2-29 女子の買い物
廊下を抜けてギルドのホールへと戻った。冒険者の人ごみを掻き分けて受付へ向かい僕のプレートと三枚の羊皮紙を木目調のカウンターに置いた。
「これで殺人の取り消しとステータスの更新。それと後ろの二人にプレートを作ってほしいです」
ギルドの職員は羊皮紙に視線を滑らし、不備が無いのを確認すると水晶玉を取り出した。
僕は勝手知ったるなんとやら。言われる前に水晶玉へと手を伸ばした。そもそも僕自身はステータス画面でいつでも最新のステータスを見る事が出来るため更新自体はする必要が無い。だけど、こういう細かい部分を疎かにするといつ誰に自分が異世界人だと知られるか分からない。
もっとも、あんなにあっさりと言われるとは思わなかったが。
もういっその事、自分が異世界人だとファルナを始めとした親しくしている人に言ってもいいんじゃないかとさえ思う。けど、一方で過去の異世界人がこの世界の人に何かひどい事をしていた場合、その恨みが自分に向く可能性もある。
何時か話すにしても時期を見計らわないとな。
僕の手が触れるなり水晶玉は光線を吐き出し、プレートの表面を塗り替える。
「これで殺人の取り消し、及びステータスの更新は終わりました」
光線が止み、僕はプレートを持ち上げる。更新されたステータスを確認する。
LV.22 RANK:F
HP.163 MP.22
STR.97 END.132 DEX.105 MAG.11 POW.95 INT.77 SEN.114
(ステータス画面との違いは無いな)
事前に知っている数値との違いが無いかだけは確認しておく。
ネーデの街を出てから十日以上経つが、その間モンスターとの遭遇戦は三回。だけどレベルは一つしか上がっていない。この理由は『冒険の書』に記されてた。
冒険者のレベルが上がる原因はモンスターの保有する魂を冒険者が吸収する事にある。それが蓄積されることで冒険者としての器、つまりレベルが上がる。
迷宮のモンスターとフィールドに居るモンスターでは保有する魂の量が数倍違う。群れのボスなどを倒せれば幾らかレベルも上がるが、やはり、迷宮育ちのモンスターの方が魂を多く手に入る。
プレートを懐に仕舞い、入れ替わるように今度はリザが前に出た。カウンターに真新しいプレートが置かれ、水晶玉に手を乗せる様に促された。
水晶玉から放たれた光線がプレートにリザのステータスを刻み込んだ。
出来上がったプレートを職員が確認してからリザへと手渡された。
「ご主人様。確認を」
「見てもいいの?」
頷いたリザからプレートを受け取り表面の能力値を見た。
LV.42 RANK:G
HP.235 MP.39
STR.136 END110. DEX.194 MAG.28 POW.154 INT.101 SEN.167
特徴的なのはENDの値が低く、一方でDEXの値が高い。防御が低く、スピードに特化した戦士職といえた。プレートをリザに返す
今度はレティの番だ。背の低い彼女はつま先立ちをして、ようやくカウンターの水晶玉に触れられる。
(ふーん。このぐらいの年の子が冒険者になる事を止めないのか)
職員が特に止めるそぶりも見せなかったことから判断すると、冒険者になるのに年齢制限は無いようだ。
プレートに伸びていた光線が収まり、職員が不備が無いかを確認してからレティに渡した。
彼女も同じようにプレートを僕に渡した。
LV.15 RANK:G
HP.83 MP.124
STR.42 END.36 DEX.33 MAG.101 POW.93 INT.97 SEN.43
全体的に魔法に関する項目の値が高く、それ以外は同じレベルの頃の僕よりも一回りぐらい少ない。戦闘の時は常に誰か着いていないと危ないな。
「これで御用件は全てお済みでしょうか?」
頷こうとする僕の裾をリザが引っ張った。
「ご主人様。提案があります」
「どうかしたの?」
彼女は僕の懐にある手形を指さして口を開く。
「大店や高額を扱う奴隷商などでは手形は歓迎されますが、一般的な小売店では手形よりも現金の方が好まれます。もし、この後何かしらの買い物がございますなら手形の一部を現金化するべきだと思います」
リザの説明に納得した。たしかに手形の交換で売買が成立するといってもやはり現金の方が僕も使いやすい。
