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試行錯誤の異世界旅行記  作者: 取方右半
第12章 大陸の果て
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12-60 離散

 帝国第一皇子ゴルディアスの狙いはレイと姉妹の分断。それに気づいた時には手遅れだった。


 《ミクリヤ》は操られた《神聖騎士団》の面々に拘束され、《トライ&エラー》のセーブポイントが更新されてしまった。これでは、死に戻ってやり直すこともできない。降りしきる雪の粒よりも冷たい鋼の感触を味わいながら、レイは打開の手を考え、どうするべきか閃いた。


 一見すると問題の先送りで、状況を悪化させるだけかもしれない。


 だが、彼女がこのまま拘束され聖都まで連れていかれれば命は無いだろう。姉と違い、彼女の存在はゴルディアスにとって脅威だ。生かしておくとは思えない。


 レイは、音を立てて近づいてくる不吉を振り払うように叫んだ。


「「「ポラリスッ!」」」


 その叫びは一人分では無かった。


 ミストラルに頭を踏まれているシアラと、ファルナに拘束されているリザも同時に叫んでいた。途端、ローランの蹴りがレイの肺に深々と突き刺さり、シアラは雪で溺れるかのように頭を押された。続くはずだった言葉が文字通り押しつぶされたてしまったが、リザはファルナに腕を決められながらも、レイとシアラが言おうとしたことを続けた。


「レティを連れて、逃げて!」


「了解。状況を開始します」


 雪の大地にメイド服という奇妙奇天烈な格好をしたポラリスが、下された命令に反応して行動する。手にした旅行カバンを斜めに振り上げた。細身の彼女が扱うのに相応しサイズだというのに、まるで巨大な鉄槌を振り回した衝撃音と共に盾使いが吹き飛んだ。


 スカートの裾を翻して宙を舞う姿は、舞台で踊るプリンシパルのように全員の視線を集めた。


 コウエンを制していた弓使いとミストラルの照準が宙を舞う彼女に向くが、それより前にポラリスが鞄から放り投げた音響爆弾がさく裂した。不可視の音波が辺り一帯に拡散され、衝撃波となって動きを止めた。


 体内で同じ音波を再現していたポラリスだけが自由に動ける。わき目も降らず、レティを抱えたまま足を貫かれたヨシツネの方へと駆け寄った。


「ポラリス殿、受け取ってくれ!」


 音響爆弾の効果を受けているにもかかわらず、ヨシツネは抱えていたレティをポラリスへと放り投げた。軽い体躯の少女をポラリスは片手で抱き留めると、飛行ユニットを起動させる。重力に逆らい浮かぶ彼女の姿にオーバートが珍しく狼狽した様子を見せた。


「なぁ! 空を飛ぶだと! い、いかん、あの娘だけは逃がすな、《神聖騎士団》!」


 オーバートの命令を聞き、弓使いとミストラルが空を昇るポラリスへ技を放とうとする。だが、彼らの視界を白い煙が奪った。


「やら、せない!」


「お姉ちゃん、お兄ちゃん! ポラリスさん、飛ばないで! 戻って!!」


 レティの悲痛な叫びが聞こえるが、彼女の姿は白い煙に遮られて見えなくなった。


 肋骨を踏み砕かれながらも、レイは炎で足元の雪を蒸発させ、生じた水蒸気で全員の視界を奪った。高温の蒸気に足元から頭までをすっぽりと覆われると、熟練の冒険者は手近に居た《ミクリヤ》のメンバーを引きずって回避行動を取った。


 彼らが水蒸気から脱出した時には、レティを抱えたポラリスの姿は遠ざかり、どうやっても手が出せない距離となっていた。


「申し訳ありません、レイ様。勝手な判断を下してしまい」


「はぁ、はぁ。いや、これで、いい。これで」


「いい訳ないでしょうが! やってくれましたね、小僧」


 遠ざかるポラリスたちを見送りながら、レティを逃がせたことに満足しているレイの視界を、爬虫類じみた形相に怒りを隠そうともしないオーバートが遮った。


「はは。どうしたんだい、異端審問官。アンタの狙いは僕じゃないのか。それとも、レティを連れて来いと、どっかの皇子様に頼まれているのか」


 図星だったのだろう。オーバートの額に浮かんだ血管が、いまにも切れそうなほど膨らんでいる。


 やはり、オーバート異端審問官は帝国第一皇子ゴルディアスと繋がっている。彼個人なのか、あるいは法王庁の上層部が協力関係を結んでいて、オーバートはその使いパシリなのかまでは分からないが、今回の茶番劇いたんしんもんの狙いはレティとリザを《ミクリヤ》から引き剥がすことだろう。


