11-4 ラビリンスのボス 『前編』
背後の扉が地響きに似た音を立てて閉まると、湿った空気が鼻を突いた。デッドエンドスポットは人々の生活臭とでも呼ぶのか、人の出す匂いが充満していたが、ボスの間は違う。岩壁や地面に染みついた、モンスターや冒険者の血や、砕けて転がる鋼の錆びた匂いなど、ここで繰り返された戦いの匂いが神経を高ぶらせる。
すると、広い空間に何処からともなく明かりが灯る。人工の光とは違う松明の灯りは、ボスの間の壁面に並んで設置された物だ。一定間隔に置かれたそれのお蔭で、ボスの間がどのような構造なのか見えてきた。
「岩が散乱していますね。随分と見通しが悪い」
「まったくだね」
面倒だと言わんばかりのリザの言葉に同意する。シアトラの迷宮は中心に向かってすり鉢状の形をしていたが、ラビリンスのボスの間は平たい地面に、人の倍はある大きな岩が幾つも転がっている。規則正しく設置された訳ではないが、視線を遮り、武器を振るうのに邪魔な構造だ。
「これだと魔法の射線が取りにくいわね。おちび、ケラブノス石のボルトは、同士撃ちの危険があるから極力使わないで。でも、確実に当たるか、突破口になると感じたのならアンタの判断の元で使いなさい」
戦闘における指揮をとるシアラの言葉にエトネは素直に従った。そして、索敵役を担う彼女は、いち早く敵の攻撃に気づいた。
「みんな、かまえて!」
そう叫ぶなり、エトネは蛇腹構造のガントレットを構え、宙を舞う。小さな体格だというのに、自分の背を悠々と越える高さまで跳躍すると、レイ達を狙って放たれた攻撃を叩き落とした。
がんっ、と鈍い音をして砕け散った破片が、レイの頬に直撃した。痛みは無く、鋼や鉄と違う質感に違和感を抱いた。
「今のは……誰か敵の姿を見たか?」
問いかけに首を縦に振ったものは居ない。エトネが叩き落とした破片をレティは拾うと、それが何で出来ているのか看破した。
「これって、骨だよ。骨が飛んで来たんだ」
「骨、だって」
レティが握っている物を見て、直感では骨と捉えたが、骨と認めるには異常な形をしていた。青白い色をしたそれは、表面に血液や肉の破片を付着させ、先端に行くほど鋭く尖っており、反対側は歪な形をしていた。全体的に湾曲しているそれは、素材は骨ではあるが形状はむしろ―――。
「矢、だとおもう」
レイが言うよりも早く、叩き落としたエトネが正体を言い当てた。
「これが矢ですって?」
「エトネ殿の言う通りでござる。先端を矢じり、後端が矢羽のように見えなくも無いでござる」
「湾曲しているということは、曲射して放たれた矢という事でしょうか」
「どうやら、そうみたい!」
叫ぶなり、再びエトネが跳躍すると、姿を見せない敵の二撃目を撃ち落した。地面に半分になって転がったのは、最初のと同じで湾曲しているが矢の形状をしていた。
「いわのむこうから、まがってきた。でも、もうあっちにはいないよ」
「どうして、そう言いきれるんだ」
「ひづめの音。もう、いどうしたあと」
獣人種として優れた聴覚を持つエトネが断言したのだから、正しいはずだ。となると、二体居るボスの片割れについて情報が出そろった。
蹄を持ち、骨のような矢を使うモンスター。それは事前の情報から得ていた特徴と一致する。
クロノが記憶した名前を引きだした。
「超級モンスター、名前は確かクアッドケンタウロス、だったでしょうか」
「ああ、間違いない。人に似た上半身に、馬のような下半身を持ったモンスターだと聞いたが……だよね」
確認を取ると、リザがその通りですと肯定した。
「四腕から繰り出される弓技は妙技と称され、四脚は大地を縮めると言われるほど早いです。ですが、これだけ邪魔な障害物があれば、自慢の速度は半減でしょう」