話を聞いていたギルドの職員が別の窓口でそれができると説明してくれた。
僕らは冒険者ギルドの窓口から商人ギルドの窓口へと移動し、奴隷商のハインツさんとジェロニモさんから受け取った手形を一律化し、ギルド名義の手形へと代えた。そのうちの一部を現金化してもらった。
これで僕の所持金はネーデの街での稼ぎも合わせて約三百八十六万ガルス程になる。手形では三百八十万ガルス。現金で約六万ガルスを巾着に入れた。ネーデでは見なかったが金貨の上に大金貨と呼ばれる貨幣があった。どの大陸でも使える共通貨幣の中で一番高いそうだ。一枚で千ガルスとなる。
「それでは冒険者の皆さま。冒険の無事をお祈りします」
優雅に一礼をした職員に見送られて僕らはギルドを出た。それに合わせる様に広場の噴水が一際高く水を噴出する。ふと、設置されている時計に目をやればいつの間にか二時だった。
時間を意識するとお腹もすいてきた。僕は二人に振り返る。
「何処かで食事にしようか」
「さんせーい。もうお腹ぺこぺこだよ」
「ご主人様のご随意に。私たちは従います」
明るく賛成したレティとは対照的にリザは一歩下がって控えめな同意を示す。どうも、先程の奴隷市場での一幕を気にしているようだ。かといって、これだけ人が集まっている所で話す内容でもない。
僕は広場を見回し、何処か食事処は無いかと探す。だけど、昼時の時間を少し過ぎたのにどの店も混んでいる。どうも、精霊祭の期間中はどこのお店も昼のピークタイムが伸びて、大抵満席らしい。
店の従業員に申し訳なさそうに断られること五件目。これは困ったなと思っていると、僕の鼻に香ばしい匂いが漂ってきた。
振り返るとそこには屋台があった。品目はファイヤーリザードの炭火焼と書いてある。値段も少し安めだ。ふと、下に視線を向けるとレティが食い入るように屋台へと視線を向けていた。
よくよく見ると、通りに沿って屋台はいくつもあり、その間を埋める様にベンチもある。
「よし。今日の昼は屋台で食べてみようか」
「いいの、ご主人さま!?」
僕の提案に予想外なほどの食いつきを見せたレティ。思わず、
「あ、ああ。好きなのを買っていいよ」
と、言うとすぐさま屋台の列へと並んでいった。あっけに取られていた僕にリザが口を開いた。
「申し訳ありません、ご主人様。あの子は事情があって生まれてから奴隷になるまでずっと修道院で過ごしてきました。……だからあの子にとってこういうお祭りは初めてなんです」
「成程ね。それであんなに楽しそうに」
「はい。本当に、楽しそうです。……奴隷になってからあんなにはしゃいでいるのを見るのは初めてです」
青い瞳を潤ませたリザの手を握る。驚いた彼女を連れてはしゃいでいるレティの所へと向かった。
しばらくして。
再びギルド前の広場。中央に円形の噴水が置かれ、その周囲に均等に置かれたベンチで昼食を取る事にした。
「頂きます」
「「い、頂きます?」」
いつもの癖で言ってしまうと、二人は首を傾げながらも僕と同じように言った。今日の昼ご飯はファイヤーリザードの串焼きと数種類の野菜の串焼きだ。
「こらレティ、そんなに急いで食べないの」
五本の指の間に挟んだ四本の串から肉や野菜を引き抜く様に食べるレティをリザが窘める。自分は小鳥のように小さく啄みながら串焼きを食べる。
二人とも魔物の肉に対する抵抗は無いようだ。正直、ネーデの迷宮で戦った時にはあの蜥蜴を食べる事になるとは思ってもいなかった。僕は恐る恐るファイヤーリザードの肉を食べた。
見た目よりも柔らかく、肉の繊維がほぐれるようだ。歯で押しつぶすと口の中で肉の油が飛び出す。人が集まるだけはあると納得した。
僕らはベンチに並びながら肉のうまさに酔いしれた。
「御馳走様でした」
「「……御馳走様でした?」」
二人は再び、首を傾げながらも僕のまねをした。リザが食べ終わった串をまとめると設置されているゴミ箱へと捨ててくれた。
「ねえねえ。今のはご主人さまの世界の作法?」
隣に座るレティが小声で聞いてきた。その向こうでリザも僕に問いかけるような視線を投げかける。
「うん。僕の世界、っていうか故郷で食事の前後に言うんだ。食材になった生き物への感謝や作ってくれた人への感謝を口にするんだ」
