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試行錯誤の異世界旅行記  作者: 取方右半
第2章 祭りへの旅路
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2-22 決闘Ⅱ

 着ていたコートを脱ぎ捨てる。まだ買ってそれ程日は経っていないはずなのにすり切れ、日にかざせば明かりが透けそうだ。首都に着いたら新品のコートを買わなくては。


 ネーデの街で購入した軽鎧を取り外し、布巾で軽く磨いていく。もちろん炎鉄の手甲も忘れずに磨く。ここに来るまでいくつかの戦闘を経験したため雨や土などで汚れている。時間が無いから本格的な手入れはまた後でしよう。


 腰に提げているダガーは外す。使える武器は『紅蓮の旅団』が模擬戦に使う刃引きのバスタードソードだけ。


 艶を放つ鎧を着け直し、バスタードソードを鞘ごと入れ替える。これで身の回りの準備は万端。あとは心の準備だ。


 今回、《トライ&エラー》によるやり直しをしないと決めた。例え負けても、これが運命だと考える。前回、船上での決闘時に思い知った。相手の戦い方を覚えても、自力で差がある相手に生兵法は通じない。もし、僕に勝ち目があるとしたら、相手を倒すという強い覚悟だ。


 あの時。格上の頭領を退けた時のような強い気持ちこそ、勝利の鍵となるはず。


 退路を断ち、自分を叱咤する様に頬を叩く。馬車の中で乾いた音が響き、頬がひりひりと熱を持つ。

 だけど、気合は入った。


 覚悟を決めて、馬車を降りた。


 一瞬、燦々と輝く太陽が目に入り、ハレーションを起こしたように視界が白に染まる。

 数秒で視界は正常に戻ると馬車の外は喧騒に包まれている。


 ウージアの街から馬車で東へ四時間ほど進むと川とぶつかる。遠くにはバルボア山脈が見え、その山の一つから流れる雪解け水が川を作っているそうだ。


 多くのキャラバンがこの辺りを休憩地と定める。そのため川に沿って点在する村の住人がキャラバンを相手に商売をする。今も、昼の休憩の為体を休めている旅人に村で採れた野菜や魚、織物などを売りに来る村人が露天を作り集まる。

 そのため川縁は馬車や人で溢れている。そんな人が集まる場所で一際声を張り上げているのはファルナだった。


「さあさあ、皆の衆。今から始まるのは戦士と戦士の決闘さ! といっても賭けるのは命じゃない。互いの未来と誇りときた。男が勝てば女を手に入れ、女が勝てば自分の未来を手に入れる! さあ、オッズはそこのボードに書いてある。どっちが欲しいものを手に入れるか! 賭けるなら今の内だよ!!」


 集まった人垣に向かって見事な啖呵を切る。まさにあの親にしてこの娘ありだ。


(と言うか、内容は間違っていないのにどういうわけだか僕が物凄く悪人に聞こえるんだけど)


 周りの視線が非難めいているのは気のせいでは無いだろう。


「あれが女に奴隷になれと迫った男か」「まだ子供じゃないか」「奴隷にしてどうする気なのかしら」「そりゃあんた、若い男の考える事なんて一つしかないでしょ!」


 本人たちは遠巻きから声を潜めているつもりなのかもしれないが、ヒートアップしている為僕の耳に真っ直ぐ飛び込んでくる。


 気合を入れた心が折れそうだ。


 足早に賭けが行われている場所から逃げ、約束した場所へと向かった。

 川縁から少し離れた場所。昨夜の雨の影響もあってか少しだけ濡れた平原に人が集まる。


 ファルナがあれだけ宣伝した効果があったのかもしれない。僕が近づくと円を描く人垣が割れ、道ができる。


 その道の先、円の中心でエリザベートが僕を待つ。


 いつもの軽鎧を身に着け、腰には刃引きのロングソード。腰まで伸びた金髪は風に煽られて広がると輝いてさえいるようだ。集中の為きつく閉じられた瞳がゆっくりと開き、澄み切った青空を思わせる青い目がこちらを射抜く。


