12-34 最後の時間稼ぎ 『後編』
荒々しい呼気に混じり、力強く鼓動を刻む心音がレイの耳朶にまで届いていた。ゲオルギウスの体からは蒸気が立ち上り、青白い皮膚の下を紅い痣のような物が全身に広がっている。血管や神経とは違った、葉脈に似たソレが鼓動と共に輝きを強めた。
「くははは! 他の臓器や肉体ならば、一日足らずで馴染むのだが。流石は、古代種の六龍。炎を糧にして、ようやく我が物となった」
「赤龍の心臓なんて、どうやって手に入れたんだ。赤龍の体は、全部テオドール陛下が管理しているんじゃないのか」
「さてな。この心臓を寄越したのはクリストフォロスだが、入手方法までは聞いていないな。奴の事だ。何かに使えると考えて、他の六龍同様に回収しておいたのだろう」
「他の六龍? まさか!」
ゲオルギウスは三つの心臓を体内に宿している。赤龍がテオドールに倒されたのと時を同じくして、別大陸に居た古代種の六龍も死んでいたのを思い出した。
「察しが良いな。その通りだ。この身は青龍、緑龍の心臓も宿していたのだ。もっとも、その二つは馴染む前に『聖騎士』に破壊されたがな」
炎の左腕で、脇腹を走る傷口を撫でながら言う。もしかすると、あの傷が心臓を失った原因なのかもしれない。その腕は脇腹を離れると、概念殺しの槍を掴んだ。
流石は神がこの世に残した神器。超高温の炎が触れても形を保っていた。
「さあ、互いに札は出し切った。ならば、あとは捲るだけだ。これ以上の言葉は不要であろう」
「こっちとしては、ちょっとでも時間を稼ぎたいんだけどな」
そう言って、レイは背後の気配を探る。戦闘のせいで広場までの距離は遠くなってしまい、向うがどうなっているのか分からない。
計画通りに事が進んでいるなら、広場にはシアラとレティが待機しているはず。複製した概念殺しの槍が首尾よく《アンダンテ・フィールド》を破壊したとしても、まだ問題があった。
それは六将軍第五席ジャイルズと戦闘中のローランや《神聖騎士団》のメンバーに、現在の状況を説明して、戦線に復帰してもらうことだ。
シアラ曰く、《アンダンテ・フィールド》内では時間のズレによって感覚だけでなく思考までが狂いだし、封印が解けてもすぐに正気に戻らないそうだ。彼女も封印が解けてから、島に上陸した奴隷商人に拾われ、船に押し込まれるまでの意識が定かではないと言っていた。
《アンダンテ・フィールド》に囚われている時間が長いほど、時間のズレは長くなる。ローランたち《神聖騎士団》が囚われてから二週間前後だと考えると、三百年近く囚われていたシアラよりかはズレが治る時間は短くなるはずだ。
とはいえ、そのズレが治ってから、状況を理解して、戦闘に復帰できるまでに少なくない時間は必要になる。状況説明や正気に戻す手助け、回復の為に、シアラとレティが広場で待機しているのだ。
レイが自殺してまで影法師を叩き起こしたのも、その時間を稼ぐ為の苦渋の決断である。
ゲオルギウスが炎の腕で槍を両手で掴むのに対して、レイは右腕だけで龍刀を構えた。
互いの発する闘気がぶつかり、火薬庫めいた空気が辺りに充満する。
そして、攻撃の余波で脆くなった瓦礫が崩れる音を合図に、最後の激突が始まった。
瞬間六閃。
槍の穂先がかき消えると、六つに分裂した。無論、本当に分裂したのではなく、一瞬で六回の槍撃が繰り出されたのだ。
槍撃は全て、レイの急所を狙った死出の一撃。この終盤においても、魔人の攻撃は衰える事を知らない。
驚嘆すべき速度。
驚嘆すべき技量。
驚嘆すべき底力。
―――迎えるは炎の豪腕。
龍刀の切っ先から炎が噴きだし、渦を描くように刀身を伝って影の籠手まで覆う。ゲオルギウスが繰り出した六閃を、レイは炎の豪腕を持ってして、一撃で吹き飛ばした。