「ふーん。……命を大事にするんだね、ご主人さまの世界は」
なぜだか、レティは羨ましそうにそう言った。リザも同意する様に妹の頭を撫でる。
「食事も終わった事だし、少し今後の事を話しておこうと思うけどいいかな?」
「宜しいのですか? このような人通りの多いい場所で」
リザが周囲を行きかう人の波を見る。だけど、彼らの視線は僕らの方を向いていない。下手に宿屋なんかで話をするよりも安心かもしれない。
「大丈夫。あの事について話をするつもりは無いんだ。とりあえず、いま僕らに足りていない物をこの街で手に入れたい。何か思いつくことはある?」
僕が質問すると、レティが手を伸ばした。
「馬車! 移動手段として馬車が欲しいな」
確かに、旅の間ずっと徒歩で移動するのは大変だ。馬車があれば荷物を運んだりするのは楽になる。だが問題もある。
「馬車か……そうすると御者を雇う必要があるのか、それとも僕がやり方を学べばいいのか」
馬車にこの三人が乗るとなると、誰かしら御者を雇うか僕が手綱の取り方を学ぶ必要がある。リザは周囲の警戒をしてもらうため自由にしないといけない。
すると、リザが大丈夫ですと、口を挟んだ。
「レティが馬の扱いになれています」
「前のご主人さまの所でも御者はあたしがやってたんだよ」
未成熟な胸を張って自慢げに言うレティの頭を撫でる。そう言えば再会した時、壊れた馬車に彼女たち以外の人はいなかったのを思い出す。目の前の少女は僕が思っている以上に器用な子だった。
「へえ。そいつは凄いや。それじゃ馬車の購入は問題ないな」
頭の中の予算図に馬車の項目を付ける。
「後は旅の間の食料や水、それに雑貨ですが……馬車も含めてこれらは出発の前に抑えるのがよろしいと思います」
「うん、そうだね。馬車は後回しにしようか。正直何処で買えばいいのか分からないし……他には何かあるかな?」
考え込む二人を僕はボンヤリと見た。リザは見慣れた薄手のインナーに軽鎧を着こみ腕を組んで考え込んでいる。レティはぼろ切れを身に纏い、これまたすり切れたサンダルを揺らしながら眉間にしわを寄せる。
「って、二人の服を買おう!」
僕が唐突に叫んだので二人は驚いて目を白黒させる。考えてみるとこの二人。出会った時から替えの服を持っている様子は無かった。出来る限り清潔にしていた様だが女の子が着た切り雀なのは可哀そうだ。
ついでに僕のすり切れたコートの替えも購入しよう。
だけどリザは困ったような表情を見せて首を振った。
「ご主人様、私たちはこれで大丈夫です。無用なお気遣いは―――」
「待った、エリザベート。それにレティシアも聞いてほしい」
断ろうとするエリザベートを手で制し、二人に真剣なまなざしを送る。
「僕らの命は契約に基づいて対等だ。誰かが死んだらみんな死ぬ。一応、契約に基づいて主人と奴隷に分けられているけど、基本的には対等だと僕は思っている。だから僕は君たちを、命を預ける仲間だと思っている」
「……仲間ですか……先程、剣を向けた私もですか?」
信じられない者を見るような目で見つめられた。
「もちろん。君たちが厄介な秘密を抱えていることぐらい知っているよ。それ絡みで剣を突き付けられるぐらいなんだって言うんだ。……だからこの先も二人をそういう風に扱うから、慣れて欲しい」
姉妹は戸惑いながらも頷いてくれた。
僕は立ち上がり二人の手を取り、雑踏へと向かって歩く。行先は服屋だ。
と、意気込んでみたが、正直僕に女の子の服を見立てるセンスなんか無い。今来ているのも鎧の下に着こむからと黒のインナーの上下で済ますような奴だ。
服屋に向かう道すがら知り合いはいないかと思いながら視線を通りのあちこちに向けたが、僕の期待は虚しく散った。
「ここですか、ご主人様」
後を着いてきたリザが店内を覗く。横に広い店の中に麻や木綿で出来た女性用の衣服が積まれている。
レティが目を輝かせながらも、困惑した様子で裾を引っ張った。
「ご主人さま、ここで如何すればいいの」
内心しまったと思った。修道院で暮らしていたという事は日常的に制服みたいなものを着ていただろうし、奴隷として過ごすようになったら今着ているようなボロを身に纏っていたのだろう。彼女には店で服を買う経験なんて無いのだ。