「さあ、始めましょう。私と貴方の決闘を」


 薄らと戦いを待ち焦がれる戦乙女がそこには居た。




「随分とギャラリーが集まりましたね」


 囲む様に集まるギャラリーを見てエリザベートが戸惑う様に口にした。頬を掻いて頷いたレイは自分が歩いてきた方を見る。


「あっちの方でファルナがギャラリーを集めてたよ。……大分僕を悪く言って煽ってたけど」


「……申し訳ありません。妹の為にワザと人目を引くようなことをして」


 エリザベートは申し訳なさそうに頭を下げる。ファルナが向うで人を集めて決闘を宣伝しているのには理由があった。

 昨夜の集団が再び襲撃する可能性がある以上、足を止めて決闘を行うのにリスクがある。そこでオルドは発想を逆にしてみた。衆人環視の中で決闘を行うと。


 敵の目的が宝石の行方である以上、むやみに姉妹を殺しには来ない。不特定多数の人間の前で誘拐はしないだろうと踏んだのだ。無論、ギャラリーの中にはいつでも動ける様に『紅蓮の旅団』の冒険者が控えており、レティシアの傍にはオルドとロータスが着いている。


 今も少し離れた高台から姉に向かって声援を送る。


 当初、ジェロニモは決闘を中止して欲しいとオルドに進言したが彼はそれを断る。依頼を受けた冒険者としてあるまじき判断だ。リスクを承知でこの決闘だけはちゃんと終わらせたいと依頼主に頭を下げた。


 オルドの隣で輪の中心で向かい合う若い男女を見下ろして彼は口を開いた。


「……それで、少しはレイさんに勝ち目はあるんですか? 船での決闘を見る限り、幾らか善戦できるでしょうが」


「そいつはオレにも分からねえ。レイは昨日戦技を使いこなす暗殺者を撃退した。少なくとも船の時よりも実力を増している。一方で嬢ちゃんの方は船の時に全力を出していない。……だからこそ、やらせてやりたいんだ。思う存分な」


 人垣を割って立会人のファルナが中央に躍り出た。

 彼女は向き合う二人がすでに臨戦態勢なのを確認すると、声を張り上げる。


「ルールを確認するよ! 勝負は相手に一本入れたら終了。一本の定義は頭、首、胴体のみとする」


「了承してます」


「分かってるよ」


 二人はファルナの方を見ない。目線を逸らした方が負けと言わんばかりに視線をぶつけ合う。

 中央に立つファルナは大きくため息を吐く。まるで惹かれあっている恋人のような二人を見て、戦士としての本能が疼くのが止まらない。どうにかして自分もこの場に参戦できないかと一瞬考えてしまうほどだ。だが、バカな妄想を振り払う。この決闘は誰かが汚していい物じゃない。自分にできるのは見届けるだけだ。


 手を上に持ち上げる。合わせる様に二人は刃引きの剣を抜く。


「そいじゃ、始め!」


 上げた手を振り下ろすのと、二人が距離を詰めたのは同時だった。

 互いの間合いに入り剣を振り合う。一合、三合、七合と激しく武器が打ち鳴らす。意外な事にレイはエリザベートの剣を真っ向から撃ち落していた。船での決闘を見ていた者にとってそれは意外な一幕だ。


(剣の軌道が、狙いが今ならわかる!)


 船上での七戦の敗北。オルドとの特訓。暗殺者による殺意のこもった一撃。それらが血肉となってレイの中に息づく。とは言え、エリザベートの剣を捌いているに過ぎない。まだ、彼は攻撃に転じていない。

 力を籠めてロングソードを受け止める。鍔迫り合いにより、両者の顔が近づく。


「精神力操作はしないのですか? それとも昨夜のは火事場の馬鹿力ですか?」


「そっちこそ、使わないつもり、か!」


 レイが蹴りを放つ。胴を狙った足刀は空を切る。後ろに飛んで下がったエリザベートは着地するなり剣を水平に構える。その構えから次に何が来るのかを察したレイは全身に精神力を纏わせる。


