知らずか青年の報告は続く。


「遺体は身元の分かった方から埋葬をしています。何分、爪や牙による損傷が激しく、着ていた衣服から推測しているので明日まで続くかもしれません。次に現在収容されている避難民についてです」


 一度言葉を区切るとオリバーは壁際に置かれたボードへと動く。そこには拡大されたアマツマラの地図が張りつけられている。


「貴族などの上流階層の方々は城の後方。バルボア山脈をくり抜いて建設された特別避難地域に収容されています。他の避難民は街の上層区画、有事の際に収容できる施設に分けて避難しています。今の所暴動や病気などの伝染病は確認されていませんが国民から一時帰宅の要請が出ています。いかがいたしましょうか?」


「ふむ……ミカロス。モンスターの動きは?」


 オリバーの質問にテオドールは考え込むとミカロスへと質問を投げかけた。一同の視線が騎士団団長に向かう。


「一時間前から一シロメーチルの地点から動かず。沈黙を保っています。防壁上にかがり火を焚いて目視による監視は続けています。動きがあればすぐに分かります」


「分かった。一時帰宅だが許可しよう。ただし一度に全員を帰せば混乱する。時間を区切り、地区ごとの住民を移動させろ。それと避難施設だが他国の観光客と市民を混ぜているのか?」


「ええっと……そのようです」


「避難民の精神は疲弊しているはず。何がきっかけで弾けるか分からない。他国民との摩擦で暴動が起きたら後々追及されるやもしれん。一時帰宅に合わせてこれを分けろ。せめて他国民と自国民だけでも分けて収容せよ」


 畏まりましたとオリバーは頭を下げた。青年は確かにと納得していた。暴動は起きていないが小さな不満の声は大量に自分の所に集まっている。これがいつ大きな騒動に繋がるか分からない。そのリスクを少しでも減らすために多少面倒だがやっておくべきことだ。


 王の判断に納得しながら彼は着席した。代わりに別の文官が報告を開始する。


「食料についてですが特別地域の商店や、都市の問屋などから購入した食料。それと城に備蓄してある量を合わせますと十日程は持つかと思います」


「分かった。城の料理人達に炊き出しを命じる。一時帰宅から戻った者から食料の配布を。それと冒険者と特別地域の者達にも。人手が足りなかったら避難民から募れ」


 報告が終わるとさらに別の文官が報告を始める。一同の前にアマツマラの現状が浮き彫りになり、問題点が是正されていく。


 文官からの報告が終わると王宮魔術師のヨグトゥースが立ち上がった。


「報告いたします。近隣一帯の魔力汚染ですが芳しくありません。除去まであと一日。明日の今頃には終わるはずです」


「随分と時間が掛かっているな。……やはり何者かの策略か?」


 王の言葉に一同に緊張が走る。彼らの中で今回の事態がただのスタンピードでは無いのは周知の事実。どこかの勢力による手引きなのは明白だった。それに加えて魔力汚染も何者かの仕業なら犯人が大分絞られることになる。


 ヨグトゥースは汗を拭きながら自分の考えを述べた。


「いえ、これほどの魔力汚染を人為的に行えるとは思えません。少なくとも人間種・・・には不可能な事です」


 王宮魔術師の言葉に一同は騒めく。彼らの中で一つの単語が躍り出していた。しかし、それを認めるわけにはいかなかった。テオドールが騒めく出席者を制して口を開いた。


「……自分が何を言っているのか分かっているかヨグトゥース」


「はい。何度調べても同じ結論に達しました。……今回の一件、間違いなく魔人種による仕業です」


 出席者はみな一様に息を呑んだ表情を浮かべる。ミカロスもルルスもオスカーもそしてテオドールさえも。表情が固まり、息をするのさえ躊躇うほどの静寂に陥る。


 ただ一人、オルドだけはしかめっ面を浮かべながら自分の腹を摩る。真新しい傷をつけた魔人の顔を思い出していた。


「ヨグトゥース殿。お主は此度の騒動が魔人種による我が国への戦争行為と思うのか?」


「そこまでは明言できません。皆さんもご存じのように魔人種は三百年前の戦争に敗れてからエルドラドから姿を消しています。僅かに残った生き残りが細々と生きていますがギルドや各国の行政機関に居所を監視されています」


「……確かにな。我が国に二人。それぞれウージアとオウリョウに居るが、彼らが居なくなったのなら報せが届いていたはず。……近隣一帯の魔力を汚染するのにどれぐらいの時間が掛かる?」


 尋ねられたヨグトゥースはしばし考え込んでから五日と王に応えた。


「少なくとも五日前から昨日の間にそのような報せは無かった。とすればあの二名による行為では無いな。では一体何処から……」


 テオドールは眉の間に深い皺を刻む。折角黒幕の正体へと近づけたと思ったのに決定的な証拠が見つからない。敵の正体が分かればその目的も、どうしてモンスターを引かせたのかも理解できるかもしれないのに。まるでベールの向こうからこちらをあざ笑う影を追いかけているようだった。