「その分、隠れながら曲射されると厄介ね」
「そのとおり、次、にほん!」
三度跳躍したエトネが叫ぶと、岩の影から弧を描いて飛ぶ矢が二本見えた。片方をエトネが撃ち落し、もう片方をレイが龍刀で燃やすよりも前にリザの精霊剣が空気を焦がす。
やはり剣術ではリザの方が一枚上手だ。抜刀した勢いそのままに熱線を放っていた。
「流石に三度も見れば軌道を見極められます。それで、如何いたします。クアッドケンタウロスに追いつくとしたら、私とエトネが適任ですが」
「そうね。……もう片方が出てくるまで様子見しようかと思ったけど、先手を打つわ。二人に加えて、コウエン様。貴女も行って下さる」
「ん? 妾を所望か?」
うきうきとした声を上げると、赤いスライムの表面が波打った。頭頂部は鮮やかな紅色を放つ長髪へと変化し、そこから褐色の肌に尊大そうな笑みを貼りつけた幼女の顔となり、起伏の全くない薄い体躯が生えた。
レイの龍刀に宿っていたコウエンは、数奇な運命を経て今はモンスターの体に宿っていた。元六将軍第三席カタリナが生み出した人造モンスターには、様々なモンスターの遺伝子が宿っており、彼女はそれを引きだす事が出来る。
「呵々。いいぞ、魔人種の混じり児。ここしばらくは退屈しておったからな。暴れてよいのなら、存分に暴れさせて貰うぞ」
「ええ、構いません。ただ、相手の出方が全部明らかになるまでは全力は控えて下さい。どんな隠し玉があるのか不明ですから」
「む。……致し方あるまい。さあ其処の者ら、供をせい」
「は、はい!」「はーい」
颯爽と歩き出すコウエンに遅れる形でリザとエトネが進む。三人は素早い動きで岩陰に飛び込むと、あっという間に姿が見えなくなってしまった。
「良かったのかい。もう片方がどんなモンスターなのか確かめる前にコウエンを行かせて」
「消去法よ。これが最善の策」
「どういう意味でござるか?」
「事前に調べたモンスターの中で、コウエン様を投入出来て、なおかつ私達の中で対処できる人数が少ないモンスターは二体居たの。クアッドケンタウロスはその内の一体。主様じゃ速度に追いつけず、ヨシツネじゃ攻撃が届かない。ワタシやレティなら魔法の支援もできるけど、これだけ障害物があれば相手を目視できないもの。勝ち目の薄い人を消していけば、残ったのはリザとおちび、そしてコウエン様よ。なら、コウエン様を投入してさっさと片付けてもらって、こっちに合流してもらうのが得策よ」
「そう言う事か。それじゃこっちはどうする」
レイが指示を仰ぐと、シアラは辺りを見回して言う。
「そうね。これだけ遮蔽物があるんだから、もう一体がこちらを補足するまで逃げ回りましょう。その間にリザ達がクアッドケンタウロスを倒してくれたら理想的だけど」
確かにと同意しかけてレイは止まった。
感じたのは強い殺気だ。こちらに向けて真っ直ぐ向けられた強い殺気は、間違いなく敵が補足した証拠だ。同じのを感じ取ったヨシツネが、首に巻いていた長布をはためかせる。
考えてみれば、クアッドケンタウロスの行動は不自然だった。
どうして、一度失敗した奇襲を二度も三度も繰り返したのか。確かに、あれだけの正確かつ威力のある曲射を行うのは素晴らしい技術だが、同じ攻撃を繰り返すのは愚策だ。
それを理解できない程度の知性なら話は早いが、おそらくは違うだろ。
あれはメッセージだ。
同じボスの間に居る存在に向けて、いち早くとらえた侵入者が何処に居るのかを知らせる合図であり足止めだ。クアッドケンタウロスの狙い通り、三度の曲射でもう片方のボスはこちらの位置を把握し、そして視界に収めたのだ。
のそりと岩陰から現れたのは、輪郭だけでも巨大だと分かる。何故なら、人の倍はある岩をも超える巨体を有していたのだ。掴んでいた岩が、握力に負けて砕け散った。