 目の前の相手の反応に薄くエリザベートは笑う。笑みを作る唇が動いた。


「《この身は一陣の風と為る》!」


 詠唱と共に風が少女の両足に纏わりつく。その踏み込む足に力が加わる。


 ―――来る。


 レイは前方の空間に向かって剣を振り下ろした。


 数瞬遅れて、エリザベートがギャラリーの傍に姿を現した。冒険者以外のギャラリーには何が起きたかすらわからなかった。彼らの目はエリザベートが姿を消したと思ったら、レイが何もない空間に剣を振り下ろし、何故かギャラリーにぶつかりそうになるエリザベートが現れた様にしか見えなかった。


「やるねぇ。レイの奴」


「ええ。驚きです」


 高台にて決闘を見下ろす上級冒険者にとって一連の流れは欠伸が出るほど遅かった。だが、レベルが五十を越えない者同士の決闘としては目を見張るものがある。


 レイは前進したエリザベートに向かって剣を振り下ろした。かつての彼なら姿を消した瞬間に振り下ろしても間に合わなかっただろう。たとえ、間に合っても、エリザベートは片手で防げる軽い斬撃だったはず。

 だが彼女は振るわれた剣を見て、咄嗟に斜めに飛んだ。無論、そこには人の壁が立ちふさがるため、地面に手をついてブレーキをかける。


 エリザベートの判断は正しい。振り下ろされた一撃を受けた大地に亀裂・・が走る。


 それを見て興奮からどよめくギャラリーとは反対にレイは静かに、自分が追い詰められていくのを感じていた。


(精神力の残りからすると、あと一発かそこらか)


 体を覆っていた精神力が霧散する。まだ少年は精神力操作を完璧に使いこなしてはいない。フルスイングの一撃に精神力を籠める。たったこれだけしかできない。

 残りはエリザベートの戦技を防ぐのに使うために残す必要がある。ここから先は精神力無しで挑むしかない。


 一方、エリザベートも静かに自分の選択肢を潰されていくのを感じていた。前進に一回。方向転換に一回。纏っていた風は使い切る。次に技能スキルを使うまでに幾らかの時間を必要とする。


(これは……誘われているのでしょうね)


 レイの狙いは不明だが、彼はエリザベートに戦技を使わせたがっている。自分でもこの状況から勝ちを取るには使うしかないと分かっている。だが、そうやすやすと相手の思い通りにはやらせない。


 一度大きく息を吸い、全身に精神力を纏わせる。プレッシャーがレイの肌に突き刺さる。エリザベートはロングソードを握りしめ吶喊する。

 それを見て少年も躊躇わずに前へと進む。退くことは考えていない様に、突き進む。両者は再び円の中央にてぶつかる。


 正面から振るわれた剣がぶつかり、甲高い音を立てる。それを皮切りに二人の剣は絡み合う様に何度も激しくぶつかる。刃引きされたとはいえ、ぶつかる度に両者の力量によって刃が削れて細かい破片がギャラリーへと飛び散る。


 慌ててギャラリーが距離を取る中、発生源の両者は一歩も引かずに剣を振るう。欠けた鉄が礫の様に二人に注がれてもなお剣を振るう。


 その撃ち合いはある種の荘厳さすら感じさせる。彼らより力量が上の『紅蓮の旅団』の冒険者ですら惹き付ける。


 永遠に続くかと思われた斬撃の応酬は唐突に終わりを告げる。

 エリザベートが精神力を全て武器に籠めた。肌で感じる事が出来たレイは、彼女が決着を付けに来たと理解し自らの持つ精神力を全て剣に籠めた。


「《風牙》!」


 詠唱と共に戦技が放たれる。籠められた精神力が神秘へと昇華され、現象を引き寄せる。


 彼女のロングソードから風の刃がレイを目がけて放たれる。レイは迫りくる刃を、精神力を籠めたバスタードソードで受け止め―――られない。


 分厚い鉄の塊を両断した風の刃は観客を躱すように上空へと舞い上がり、大空へと吸い込まれた。役割を全うした。


 これがエリザベートの切り札、《風牙》。近中距離ではあるが、ある程度自分で操作できる風の刃を放つ。対象が近ければ近いほど切れ味は鋭くなる。


 レイのバスタードソードの剣先は舞い上がった風の刃に巻き込まれてはるか上空だ。前の決闘の様に落ちてくるのを待つ時間は与えない。間髪入れずに、同じ軌道を描いてロングソードが突く。


 ―――刹那。


「《留めよ、我が身に憎悪の視線を》!」


 レイの《心ノ誘導》Ⅰが彼女の剣先をずらす。胸当てに当てるつもりの一撃が頭部へと持ち上がる。


(ダメ! 止まらない!!)