炎が槍によって打ち消されるも、斬撃の衝撃が魔人を押し返す。
しかし、ゲオルギウスは止まらない。赤龍の心臓が一際強く鼓動を鳴らすと、魔人の背中から炎が噴きだした。
戦闘機のアフターバーナーのように、噴きだした高密度の炎がゲオルギウスの体を前へと押し出す。繰り出される槍に推進力のエネルギーが加わり、今度はレイが押し返された。
ゲオルギウスのような超絶的な技量を持たないレイは龍刀の力を圧縮した。さながら、大砲のような斬撃で応戦するも、ゲオルギウスの槍撃が止められない。
轟ッ、と。二つ目の炎が噴き上がる。
レイの背中からも、ゲオルギウスと同じ種類の炎が噴き上がる。
炎の推進力を得たレイの斬撃に、ゲオルギウスと同等の重さが加わると、両者はその場に止まって斬撃と槍撃の応酬を繰り広げた。
互いの武器が交わり、離れ、ぶつかり、削れ、幾度も交差する。衝撃の余波が辺りへとまき散らされ、堅牢な石畳が、廃墟と化した魔道具の建築物が、見るも無残な姿へと変わり果てていく。
刀と槍が奏でる音とは思えない轟音が連続し、互いの炎が陽炎めいた空気の揺らめきを作り、耐えかねた路面が溶けだし、周囲の温度は異常な領域にまで達しようとしていた。
両者が炎を従えて剣戟に応じる姿は、一種の宗教画めいた荘厳さと、見た者に畏怖と恐怖を与える地獄絵のような、相反する性質が入り交じっている幻想的な光景だ。
永遠に続くかのような生死の境で繰り広げられる剣戟。
だが、釣り合いの取れていた均衡は、僅かな隙によって一気に崩れた。
ぽたり、ぽたり、と。
鋼と鋼が激しくぶつかり合い、互いに獣じみた呼気を繰り返す最中。ゲオルギウスの耳朶は妙な水音を捉えた。
視界はレイの繰り出す斬撃と急所に集中しており狭まっている。余所見をすれば、一瞬で均衡が崩れてしまうリスクがあった。だが、水音がする度に、脊椎を冷たい手で撫でられるような悪寒を感じていた。
結論から言えば、ゲオルギウスはそのリスクを冒すべきだった。
赤龍の炎を我が物として槍を振るう魔人の肉体が、凍り付いたかのように動きを止めた。
「なにッ!」
脳は戦いの命令を下しているのに、その命令が四肢に届いていないかのようにピタリと止まってしまった。息を呑む魔人は、自身の体を見下ろして異変に気づく。
いつの間にか、自分の足元から這うように昇っている黒い影が、背骨へと貼りついていた。影は肌に張り付き、皮膚を浸透し、神経を侵食していた。
ゲオルギウスが聞いた水音の正体は、籠手から分離した影が落ちる音だ。影法師はレイのサポートをしつつ、自身の体を切り離し、死角からゲオルギウスに忍び寄っていた。
神経を侵食し、空白の瞬間を作りだした。
ゲオルギウスが動けない瞬間を利用し、レイは動いた。僅かに一歩、後ろに下がると、龍刀を逆手に持ち直す。
切っ先を後ろに向けた龍刀から、緋色と漆黒が混じったらせん状の輝きが強くなっていく。その構えは、どこかリザの最後の攻撃に似ていた。
レイが何をしようとするのか理解できたゲオルギウスは、すぐさま対抗策に出る。炎が間欠泉のように全身から吹き上がると、神経を侵食していた影は一瞬で蒸発した。
直後。
龍刀から放たれた炎を従えたレイが、ゲオルギウスの炎を高速で叩き切った。そのまま、レイの体は遥か遠くまで飛翔し、地面を削るように着地した。
リザが最後の力を振り絞って叩きこんだ一撃と同じ種類だが、速度も威力も桁違いの斬撃だった。炎は一瞬で両断され、勢いの付いたレイは石畳を捲りながらようやく止まった。
「手ごたえはあったが、どうだ!?」
刃が肉を断つ感触はあった。振り返ると、ゲオルギウスのいた場所は炎が消えており、誰かが脱いだブーツのように足首が転がっていた。