 今回、ゴルディアスがレイ達に接触をしたのは、姉妹の存在を隠すのが難しくなってきたのだと推測できる。《ミクリヤ》の名前は広まりつつあり、デゼルト動乱で『勇者』を退けたレティの存在は隠しきれない。


 遠からず、彼女たちの存在は皇帝にまで届いてしまう。


 もしそうなれば、皇帝の命令に背いてレティを生かして餌として利用していたゴルディアスの立場は悪くなる。そうなる前に、レティとリザを《ミクリヤ》から引き剥がし、皇帝にはリザを差し出し、レティの生殺与奪の権利を握るつもりだったのだろう。


 シアラもリザも、そこまで読んだ上でレティを逃がすようにポラリスに頼んだのだ。


 リザは捕まってどれだけひどい目に遭っても、命を取られる可能性は低い。


 そう、判断したのだ。


「……仕方ありませんね。あなた方を連行するという、最低限の役目を全うしましょう。《ミクリヤ》のメンバーを船に。積み込み次第、出港いたしますよ」


 意識を操られている《神聖騎士団》の面々に拘束され、武器を取り上げられたレイ達は法王庁の船へと引きずられていく。抵抗しようにも実力差を覆すのは難しい。ところが、その足はすぐに止まった。


「今度は貴方の番ですが。何かご用ですか。『三賢』殿」


 行く手を阻むのは、《神聖騎士団》の中でただ一人、意識を操られていないマクスウェルだった。


「まさか、彼らを聖都に連行するのを阻むおつもりじゃないでしょうね。流石に、異端審問の邪魔をされては、こちらも本気で対処しなければなりません。よもや、この様な雑事で法王庁と学術都市の対立を招くおつもりではありませんよね」


 彼は《神聖騎士団》に所属してはいるが、武装神官という訳でも、法王庁の人間という訳でもない。本来の所属は学術都市だ。『流浪の賢者』という二つ名を得たため、彼は冒険者に身をやつしている。


「そのようなことは望んでおらん。ゆえに、其方に助言をと思ってな」


「助言ですか。……いいでしょう、先人の智慧とやらを拝聴しましょう」


 自分の方が優位に立っていると思っているのか、オーバートは足を止め、若々しい姿のマクスウェルを見据えた。あるいは、舐め切っているのだろうか。


 だが、眼前に相対している男が、自分の倍以上も生き、修羅場を潜り抜けた冒険者ということをほどなく思い知ることとなる。


「其方は知らぬかもしれぬが、今のレイ殿たちは学術都市の正式な依頼を受けて北方大陸の調査に来た人員じゃ。つまり、その者達の身分は学術都市が保証している」


「何を仰るのかと思えば、それぐらいは知っていますよ。ですが、それが? こちらは異端審問の嫌疑を掛けられた者を連行するのです。こちらの職務を阻む権限は、そちらに無いはずですが」


「その通りじゃ、全くもってその通り」


 マクスウェルが同意を示すとは思わず、オーバートは怪訝そうな表情を浮かべた。


「じゃが、その嫌疑を掛けられているのはレイ殿。そして連行命令が出ておるのは、レイ殿が所有している戦奴隷までのはず。ならば、ほかのメンバーを連行する権利も其方に無いはずでは?」


「っ、それは……貴方も見たはずだ。彼らの仲間が戦奴隷の一人を強引に奪取し、逃亡したのを。《ミクリヤ》の構成員には、潜在的に反抗心のある者が含まれている。彼らを野放しにしておけば、リーダーであるレイを奪取するために襲いかかってくる危険性がある。ゆえに、全員を拘束して連行する必要があると判断できませんか」


「ほう、《ミクリヤ》の構成員に反抗心のある者か。では聞くが、あの者は本当に《ミクリヤ》のメンバーじゃったか。ギルドに登録されているパーティーのなかに、斯様な人物がおるのか?」