背後から聞こえてくる破砕音に、あちらでも戦闘が始まったのだとリザは感じた。音や、地面から伝わる振動からすると、もう片方のボスはパワー系。肉弾戦闘を得意とするタイプだと予測できる。
「シアラおねえちゃんから、戻るようにれんらくあった?」
「今の所はありません。私達の役目は変わらず、クアッドケンタウロスの補足と撃破を可能な限り速やかに行うことです」
「りょーかい」
レイ達の状況も気になる所だが、連絡が無いという事は問題が無いのか、あるいは連絡できないほどの状況なのかもしれないが、自分たちの役目に集中する。余計な思考を削ぎ落して、岩陰に潜むクアッドケンタウロスの気配を感じる。
エトネほど正確ではないが、どの方角に居るのかまでは大よその見当は付く。問題は、クアッドケンタウロスの速度だ。
大岩だらけの狭い場所だから、四脚の速度は発揮できないだろうと予測したのは甘かった。敵は、短距離を助走無しで最高速で移動できた。骨の矢を躱して距離を詰めても、クアッドケンタウロスの影すら踏めないでいた。
それでいて、矢の攻撃に本気を感じられない。その理由はあからさまだ。
「敵の狙いは分かりやすいですね。私達を引きつけ時間を稼ぎ、向うが片付くのを待っているのでしょう」
モンスター同士が手を結ぶのは、本来ならあり得ない事だ。迷宮のモンスターは迷宮から直接栄養を摂取できるため、生きるために他者を狙うという事はしない。だが、自分のテリトリーに入ってきた者は区別なく殺すように本能が定めている。その習性を利用して、面倒なモンスターを別のモンスターのテリトリーに誘導して同士撃ちを狙う手法もある。
ところが、このラビリンスのボスの間だけは違うのだ。
ボス級のモンスターが二体、争うことなくチームプレイを行ってくる。クアッドケンタウロスはスピードのある冒険者を引きつけ、消耗させ、その隙にもう片方のボスが他の仲間を倒す。おそらく、もう片方のボスはスピードがそれほどないのだろう。鈍重な近接タイプが苦手とするスピードタイプを自分が受け持つことで、効率よく冒険者を刈ろうとする。
だが、その程度は織り込み済みだ。
「このまま、おいかけっこするの」
「いいえ。それには及びません。ここなら、周りを巻き込みません。一気に放ちます」
大岩を蹴って移動するリザは抜刀した精霊剣に精神力を注ぐ。戦闘に不向きな装飾が施された剣は、精神力に反応して力ある光を生みだす。剣の形に留められない光が、薄紅色の花弁となって散る。リザは溜めこんだ力を一気に解放した。
目もくらむ極光が迷宮を埋め尽くす。同時に大岩が幾つも融解していく。
その光に逆らうように生まれた影が、上空へと跳ぶのをエトネは見逃さなかった。
手近にあった大岩を踏み台に高く飛ぶと、精霊剣の熱線を回避しようとした影に足刀を叩きこむ。影は身を捩りながら落下した事で熱線に飲み込まれる事だけは回避できた。
だが、熱線が通り過ぎて開けた平地に降り立ったため、その姿を晒す事になる。
「ふん。こそこそと隠れるからには畢竟な姿形かと思えば、存外威風猛々しい形ではないか」
大岩の上で腰を下ろしていたコウエンが褒めるのも納得できる。
遂に姿を現したクアッドケンタウロスは、確かに上半身が人で、下半身が馬の姿をしていた。上半身は裸身で、均整の取れた分厚い肉体をしていた。うねるような髪に、凛々しいとも取れる顔立ちは、人間だったら少なからず好意を持たれたかもしれない。だが、顔の上半分にある四つの瞳と、左右に二本ずつある腕が奇異な印象を与えていた。
そう、クアッドケンタウロスは四本の腕で二つの弓を操っていたのだ。そして下半身は馬の形をしているが、馬とは違う点がある。それは馬なら背中に当たる部分に、皮膚を突き破って骨が露出していた。それに見覚えがあった。