 エリザベートは自分の意思に反して動く腕を呪った。突撃する体は放たれた矢のように止まらず、レイの頭部を貫こうとする。


 瞬間。エリザベートはレイが笑ったように見えた。彼は半ばから両断されたバスタードソードを捨てると、右腕を前方・・へと差し出した。


 ずぶり、と刃の無い剣が肉を、骨を貫く音がした。レイはロングソードの剣先を右腕で受け止めたのだ。防具を着けていない・・・・・・・・・右腕で。


 刃が無い剣とは言え、鉄の塊。高速で肉とぶつかればどうなるかは誰もが分かっている。増して彼は精神力を纏わせることすらしない無防備な状態で剣を受け止めた。肘の内側から貫かれたロングソードは血で濡れた剣先をレイの鼻先に突きつける。


「これで……武器は使えないだろ!」


 痛みで顔をしかめながら勝ち誇る。これがレイの捨て身の策だ。戦技を使わせるまで追い詰め、《心ノ誘導》Ⅰを使う事で《生死ノ境》Ⅰを誘発させる。その際、出来る限り相手の予想できない行動をとる事で動揺と思考停止を引き寄せる。


 ファルナが事前に言っていた。一本は頭、首、胸。それ以外は認めないと。


(君に勝つためなら、腕の一本ぐらいくれてやる!!)


 レイは腕に剣が刺さったまま、左拳をきつく握りしめる。拳を作れば手甲が打撃武器へと姿を替える。


 最短距離で彼女の顔を目がけて拳が走る。


 その拳が寸前でピタリと止まる。


 寸止め―――では無い。


 レイの脇腹にエリザベートの足刀が深々と入ったのだ。


 少年は苦悶の表情を浮かべて膝をついた。

 拳が到着するより一瞬早く、エリザベートは迫りくる脅威に対して、前に進んだ。当然レイの右腕に刺さった剣はより深く食い込み、レイの顔に当たりそうになる。彼はそれを無意識に避ける。当然最短距離を進んでいた拳もぶれる。


 その隙にエリザベートは足刀を脇腹に叩き込んだ。


 レイが膝を着いてから遅れてファルナが声高に宣言する。


「勝者、エリザベート!」


 あっけに取られていた観客が歓声を上げる。素晴らしい戦いを繰り広げた両者に惜しみない拍手を送る。


 地面に伏したレイは剣が突き刺さった痛みに耐えながら八敗目を味わう。




「―――あなたはなんて無茶を!」


 沸き立つ歓声を浴びてエリザベートは我に返ったように叫ぶ。跪くと僕の右腕からロングソードを引き抜き、溢れる血を手で押さえつける。


「いや、ほら。手甲で防ぐのは何度も見せてたからあえて防具を着けていない右腕で防いで動揺を誘おうとしたんだけど……思ったより剣が削れてたね」


 平原に投げ捨てられた血染めのロングソードを見ると、剣戟の応酬により先端が幾らか鋭利になっている。まさか貫かれるとは思っていなかっただけに流石に自分でも動揺した。逆にいうと自分が動揺するなら向うはもっと動揺したと思いチャンスだと判断したわけだが。


「このバカレイ!」


 スパーン、と後頭部を叩かれた。振り返らなくても分かる。エリザベートと同じくしゃがみ込んだファルナが応急処置代わりに回復薬を傷口に振りかける。


「腕に対して刃が縦で良かったな!! もし横ならお前どうなっていたか分かってんのか!!」


「えっと……切断?」


「分かってんならすんな、このバカレイ!! カーミラ、早く来てくれ!!」


 鬼も裸足で逃げていきそうな修羅の顔をしたファルナがギャラリーの中に居るカーミラを呼んだ。人垣を掻き分けてカーミラとなぜかレティもやって来る。二人は傷口を見て回復魔法を同時にかける。