如何すればいいか途方に暮れていると店の中央の試着室。閉じられていたカーテンが開く音がした。視線をそちらに向けると、そこに何故かファルナが居た。
着ていた鎧を外し、燃えるような赤い髪に合わせた赤のワンピースを着こんだ彼女は今の僕にとって救いの天使のように見えた。
「ファルナ! ちょっと助けて!!」
「はぁ!? レイ、アンタここで何やってんの?」
僕がファルナに向かって叫ぶと、店の奥からロータスさんやハイジ、カーミラさんが手に衣服を持って様子を伺いに来た。
僕は女性陣に事情を話して助けを請う事にした。
「そうですか。分かりました、レイさん。微力ながらお手伝いします」
「ありがとうございます、ロータスさん」
力強く引き受けてくれたロータスさんに礼を言う。
「それではエリザベートさんにレティシアちゃん。何か服に関する要望はありますか」
二人はしばらく考え込んでから、口を開いた。
「戦闘において邪魔になりにくく、かつ頑丈な衣服が良いです」
「あたしはその……お姉ちゃんと同じで」
頷いたロータスさんがファルナに視線を向けた。彼女は二人を店の奥へと誘導していく。この場に残ったロータスさんが僕を見た。
「それで主人として何か希望はありますか、レイさん」
「希望……って程じゃないんですけど、服は替えの分を含めて一人三着ほど。それと下着はここで売ってますか」
ロータスさんの目が鋭く僕を睨んだ。
「一応、売ってはいますけど、あの子たちは戦奴隷として購入したのでしょう? 下着を目にする予定でもおありですか?」
「ただ単に必要と思えるものを上げているだけです!」
「冗談です」
絶対嘘だ。あの目は完全に僕を性犯罪者として見ていたぞ。
「それと、ファルナが着ていたようなワンピースみたいな女の子らしい服を一着ずつ。以上ですかね」
「……分かりました。その間レイさんはここに居ますか?」
僕は店の中をぐるりと見回す。どちらを向いても女性だらけの店内は男にとって居心地が悪い。僕は通りの反対にある鞄屋を指さす。
「あそこでリュックサックを一つ見繕ってから店の入り口に戻ってきます。会計や何かあったら呼んで下さい」
頷いたロータスさんと分かれて目の前の鞄屋に飛び込んだ。服や馬車でいくら使うか分からないけど、やはり旅において鞄は重要だ。ここは頑丈そうなリュックサックを選んだ。
買ったばかりのリュックサックにいつも肩に提げていた鞄の中身を移し替える。もっとも入っているのは向うの世界で着ていたサイズの合わなくなったシャツやジーンズ、それに靴。そしてバジリスク亜種との戦いで得た戦利品の杖だ。
(そういえばレティが魔法を使うときに杖を使っていたけど、これは彼女には大きすぎるかな)
とりあえずリュックサックに仕舞う。いくらか蓄えがある状況で無理に売り払う必要も無いと判断する。使っていた鞄を折りたたみリュックサックに仕舞って服屋へと戻った。
外からは女性陣の姿が見えなかった。僕は意を決して女の園へと足を踏み入れる。
視線を遮る棚の間を歩いて行ってようやく女性陣を見つけた。彼女たちは試着室を取り囲む様に陣取っている。
「ああ、そこに居た―――んん!?」
最後まで言い切る事なく口をハイジによって塞がれた。一同は僕に静かにしろと目で語る。
「あの、どうかしましたか?」
「どうもしないよ! それより二人とも着替えたかい?」
試着室の奥からリザの声がする。下を見るとサンダルが二足ならんでいる。おそらくレティも試着室に居るのだろう。
すると、カーテンが開いた。
「着方はこれでいいの、ファルナ様?」
「―――ってご主人様!?」
不安そうなレティと対照的に、リザは僕がいる事に驚いていた。
二人ともいつも着ていた服や鎧を脱いでお揃いのワンピースを着ていた。リザは瞳の色よりも薄い青のワンピースを恥ずかしそうに着込み、レティは淡い白色のワンピースを不安げな表情を浮かべて着ている。
ファルナがハイジに視線を送ると、彼女は僕を解放した。ファルナが肘で僕を小突いた。
「何か言ってやんなよ」
「―――あ、ああ。……二人とも凄くよく似合っているよ」
姉妹は揃って耳を赤くして俯いた。慌ててリザがカーテンを閉める。もう少し見ていたかったのに残念だった。
すると、ロータスさんが僕に衣服の束を渡す。