「……いいえ。少なくとも、私の得ている資料にポラリスなる人物の情報はありません」


「なんと、あの者は《ミクリヤ》に連なる者でないと。では、其方の論拠は成立しないのう」


 満面の笑みを浮かべるマクスウェルに対して、オーバートは今にも歯を砕きそうなほどに歯ぎしりをしている。


 無論、これが詭弁で、言いがかりに近い内容なのはマクスウェルも承知の上だ。誰がどう見てもポラリスはレイ達の仲間であり、エトネやクロノ達を放置すればレイの奪還に動く可能性はある。


 しかし、書類上の処理と法規に照らし合わせれば、オーバートがレイと彼の所有する戦奴隷以外を連行する権限も根拠も無い。


 異端審問は法王庁に許された強権ではあるが、それだけに一筋の瑕疵も許されない。危険因子になるかもしれないという曖昧な理由だけで、現場の判断で実行したという言い訳は通用せず、各国から追及の声が上がればオーバートの立場も危うくなる。


 加えて厄介なのが、マクスウェルの身分だ。


 実質的な影響力は無いに等しい『流浪の賢者』ではあるが、マクスウェルが正式に抗議をしたのを無視して連行すれば、間違いなく学術都市からも批判される。


「其方もこの様な雑事で、法王庁と学術都市の間に対立を招きたくは無かろう」


 先程、自分が相手にした言葉がブーメランの様に戻ってきた。


 オーバートは頭の中で損得勘定を済ませると、《神聖騎士団》に命じた。


「レイと彼の戦奴隷だけを船に連れていけ。ほかは手出しするな。……それで良いですね」


 マクスウェルは答える代わりに道を譲った。交渉で負けて憤慨するオーバートを先頭に、レイとリザ、シアラを拘束した《神聖騎士団》の面々が続いた。


 レイはマクスウェルの横を通り過ぎる際に、頭を下げた。


「ありがとう、マクスウェル」


「礼は不要じゃ。これぐらいしかできん、儂を許せ。他の者達の面倒は儂が責任を持つから、心配するな」


 十分だった。これでエトネやクロノ達の安全は保たれる。


「おにいちゃん! リザおねえちゃん、シアラおねえちゃん! みんなを返して!」


「待って、エトネちゃん! 行っちゃ駄目よ!」


 拘束され桟橋へと向かうレイ達をエトネが追いかけようとした。


 今にも殴り込みそうな勢いだったが、間一髪間に合ったクロノが羽交い締めにして止める。流石に不味いと思ったのか、コウエンも彼女を押し留めるのに加わった。


「ええい、落ち着かんか幼童。ここで手を出してしまえば、そこの賢者が取りなしたことさえ水の泡と消えるぞ」


「でも、さんにんが連れていかれちゃうよ!」


「分かっておるわ。だからこそ、あ奴らを取り戻すためにも妾たちのように自由に動ける存在が重要なのだ。……それに、気づいておらんのか。あ奴らは三人ではなく、四人であるぞ」


 コウエンの言葉に萌黄色の瞳が周囲を見渡す。遅れてクロノとキュイも同じ動作をした。


 居るべきはずの人物が、雪の上に赤い血だけを残して姿を消していた。


「呵々。流石はと褒めるべきじゃろうな。視界が白く染まった瞬間を狙って、抜け目なく潜りこみおったわ。正常な判断ができる《神聖騎士団》ならば見逃すはずもないが、あのような体たらくに陥っている奴らでは気づかんじゃろうな」


 声を潜めつつも、コウエンにしては珍しく惜しみない称賛を送った。







 両腕を拘束されたレイは、懐の重みを感じながら船の方へと追いやられる。龍刀やダガーは取り上げられた。


「ぐずぐずするな、さっさと乗船しろ!」


 レイの威圧にたじろいていたのを忘れたかのように、武装神官たちは威圧的な態度を隠そうとしない。武器を構えてレイ達の乗船を見張っている。


 《神聖騎士団》という強力な力を味方に付けて驕り高ぶっているのだろう。言い換えれば、《神聖騎士団》の洗脳状態はちょっとやそっとのことで解除されないということでもある。