ゲオルギウスの姿は、地上には無かった。魔人は影の拘束から脱出すると、即座に離脱したのだ。
同じ種類の攻撃を既に見ていた為、軌道とタイミングは読めた。傷を負ったのは、精霊剣よりも龍刀の出力が高いのを見誤ったせいだ。
失った足を、左腕同様に炎で補った魔人は、比較的形を保っている建造物の上に立っていた。呼吸を整え、レイに再び挑むつもりだ。
だが、そのような猶予をレイは与えるつもりは無かった。紅蓮と漆黒の軌跡が街並みを破壊する。ゲオルギウスの放つ熱を感じ取り、レイは龍刀を推進力にゲオルギウスへ躍りかかった。
壁を突き破って強襲したレイを槍で受け止めた魔人は、頬を吊り上げ嗤った。
「くははは! 随分と、化物じみた事をするようになったな!」
「お前を倒せるなら、なんとでも蔑め」
「馬鹿め。これは褒め言葉だ」
流星のような速度で迫るレイに対して、ゲオルギウスも全身から噴き出す炎を推進力に変えて高速で移動し続ける。二つの流星が街並みを次々と壊しながらぶつかり合っていく。
三百年前、黒龍によって破壊された都市が、時を経て同じ古代種の六龍の力に蹂躙されるのは運命の悪戯とでもいうのだろうか。
レイとゲオルギウスが激突した衝撃で建築物は音を立てて崩れ、流星のように駆け抜けるだけで突風が吹き荒れる。戦いの余波は秒を重ねるごとに拡大していった。
加速の度に内臓が捻じれ、血液が遠心力で偏る。意識を失いそうになりつつも、レイはゲオルギウスを追いかけ龍刀を振るった。
「いいのか、レイ。これほど思うがままに力を振るって!」
「どういう意味だ!?」
何度目かの激突。空中でつばぜり合いをするゲオルギウスは、レイに向かって言葉を刃にして放った。
「下を見てみろ。我らの戦いの余波で、都市が壊滅状態じゃないか。あそこには、貴様の仲間が居るのではないか。戦いの享楽に陶酔して、我を忘れてしまったのか」
言葉はレイの奥深くを抉る。
無論、レイが仲間の事を忘れているはずも無い。彼女たちなら安全な場所に移動している筈だという信頼があり、少なくとも対等契約で繋がっているリザ達は無事だ。
だが、ゲオルギウスに指摘された事も事実だ。影法師の力を借り、『魔王』フィーニスの血で強化された龍刀を一割程度とはいえ思うがままに引き出せるようになり、因縁のゲオルギウスを相手に互角に戦えているという事実に心が奪われてしまった。
戦いへの渇望が心の底から湧き上がり、頭の天辺までを満たしていた。
そんな自分の心理を的確に言い当てられ、集中が乱れてしまった。
僅かに弱まった炎を立て直すよりも前に、ゲオルギウスの槍がレイの体を貫く。どうにか身を捩ったが、脇腹に穴が開き、レイは地面へと落ちた。
「くそぉ、やってくれたな!」
「無様な姿を晒してんじゃねよ。てめぇの本質を言い当てられたからって、動揺するな。みっともねえ」
「うるさい、影法師!」
傷口を焼いて塞ぐも、耳障りな声は止まらない。
「戦いを楽しむのも、興奮するのも、嫌悪するのも、辟易するのも、恐怖するのも、全部てめぇの本質だ。それを指摘されたからって、今更オタオタすんじゃねえよ」
「……どういう意味だ?」
「いずれ解るさ。それよりも、ヤバいのが来るぞ」
「言われなくても分かってるさ」
空を見上げれば、ゲオルギウスが炎を広げ、空を駆け昇っているのが見えた。氷の天蓋は消え、吹雪の治まった北方大陸の夜空には、星を従えた青い月が輝いていた。
今更、逃走を図るような男ではない。
狙いは高高度からの長距離攻撃―――に見せかけた上空からの強襲だろう。