「あの骨が矢という訳ですか。驚異的な再生能力で弾切れを起こさないのは弓使いとしては理想形なのでしょうが……見ていると気分が悪くなりそうですね」
武器を扱うモンスターは、大抵自分で作るか冒険者や兵士の武器をそのまま使う。その中でもクアッドケンタウロスは、弓の素材として自分の体を用いる珍しいタイプだ。
弓の本体は自分の両腕の骨を繋ぎ合わせ、弦は髪を用い、矢は馬の部分の肋骨を過剰に成長させ体外に露出させたのを抜き取っている。
これらの行動を支えているのが異常な再生能力だ。
現に、着地の際に僅かに熱線が掠めていたのか、後ろ足が削れていたのが瞬く間に治療されていく。
クアッドケンタウロスの驚異的な再生を目の当たりにし、どうやって倒すべきかと考えているリザは、体を貫く殺気に身構えた。それは相対するクアッドケンタウロスの殺気だ。
馬と同じように視界を広くとらえる四つの瞳に怒りが宿っている。どうやら追い詰められたことで本気になったのだ。
そして自分の肋骨を引き抜くと、それを弓に番えた。あまりの早業に、リザは反応が一瞬送れる。その遅れが致命的だと言わんばかりに矢は放たれた。
これまでに十を越える矢を撃ち落してきたリザだったが、今放たれた一撃はもっとも早い。気づけば、矢じりがリザの額の薄皮に突き刺さっていた。
それより前に進まなかったのは、剣を手放して伸ばした手で捕まえられたからだ。
あと数瞬遅れていたら、確実に頭蓋を貫いていた一撃に寒気がする。
「エトネ、コウエン様。矢の速度が違います! 注意を!」
警告を発しながら、考えてみれば当然だと納得する。曲射は、文字通り曲がりながら迫る矢。対して、今のは真っ直ぐ自分を狙って飛んだ。弧を描く分速度が落ちる曲射と比べて、速度も正確性も上昇するはずだ。事実、エトネでも回避がやっとの矢が立て続けに放たれていく。
皮膚を突き破る肋骨はまだ血が付着しており、矢として放たれる度に、地面に幾筋も道を残してく。その数だけ矢が放たれた証だ。あっという間にクアッドケンタウロスの前は血まみれになった。
凄まじい数の矢が放たれ、それをリザとエトネは悉く躱していた。
二人ともこれまでの戦いの経験から、超級ボスモンスターの膂力で放たれた、恐るべき速度で飛翔する矢を躱す事は造作も無かった。だがそれは、一定の距離を保っているから見きれているだけだ。
それ以上近づこうとすれば、矢に貫かれてしまう。そんな確信めいた予感が二人にはあった。
(厄介ですね。これじゃ、クアッドケンタウロスの目論見通り時間を稼がれてしまいます。どうにかして距離を詰めなくては)
焦るリザは、それでも丁寧に注意深く矢を躱していく。クアッドケンタウロスが作るであろう隙を待つのは、崩れそうな橋を一歩ずつ進んでいくのと似ていた。踏み外せば最後、真っ逆さまに落ちてしまうその橋を、リザは渡りきろうとして―――。
―――痛みが走った。
「っうう!」
リザの表情が歪み、苦悶の声が漏れた。その原因は、彼女の左肩を貫いている矢だ。
形状はクアッドケンタウロスの肋骨と一致するのだが、それは他と違う点があった。
それは色だ。
色が薄闇に溶け込むような黒色をしていたのだ。
これはクアッドケンタウロスの奥の手とも言える矢だ。青白い矢を放ちながら、裏で用意していた黒い矢をこっそりと放つことで、それまで青白い矢に慣れていた冒険者の眼を誤魔化すのだ。加えて、青白い矢は全て真っ直ぐに射っていたが、この黒い矢は曲射だ。迷宮の闇に溶け込みそうな薄い色に加え、視界の外から飛んでくる矢は避けようがない。
リザがしゃがみ込んだのを見て、クアッドケンタウロスは一気に駆け抜けた。