「こりゃ、聖都に着くまでは脱出の機会は無いかな」


「私語は慎め!」


 誰かに聞こえるように呟くと、聞きとがめた武装神官の怒りを買った。メイスの柄で頭部を殴られた。痛みは無いが、皮膚の浅い部分を切ったらしく血が甲板を汚した。


「こらこら。出港の時間を遅らせるようなことはよしなさい。どうせ聖都に着くまで、たっぷりと時間はあるのですから。こういうのは、その時にね」


 割って入ったオーバートの爬虫類じみた瞳に嗜虐心が顔を覗かせていた。レティを逃がしたのが、相当腹に据えかねている様子で、溜まった鬱憤を晴らそうとするつもりらしい。


 脱出はおろか、安寧とした船旅を楽しむこともできそうもないとレイは肩を竦め―――。


「―――つまり、君たちは北方大陸を離れる、ということですね」


 ―――氷のように冷たい声に身を震わした。背骨を掴まれたような悪寒に、声のした方を振り向く。


 甲板に新たな人物が姿を現していた。


『魔王』フィーニスから与えられた転移の影から吐き出されたのは、六将軍第四席クリストフォロスだ。魔人はレイと同じように拘束されているシアラの細い肩を掴んでいた。彼女は意識が無いのか項垂れており、紫がかった黒の髪で顔は見えなかった。


「クリストフォロス! シアラに何をした。彼女から離れろ!」


「どうして、六将軍が?」


 激昂し叫ぶレイに対して、リザは戸惑いつつも冷静に疑問を呟いた。その答えをクリストフォロス本人が答えた。


「どうしてというならば、停戦協定の約定を履行しに来ただけさ。どういう形であれ、君たちが北方大陸を離れるなら、契約を果たしてもらわなければ」


 自分で停戦協定の契約書を法王庁に流出させたというのに、至極真面目そうな表情で堂々と続けた。


「停戦協定にはカタリナの居場所の情報を提供するという内容だったけど、誰がどうやって説明するかという内容は抜け落ちていた。戦闘で疲れ果てていただろうけど、魔人種と契約を交わすなら細部まで詰めておかないと、こうなってしまうよ」


 そのままクリストフォロスの姿が転移の影に飲み込まれていく。同時にシアラの姿も。


「くそ、シアラ!」


 取り返そうと駆けだしたレイとリザを、《神聖騎士団》の面々が取り押さえた。六将軍という脅威を前にしても、オーバートの命令が優先されてしまった。


「離してくれ、ローランさん! シアラが、シアラが連れていかれる!」


 レイもリザも必死に叫ぶが、彼らの声は誰にも届かない。


 実力さを感じたのか武装神官たちは石像のように固まって動かず、《神聖騎士団》は暴れるレイを取り押さえるのに人手を割いている。状況を動かせるオーバートは、じっと影に飲み込まれていくクリストフォロスを見つめていた。


 彼が止めようとしないのは明白だった。


「賢明な判断だ、法王庁の誰某だれそれ。このまま目を瞑ってくれるなら、こちらから手は出さない」


「……そちらのお嬢さんについては、特に指示が出ていないので、ご随意に。私は何も見ていないし、どうなろうが知ったことでは無い」


「上々の答えだ。法王庁の神官にしては理解があるね。それでは、レイ。契約は完了だ。君の所有する協定書は破くなり燃やすなり、好きにしたまえ。もう、不要の紙きれだからね」


 嘲笑を隠そうともせず、転移の影はクリストフォロスとシアラを飲み込んで消えた。二人が居なくなった空間を埋めるように、空から雪の粒が舞っていく。


 レティがポラリスによって助け出されたのとは違う。仲間が敵に連れ去られるのを黙って見届ける事しかできないという無念が、レイとリザの胸を貫いた。


「そんな……シアラ」


 膝から崩れ落ちたリザの瞳から大粒の涙がこぼれ落ちていく。


「……くそ、くそ、なんで、こうなるんだ。なんで、くそおおおおおおおおお!!」


 首や腕を抑えられ身動きの手ないレイは、竜が吼えるかのような絶叫を空に向けて上げていた。


 これまでにも、越えられないような困難は幾つもあった。その度に《トライ&エラー》と仲間の力を借りて越えてきた。


 いま、その仲間を失うことになった。







 ―――《ミクリヤ》は北方の大地にて離散する。


 レイ達は陰謀渦巻く法王庁のひざ元、聖都へ異端審問に掛けられに連行される。


 エトネ達はレイ達を茶番劇から守るために繋がりのある権力者を頼る。


 シアラは悪辣なるクリストフォロスによって、祖父である『魔王』フィーニスの元へ連れていかれる。


 そして、レティは。








「戻して、ポラリスさん、お願いだから、お願いだから戻してよ」


 雲海を舐めるように飛翔するポラリスの肩にしがみ付きながら、レティが嗚咽と共に帰りたいと繰り返し懇願する。メイド服はしっとりと重くなっているが、ポラリスは首を縦に振らなかった。