都市すら破壊できる長距離攻撃を防ごうとして追いかけたレイを待ち構えて、上空から落下して突進。レイが上昇するのにエネルギーを使うのに対して、上空を取ったゲオルギウスは落下エネルギーを攻撃に加えられる分、有利になるという計算だろう。
レイが追わなければ、都市を破壊するあの長距離攻撃を繰り返せばいいとでも考えているのだろう。龍刀を使えるレイなら防ぐことは不可能じゃないが、リザ達が死ぬリスクは無視できない。
追えば罠。追わなければ詰みだ。
そこまで分析して、当然のようにレイの体は浮遊する。
罠だと知りつつも、不利だと知りつつも、それ以外の選択肢は無いのだ。
紅蓮と漆黒が混じった炎を纏ったレイは、さながら彗星のように華々しく飛翔すると、ゲオルギウスに追いつこうとする。
天に向かって真っ直ぐに上っていたゲオルギウスは、一瞬の浮遊の後に反転する。まるで地上に向かって垂直に落ちる隕石のように、レイへと迫った。
僅か数秒で互いの距離は零となり―――衝撃が空間内を駆け巡る。これまで都市を何度も揺るがした衝撃を軽々と越えたそれは、都市を囲む断崖絶壁にまでヒビが走り、場所によっては落石が起きていた。
大地に向けて垂直に落ちる緋色の隕石と、宇宙へ帰ろうとする緋色と漆黒の彗星。
その激突は空中でつばぜり合いを生んだ。
力が均衡を作り、互いの瞳に顔が写るのが分かるほど近い距離で、レイの龍刀とゲオルギウスの槍がせめぎ合っている。本来なら、ゲオルギウスが勝利するはずだったのが、どうして均衡を作れたのか。
その答えはレイにあった。
ぴしり、と。金属が割れるような音が両者の間で起きる。音の発生源は、またしても籠手からだったが、今度は意味合いが違った。
レイの右手を守っていた籠手に亀裂が走った。
「やっぱり、《全力全開》抜きじゃ、二割はまだキツイか」
龍刀の輝きはこれまでで最も強く、放つ熱も増していた。レイは龍刀の力を瞬間的に二割まで引き上げた。籠手が砕けそうになっているのは、力に耐えきれていないからだ。
籠手が砕けるか、あるいは力をセーブするか、どちらにしてもこの均衡はすぐにでも崩れるのを、両者はともに知っていた。ゲオルギウスは勝利を確信して笑みを浮かべると、レイは呟いた。
「勝ち誇るには早いんじゃないか」
「……なんだと?」
訝しむゲオルギウスは、力の奔流を感じ取った。レイの中で膨れ上がった精神力が、龍刀に伝わり一つの技へと昇華されようとしていた。
「概念殺しの槍は恐ろしい槍だ。戦技も魔法も、技能だって打ち消しちまう。だけど、その効果は穂先にしか無いんだろ」
龍刀の刃は概念殺しの槍の柄を押さえている。ゲオルギウスの全身が粟立ち、レイが最後の力を振り絞って叫んだ。
「この距離なら、避けることも、防ぐこともできないよな!」
「レイ、貴様ッ!」
「《赤龍天穿咆哮》!」
放つは絶技。古代種が一つ、赤龍の全てを滅ぼすブレスが、神殺しを成し遂げ、『魔王』の血を啜り強化された武具の斬撃として天に向かって放たれた。
かつて、学術都市地下にあるラビリンスの十四の岩盤を突き破った火柱が、ゲオルギウスを飲み込んだ。
同時に、籠手が砕け散り、レイの手から龍刀は滑り落ちてしまう。纏っていた炎も消え、力を使い果たした彗星は地へと引き戻された。
「またか! また、こいつは最後の面倒を俺に任せたのか!」
文句を言いつつも、影法師は素早く影を展開させた。砕けた体をより集め、地上に向かって落ちているレイを球体になって包み込み、落下の衝撃から守った。
「……お前に礼を言うのは癪だけど、助かった。ありがとう」
「てめぇはストレートに感謝できないのか? まあ、俺が言うのも何だがな」
軽口を言うが、影法師も限界なのだろう。球体が弾けると、レイの影に戻っていた。