リザが着ている肌に張り付く薄手のインナーと無地のチュニックが三着ずつ。下に履くためのサイズ違いのズボンが三着ずつとその上に女性用下着と思わる物が同じように三着ずつ置いてある。何とも悪意を感じる置き方だった。
僕は無言で下着を衣服の間に仕舞った。
「ありがとうございます。ロータスさん……所でさっきのワンピースを選んだのは誰ですか?」
「ファルナよ。この子意外とセンスが良いのよ」
「意外って何だよ、失礼だな、ロータス姐!」
怒りながらファルナがチュニックとズボンを取るとカーテンの隙間から差し入れた。代わりにレティの着ていたボロを回収する。
カーテンが開いた時にはリザはいつもの格好だが、レティは先程渡された衣服を着ていた。
「会計を済ます前に着ててもいいんですか?」
「大丈夫。許可は取ったわ」
ロータスさんは二人が脱いだワンピースを畳んで衣服の山の上に積む。リザは恐縮しきった表情を浮かべたが、先程の言葉を思い出したのか要らないとは口にしなかった。
代わりに頭を下げて、
「ありがとうございます。ご主人様。大切にします」
と言ってくれた。
レティも同じように頭を下げて、
「ありがとうね、ご主人さま。大事に着るよ」
と満面の笑みを浮かべて言ってくれた。なるほど、親が子供に服とかを買ってあげたくなる気持ちが何となくだが分かった気がする。
積まれた衣服の山を会計に通して、ギルド名義の手形で払った。釣りの手形を受け取って、買った品を丁寧にリュックサックに詰めた。
次に向かったのは靴屋だった。
何故だかついてきたファルナたちと一緒になって二人に合うブーツを購入した。特にリザのブーツは先端に鉄板が仕込まれており、蹴りの威力を増強する物を選んだ。
次の店に向かう前に、僕は途中にあった仕立て屋に寄る事にした。
目的はすり切れてしまったコートの替えと、二人のコートを購入するためだ。生憎と既製品のコートを売っている店は見つからなかった。接客に来た店主に僕は用向きを伝えた。
「長旅で使えそうなコートを三着。防水性に優れた生地で出来れば精霊祭が終わるまでに用立てて欲しいんですけど」
しかし、接客に出たオジサンは困ったように眉を下げる。
「生憎とすみません。現在、注文が多くてとても精霊祭が終わるまでにと言う条件では受け付けられません。差し出がましいですがこの時期は他の店も同じ。既製品で如何でしょうか?」
「そうですか……なら、既製品でコートを扱っているお店を紹介してくれませんか。それと鎧や防具を取り扱っているお店も」
「畏まりました。只今このあたりの地図を持ってきます」
店の奥へと消えていった店主の代わりに入り口に控えていたリザがやって来た。
「何か防具で必要な物がありますか?」
「ああ、僕らじゃなくてレティ用にね。流石にあの格好で戦わせるわけにはいかないだろ」
僕らの視線が買ったばかりの洋服をファルナに見せびらかしているレティへと向かった。
「それに、旅の間に鎧もくたびれたから修理をお願いしようと思ってね」
「そうでしたか。分かりました」
納得したリザが入口へと戻るのと入れ替わるように店主が地図を持ってやってきた。このあたりの商店の地図のようだ。
「ええとまずは既製品。それもコートを扱う店ですね。実はこの通りを折れた先にうち(家)で針子をしていた者がその手の店を開いていまして。私が言うのもなんですが腕は確かですとも」
気の良さそうなオジサンは太鼓判を押してくれた。しかし、身内の店を紹介するとは。多少呆れたが、他に店がなさそうだ。この際行ってみようかと思った。
「それで防具の店ですが……正直、この街においてその手の店は星の数ほどあります。どこが良いとは一概に言えませんので申し訳ありませんがご自身の目でお確かめください」
「……分かりました。それではそのお店に伺わせていただきます」
礼を言って僕ら一行は紹介されたお店へと向かった。
確かにオジサンが言う通り、裁縫の腕は良さそうに見えた。僕のすり切れたコートよりも丈夫そうに見えた。その店で僕はいま着ているのよりも濃い緑色のコートを選んだ。リザとレティは少し薄めの生地で作られた女性向けのベージュのコートを揃いで購入した。
読んで下さって、ありがとうございます。