 すると、一人の男が手を挙げた。この会議の間沈黙を保っていたオルドだった。意外な男の行動に全員が虚を突かれた形になる。


「この場にいる方々でどれぐらい知っているか分かりませんが……オレは二週間ほど前、六将軍第二席。ゲオルギウスと遭遇した」


 痛々しいほどの沈黙が謁見の間に響く。誰もが有りえないと一笑にふしたい内容だった。だが、『岩壁』のオルドの口から出た事がそれを許さない。


「オルド殿! その件は!!」


 沈黙を破るようにヤルマルが周りを憚らずに叫んだ。その態度が出席者に対してかえって事実だと証明しているのにも気づかない程彼は険しい表情だった。オルドは老人の激昂を目で制止ながら言葉を続けた。


「皆さんもご存じでしょう? 三百年前、同じ六将軍に魔物使い・・・・と呼ばれた者がいた事を」


「六将軍第四席、クリストフォロス。何ともまた、伝説の向こう側に消えた名前を二つも聞くことになるとはのう」


 ルルスがため息まじりに告げる。一同はその名前を聞いて騒めきだす。ある者は六将軍ならあり得ると言うと、そんなものはもう伝説の存在だと反論し、なら我らが相手するのは伝説なのかと悲嘆する者が現れる。喧々諤々。謁見の間は落とされた爆弾に比例して混乱の極地に遭った。


 ―――バキンと凄まじい音が広間に発生した。


 ののしり合いへと発展しかけた出席者たちは発生源の方を見て驚いて黙る。重厚な木のテーブル。それこそ辞典並みの厚さの板が拳の大きさにくり抜かれている。テオドールの振り下ろした拳に耐えきれなかったのだ。


「……やっと静かになったな。……オルドよ。それは緘口令の敷かれている機密では無いのか?」


「……そうです。混乱を避けるためにギルドから口止めをされてましたが……こんな状況です。疑わしい可能性は全て出すべきだと思いましてね」


 しゃあしゃあとした態度を崩さない男にテオドールは苦笑を浮かべてしまう。彼もこの機密を知る者としてヨグトゥースが魔人種を口に出した時点で関連性を疑っていた。しかしそれを実際に口に出そうとは思わなかった。王として憶測を語るわけにもいかず、単に混乱を招くだけになるかもしれないと危惧したからだ。


(スマンな。お前に汚れ役を押し付ける事になって)


 心の内で謝罪の言葉を述べると、それを読んだかのようにオルドは首を振った。かつて共に迷宮に挑んだ者同士語らずとも分かり合える。


 テオドールが男の友情を感じているとミカロスが口を開いた。


「仮に……仮にですが六将軍の陰謀だとしたら此度の一件。奴らは何が目的なのでしょうか。かつて魔人種が掲げた題目は人の殲滅。今回もゴールが同じだとしたらなぜこのような真綿で首を締めるかのような消耗戦を続けるのでしょうか? それこそダラズを全兵力で迅速に落としてからこちらを攻めれば無駄な消耗をせずに済むはず」


 騎士団団長として軍事の長としての疑問を口にした。だが、それに応えれるものは居なかった。それだけ魔人種、特に六将軍の真意など誰にもわからなかった。


 黒幕の正体に近づいたと思えたのに、更に奥に新しいベールの影を見ただけのような徒労感を一同は感じてしまう。そのまま会議は次の議題へと移っていく。


 ヤルマルがある商会から王の名代として頼まれていた物の購入が出来た事を告げる。そしてヨグトゥースの配下の魔法使い部隊の損耗。ミカロス率いる騎士団の死傷者。それに冒険者の死傷者などが上がっていく。


「そうか。兵は六百程。冒険者も七十人程死んだか。……ヤルマル。国からも生き残ったクランやパーティーに対して弔慰金を支払うつもりだ。騒動が終わり次第、死者のリストを回してくれ」


「ご厚意痛み入ります。……ですが国庫の方は宜しいのですか? 聞けば大分使ったとの事ですが」


「なあに。今回の損失ぐらいオレの手で取り戻して見せよう。鍛冶王の名は伊達では無いさ」


 王の言葉に一同は笑みを零した。六将軍などという荒唐無稽な、それでいて不吉な予感に苛まれていた出席者たちはようやく笑みを浮かべる程度に回復していた。そのまま議題は進み、最後の内容となった。


 ミカロスが硬い表情を保ったまま口を開く。


「指揮官としての意見ですが。今のまま残りの七万以上を相手取るのはこちらの戦力では難しいです。それに敵の正確な規模が不明なのも作戦を練るのにも支障が出ます。やはり一刻も早い増援が必要です」


「ふむ。それは重々承知しているつもりだが……そう言えばそろそろ伝令がウージアについてもよい時間だな」


 王の言葉に全員の視線が時計へと集まった時刻はもう七時を指そうとしている。時折、確定した方針を各所に飛ばす為の休憩時間が設けられていたが会議が始まって二時間以上が経過していた。