地面に転がったレイは、今にも意識を失いそうな体に舌打ちをした。
「ああ、くそ。もう、体が動かない。でも、流石にゲオルギウスも、これで――――ッ!!」
絶句。
どうにか顔を上げて空を見れば、炎が消えた暗い夜空から落ちてくる人影を捉えた。まだ、紅蓮の輝きを保っているそれは、レイの近くに墜落した。
ゲオルギウスだ。全身から蒸気を上げ、熱によるダメージはあるが、まだ生きていた。
「……こいつは、参ったな。もう、こっちは指先一本も動かないんだぞ」
《赤龍天穿咆哮》に文字通り全てを注ぎこんだレイは、二十歩程度しか離れていないゲオルギウスに力無い視線を向けるしかできない。だが、その瞳は奇妙な変化を捉えていた。
「ゲオルギウスの体から、蒸気が止まらない」
薄い線のような蒸気がいつの間にか色が濃くなり、周囲へと拡散しつつあった。すると、その蒸気が可燃性だったかのように一気に炎が走った。
それがゲオルギウスの意志による物でないとすぐに分かった。
「ぐおおおおおおお!!」
炎の膜を突き破って、ゲオルギウスの絶叫が響いた。炎は一分もかからずに止まり、冬の空気に溶ける様に消えると、現れたのは槍を杖にして立つ魔人の姿だった。
先程まであった皮膚の下を走る痣のような輝きは消え失せ、失った手足の代わりも無くなっている。全身は黒いすすに覆われて、心臓すら掴みそうな殺気が霧散していた。
「はっ、はっ、はっ。くははは。無様な姿だな、互いに。貴様は力を使い果たし、私は力を求め過ぎた、といった所か」
「そういう事か。僕の戦技を吸収し過ぎて、逆に赤龍の力を制御しきれなくなったのか」
レイの推測は正しかった。
赤龍の心臓を持ってしても、レイの戦技は吸収しきれず、それまで蓄えていた炎を全て吐き出す結果となってしまった。もっとも、そうしなければレイの戦技で瀕死になっていたか、あるいは消し飛んでいたかもしれない。適切な状況判断だったといえる。
結果として、ゲオルギウスもレイも、その場を動けず、にらみ合いだけが続いていた。
「なんたる事だ。ここまで戦って、これほど近くに居るのに、よもや互いに動けないとは。なんとも見苦しい幕引きだ」
「そうかい? 僕としては理想的な幕引きだといえるけどね。何しろ、目的は果たせたんだ」
「なに? ……そうか、来たのか」
その言葉に応じる様に、三人目の男が戦場に現れた。
「ああ、来たとも。待たせたな」
白銀の鎧を身に纏い、身の丈を越える大剣を軽々と振り回し、鉄の義腕が鈍い輝きを放つ。
青年はレイを庇うように立つと、ゲオルギウスに大剣を向けた。
「《神聖騎士団》リーダー。『聖騎士』ローラン。ここに推参」
同時に瓦礫を吹き飛ばしながらローランの前に立つ影があった。
「ひひひひ! こいつは笑い事じゃなさそうな状況じゃないか。なあ、ゲオルギウスの旦那」
傷だらけの顔面が引きつり、壮絶な笑みの形となる。束ねた独特の髪型を揺らして、六将軍第五席ジャイルズはゲオルギウスを庇うように立つ。
レイは頼もしき背中を見せる『聖騎士』に言葉を投げかけた。
「遅いですよ……ローランさん」
「済まない、レイ君。《アンダンテ・フィールド》の影響で、動ける様になるまで時間が掛かってしまった。だが、ここからは大丈夫だ」
言葉と同時に、複数の気配が姿を見せた。慈愛に満ちた眼差しを浮かべる『聖女』。子供のような風貌をしつつも、油断なく構えている『賢者』。そして手傷を負いながらもリーダーの元に集う戦士たち。
「ここからは僕たち《神聖騎士団》が相手しよう」
読んで下さって、ありがとうございます。
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