強靭な四脚による移動は、まるでワープのような跳躍で、その巨体が激突すれば即死もあり得る突進がリザを襲った。
ボスの間の奥が極光で満たされる。
まるで太陽が昇ったかのような輝きに、リザが精霊剣の熱線を使ったのだと理解した。どうやらあちらで動きがあったようだが、助けに行くことはできない。何故なら、こちらも厄介なのを相手にしていた。
唸りを上げて、岩を削って作った棍棒が通り過ぎる。急所に当たれば確実に即死するだろう一撃だ。それを躱してから龍刀で相手の腕を切り落とそうとする。自分の胴回りよりも太い赤い腕に、紅蓮の刃はかすりもしなかった。何か見えない壁に押しとどめられていた。
「主殿、追撃が来ます!」
ヨシツネの言葉に、舌打ちと共に後ろへと倒れこむ。地面に背中から落ちる直前、自分の居た場所を敵の裏拳が通り過ぎるのを見送った。そして、倒れた反動を利用して一回転して立ち上がると龍刀から炎を生みだし、刃の形に押しとどめ放った。
炎の刃は狙いを外さず、むしろ外すのが難しいほど相手は大きく鈍重だった。刃は形を崩し、炎は敵に絡みつき肉を焼こうとする。普通ならば、超級ボスモンスターであってもダメージが通る一撃だ。
ところが、現実は違う。
渦巻く炎を振りほどく様に伸ばされた腕は緑色だった。その肌は綺麗で火傷の跡すら付いていない。
「もう、色が変わったのか」
「ならば拙者が!」
レイの背後からヨシツネはナイフを投げた。小さなナイフだが、全てに混合された毒が塗られており、掠めただけでも麻痺や昏倒する強力な毒だ。
しかし、目の前の敵は瞬きする程の短い時間に色を変えてしまった。
緑から赤へと。
すると、ヨシツネの放ったナイフは、レイの龍刀を弾いた時と同じように見えないナニカに阻まれてしまった。
「くっ、こうも切り替わる速度が速いとは。厄介な相手でござるな、ジェネラルオークとは」
ラビリンス中央上層部のボス。四腕四脚のクアッドケンタウロスの相方は、鈍重なれど恐ろしい膂力を持った超級モンスター、ジェネラルオーガだ。
このモンスターには厄介な特性がある。それは攻撃を無効化する事だ。
赤色だと物理的な攻撃を、緑色だと魔法的な攻撃を完全に無効化できる。
その切り替えはモンスターの意思一つで、瞬時に行える。
「射線から退いて! 《フレイムゲージ》!」
レイやヨシツネよりも後方から、シアラの魔法が放たれた。蛇のように伸びた炎は、ジェネラルオーガに直撃する前に幾筋にも分かれ、モンスターを閉じ込めておく檻に変化した。
《フレイムゲージ》は旧式中級魔法に分類され、相手を足止めするのに有効な魔法だ。しかし、緑色に変化したジェネラルオーガの前では、砂の城のような物だ。
節くれだった指が触れると、檻に穴が開いていく。砂の城が波に飲み込まれるように形をなくしていく。だが、それがシアラの狙いだ。
声を上げるまでも無く、意思をくみ取ったヨシツネが再度ナイフを投げた。
緑色に変化しているジェネラルオーガは物理攻撃が通じる。仮にナイフを防ぐために赤色に変化したら、今度は魔法の檻によるダメージが入るという作戦だ。
しかし、無情にもナイフは先程の結果を繰り返した。
落ちたナイフをジェネラルオーガは容赦なく踏みつぶした。そしてナイフが当たるはずだった赤色の腹を掻いた。
赤と緑のまだら模様となったジェネラルオーガにシアラが声を荒げた。
「な、なんてインチキなの!」
「色を変えられるのは全体だけじゃなくて、一部分もありなんて、そりゃ無いだろ」
魔法に触れている部分は緑色のまま、ナイフの当たる箇所だけ赤くしたジェネラルオーガはどうだと言わんばかりにニヤリと笑った。
読んで下さって、ありがとうございます。