 傷口は瞬く間に修復されていく。それを見て、エリザベートは胸をなでおろし、草原にへたり込んだ。そんな彼女に向かって僕は口を開く。


「エリザベート。それにレティシア」


 姉妹は名前を呼ばれて不思議そうにこちらを見る。僕は二人に向かって言葉を継ぐ。


「決闘に負けた以上、僕は二人を諦めます。……首都に着いたらこの仮契約を解除して、それから―――」


「―――ちょっと待ってください!」


「―――ちょっと待って、お兄さん!」


 二人が声を揃えて詰め寄る。表情は真剣そのもので、僕は思わず後ずさりしてしまう。


「あの、私達を買う気は無くなったんでしょうか?」


「やっぱり、ウージアの件で迷惑に思った?」


 不安そうに姉妹は問いかける。慌てて首を横に振って否定する。


「そんな事は無いよ。まだ、二人を買いたいと思ってるし、あれぐらいで迷惑だなんて思っていなよ。ただ……」


「「……ただ?」」


 一瞬、言葉が出ない。自分の気持ちを正直に語るのは恥ずかしいと思う。だが、ここは言っておくべきだと思った。


「決闘で負けた以上、未練がましいのは男らしくないと思って、すっぱりと諦める事にしたんだ」


 何故だかファルナが大きく頷く。だが、目の前の姉妹は不思議そうに首を傾げる。


「……あの……レイ様。……もしかして、何か勘違いしていませんか?」


「勘違い?」


 エリザベートは躊躇いがちに言葉を継ぐ。


「私は決闘の勝敗・・でどちらに買われたいかを決めるとは言ってません」


「「……はい?」」


 僕とファルナが揃って首を傾げる。思わず顔を見合わせると彼女の目が点になっている。おそらく僕も同じだろう。


「私は貴方の強さがどれぐらい成長するかを証明してほしいと言ったのです」


 横に居るレティに視線を移すと彼女は肯定する様に頷いた。


 確かに、思い出すと決闘の勝敗で決めるとは一言も言っていない。僕がどれぐらい強くなるかに興味があると。エリザベートたちが欲しいならその強さを証明しろと。

 あまりにも想定してなかった展開に呆然としていると、姉妹は草原に膝を揃えて座る。


 二人の目があまりにも真剣だったため、僕も居住まいを正す。草原に正座をして向き合う。


「レイ様。貴方がこの一週間でどれほど成長したかを私は見てきました。そのレベルで精神力操作を身に着け、私から戦技を引き出し、一撃を入れるところまで追い詰めた。……正直嫉妬すら抱きます。その異常な成長速度に」


 エリザベートは青い瞳に剣呑の光を宿す。一瞬、背筋に冷たいものを感じた。だが、彼女はすぐにその光を消すと言葉を継ぐ。


「そして、街道での一件。ウージアでの一件。貴方は命を顧みずに死地へと飛び込み私達を助けに行きました」


「それは……僕の命もかかっていたし」


「例え、そうだとしてもです。……まあ、少々向う見ずな所もありますが」


 皆の視線が右腕の塞がりかけの傷口へと向いた。


「そーいう所は治してほしいなお兄ちゃん・・・・・


 急にレティが呼び方を変えた。その声色の中に親しみを感じるのは気のせいではないだろう。

 二人はそろって胸に手を当てた。


「もし、貴方が望むのなら、この身は貴方の剣となり敵を討ち、盾となりお守りします」


「もし、貴方が望むのなら。この身は貴方の杖となり傷を癒し、道具としてお役に立ちます」


「「だからどうか、私達を傍に置かせてください」」


 二人は揃って頭を下げた。僕は呆然としてしまう。あまりにも状況が都合よすぎると思えた。呆けた僕をファルナが小突く。


 彼女の氷を思わせる青い瞳が返事をしてやれ、と語りかける。


「―――こちらこそ。よろしくお願いします」


 二人に向かって頭を下げる。


「はい。ご主人様・・・・


「よろしくね、ご主人さま・・・・・


 顔を上げた姉妹は満面の笑みを浮かべて言った。


読んで下さって、ありがとうございます。

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[一言] 最後の所で妹は ご主人さまと言わないでだんな様と言えば 面白かったのになぁ・・・と思った。
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