「拒否。現状でミス・レティシアが戻ったところで状況が好転する確率は零に等しいです。仮に、ミスター・レイ達を強引に救出すれば状況は悪化するでしょう。それを理解できないミス・レティではありません」


「そんなの、分かっているよ! でも、お兄ちゃんは、ご主人さまは約束してくれたんだよ」


 デゼルト動乱の最終局面。『勇者』ジグムントを止めたことで、レティは自分の存在が様々な勢力に知られてしまった。遠からず、ジグムントを操縦できる命令者として狙われると理解して、レイに尋ねたのだ。


 ―――『ねえ、ご主人さま。あたしたちと一緒に、地獄に付き合ってくれる?』


 それに対して彼は答えた。


 ―――『嫌だ』


 ―――『一緒に地獄なんか付き合わないよ。君達が地獄に居ると言うなら、そこから連れ出してやる』


 その言葉が、どれだけレティにとって嬉しかったのか。


 世界全てから狙われる恐怖。最強の力を操れるという重圧。どうやっても抜け出せない地獄。


 それら全てを振り払うかのような言葉に、レティは新しい家族を見出したのだ。


「皆と離れたくないよ、一緒に居たい、一緒にいさせて」


 ダムが決壊したかのように感情を噴きだすレティに、ポラリスはしばらくの沈黙の後に口を開いた。


「了承。では、戻りますか?」


 掌を返すかのような意見の変化に、レティは戸惑いの声を上げる。


「復唱。では、戻りますか? 戻って、全員仲良く捕まりますか? それをミスターレイが望んでいないと理解しながら戻りますか?」


 矢継ぎ早に繰り返される質問。白銀の瞳に映るレティの表情は徐々に変化していった。


「推測。私見になりますが、あの状況下でミスター・レイ、並びにミス・リザ、ミス・シアラが私を呼び、貴女だけを逃がすように頼んだのは、この組み合わせが最も効率よく状況を動かせると判断したのではないでしょうか」


「もっとも、効率よく?」


「肯定。『勇者』ジグムントをコントロールできる、帝国皇室の血を継ぐミス・レティと、エルドラドの広範囲で情報収集をしており、高演算情報処理ユニットと連携している私との組み合わせが、状況を動かせる最小単位であると推測します」


 言われ、レティは思考の海を潜る。


 ポラリスの言葉にも一理ある。彼女と一緒ならば、どんな場所にでも行けて、妨害をものともせず、誰とでも会える。クロノ達と一緒に考えて慎重に行動するのは、この場合だと手遅れになりかねない。


「テオドール陛下やオルド団長に話をつけて貰うのは、あっちに任せるとして、あたしたちは……うん」


 レティは拳で涙を拭う。


 もう、涙は流れない。彼女は、レイ達に託された自分の役目を理解し、告げた。


「ポラリスさん、お願いがあるの。会いたい人が居るんだけど、探してもらえないかしら」


 白銀の瞳に虹色の輝きが宿る。『機械乙女ドーター』ポラリスが新しい命令を受諾する。


「受領。何なりとお命じください、ミス・レティ。どなたを探しましょうか」


「……『正体不明アンノウンの娘たち』が一人。ウージアの『女帝』、ジョゼフィーヌ・ヴィーランドを探して」


ここまで読んで下さって、本当にありがとうございます。

これにて12章本編は完結となります。


閑話ですが、2本投稿する事を予定しております。投稿予定や内容につきましては、活動報告の方にて改めてお知らせしますので、目を通していただけると幸いです。

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[一言] 海外からの読者です。 この作品は魅力的なキャラクターと興味深いストーリーがとても好きで、いつか主人公の旅が続く日を待ち望んでいます。(from google translate)
[良い点] 少し前に読みました。とっても好みの文章で大変面白いです。正直、今までで一番だと個人的には思いました。 差し支えなければまた続きが読みたいです。 [気になる点] これからの展開
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