「だとしたら、明後日にはウージアからの増援がやって来るはずですね」


 と、文官が口にしたが全員が重苦しい表情で返した。特にテオドールが一番気難しそうな顔を浮かべている。文官は自分が何か失言したのかと不安そうに怯えた。


「有事に備えてウージアは近隣の砦に兵を駐屯させている。集めれば恐らく二万近い兵になるじゃろうが……どう思う、陛下よ」


 ルルスが渋面のまま王に問いかける。テオドールは頭を掻きながら師へと答えた。


「分かってるでしょうに……あの女の事だ。来ませんね・・・・・




 アマツマラから馬車でも一日半掛かる距離にある眠らない街ウージア。太陽が姿を隠すのに合わせて街が目を覚ます頃、街の中央の城に伝令が飛び込んできた。


 馬車で一日半掛かる距離を半日で駆けた伝令は息も絶え絶えに書簡だけを渡すと安堵の表情を浮かべてこと切れた。馬の襲歩に内臓が耐えきれなくなり伝令が死ぬのはままある事。主の後を追うように馬も膝を折ると二度と立ち上がらなかった。


 書簡を受け取った男装の麗人はその只ならぬ様子からすぐさま主の元へと駆けだした。ウージアの女帝はその時、優雅な夕食を堪能していた。いつもならどこそこの屋敷に呼ばれて食事会などに顔を出すのだが今は精霊祭。彼女を招けるような階級の人間はこぞってアマツマラへと旅立っている。


 そのため女帝はたった一人で晩餐を愉しんでいた。選りすぐりのワインとシェフが腕によりをかけた豪勢な食事を味わう。贅沢にも楽師による演奏付きだ。弦楽器の調べが彼女の心を満たす。


 そんな中を不興を買うのを知りつつ従者は書簡を女帝に渡した。男も女も惹きつけてやまない美貌に一瞬険が差したが、それも一瞬だった。彼女は書簡を巻いている封蝋を見て驚いた表情を浮かべた。それは義理の息子、テオドール王の印だった。


 書簡を開いた彼女は内容を一読すると従者にそれを渡した。何事かと思い従者が書簡に目を落として―――驚いた。


 アマツマラとダラズにおいてスタンピードあり、至急増援を送られたし。


 纏めるとこういう内容だった。他にも敵の規模や書簡がしたためられたときのアマツマラの状況などが克明に書かれている。


「至急、砦の兵の招集と傭兵団の結成。それに冒険者の集合を命じます」


 そう言って出て行こうとした従者の手を女帝の指が掴んだ。絹のようなきめ細かい肌に触れると従者は状況を忘れて至福の幸せを感じてしまう。そのように体を弄られてしまった。


「援軍の編成よりもまず、近隣の村人の収容を先に。ダラズは街道から外れるけどここからアマツマラの間にあるわ。スタンピードがこちらにも来る可能性がある。そうなれば周囲の村なんかあっという間に飲み込まれてしまうわ」


「それは……そうですが。宜しいのですか? この書簡には至急増援と書いてありますが」


 従者が叱責を覚悟で主に意見を述べた。すると女帝は満面の笑みを浮かべて見せる。それはとても三十になる成熟した女性の笑みでは無く、まるで幼子の無邪気な、そして無慈悲な笑顔だった。


「やあよ。メンドクサイ」


 あっけらかんと、悪びれもせずに彼女は言い放つ。その姿に一片の罪悪感すら抱かずに女帝は言葉を続ける。


「国において首都決戦なんて負け戦よ。わざわざそんな状態に首を突っ込むなんて莫迦がする事よ。援軍は出すけど直ぐに出せばまだモンスターの数も士気も高い。人間もモンスターもどちらも疲弊したところを狙って私たちの軍が叩く」


「ですが……後々、面倒な事にはなりませんか? 特に第二王子辺りがこちらに嫌悪抱いているのは明白。この件を誤ればご自身の進退にも」


「私の? それはそれで楽しそうじゃない」


 女帝は右手で品の良い顎を撫でる。その眼にはギラリとした猛禽類のような鋭い輝きを放っている。彼女は本心からそんな状況を楽しんでいるのだと従者にも伝わった。


「とりあえず、村人の収容を最優先に。これなら援軍の編成が遅れたことのちゃんとした言い訳になるでしょ?」


「畏まりました。それでは私は」


「ええ。宜しく。それと貴方たちも下がって頂戴」


 部屋にいた楽師やメイドたちが従者と共に部屋を出ていく。グラスに並々と注がれたワインを手にした女帝はポツリと呟いた。


「さてさて。どこの誰の仕業か知らないけど、随分と面白くなってきたわね。……それともこれはおとうさま・・・・・の御意志なのかしら?」


 独り言をつぶやいた女帝はワインに口を付けた。ふっくらとした唇が赤いルージュを塗ったように色づく。


読んで下さってありがとうございます。

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[一言] 彼女は黒幕の1人として描かれるのかはたまた哀れな小娘として描かれるか………
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