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悪役令嬢だった私はスライムに生まれ変わりました  作者: 狩野生得
第一章 私が悪役令嬢? いいえ、私は聖女です
7/13

7.悪役令嬢は告白に慣れてません

挿絵(By みてみん)

 けが人の治療は進んでいた。

 見るからに重傷な人にはマランさんや神官が、そうでない人には僧侶が、次々と治癒ちゆ魔法を使っていく。


 ダール様からもらった知識によると、この世界の治癒魔法は、小さな傷が放っておいても治る力――自然治癒力――を高めてけがを治すタイプなの。なので、同じ魔法で病気も治せるわ。

 当然だけど、死体には効果がない。一時的な心停止なら回復するかもしれないけど、期待しない方がいいわね。


 治癒魔法を使うと、術者から自然治癒力を高める魔法力(MP)が放出され、対象者の患部に働くの。

 それで、見る間に血が止まったり、傷口がふさがったりするわけ。

 負傷箇所に手をかざしてるのは、魔法力を放出しやすいスタイルだからよ。もっとも、そんなこととは知らずに教わった通りに使ってる人が大半なんだけどね。


 そんなわけで、治療は順調に進んでるんだけど…。

 ハッキリ言って、このままだとマズいわね。


 いや、軽傷だった人は問題ないのよ。ちゃんと治ってるから。

 問題なのは重傷者。自然治癒力を高めただけじゃ、複雑骨折は元通りにできないの。ちゃんと固定してから魔法を使わないと、変な形にくっついちゃうわ。

 そして当然だけど、欠損部位は戻らない。指の先ぐらいならまだしも、腕や足がなくなったままじゃ、日常生活にも困るわよね…。


 さらにマズいのが、実は重傷なのに軽傷と判断された人たちよ。

 彼らの治療には、僧侶があたってる。

 その結果、体内に小石が残ってたり、切れた神経がそのままだったりの状態で、外傷だけが治ってるの。


 えっ、なぜそんなことまで分かるのか、ですって?

 ふっふっふ。よくぞ聞いてくれました。

 じ・つ・は、私の左右の目には、特別な力があるのです!


 まず右目。こちらには、身体の悪い部分が赤く光って見える能力があります!

 そして左目。こちらは、悪い部分をレントゲン写真のように見ることができます!

 なので、体内の異物とか内部損傷とかも、バッチリわかっちゃうのです!


 私は薬神より上の全知全能の神様の加護を受けてるから、それぐらいできても不思議じゃないのよ。

 ま、実際は、ダール様に教えてもらった神眼しんがんのスキルを、自分で自分に付与したんだけどね。

 そんなわけで、パッと見じゃ気付かない人も多いんだけど、実は私、オッドアイなの。


 おっと、私のことは後でもいいわね。

 それよりも、ちゃんと治せてない人のことを考えなきゃ。


 幸いにも、今すぐ処置しなきゃ命にかかわる人はいない。傷口はふさがってるからね。

 でも、身体の中に小石なんかが残ってる人は、早く取り除くにこしたことはないわ…。


 そうね。私が楽できる方向で動きましょう。


 私は軽傷だと思われてるけど実は重傷な人に近付き、声をあげる。


「皆さん、一度手を止めて集まってください!」


 その人を治そうとしていた僧侶が驚いた顔で私を見る。

 マランさんや神官たちも集まってきた。


 重傷の人は、お腹と右足の大腿ふとももに小石や砂が深くめり込んでる状態よ。外からだとわからないから、普通に治癒魔法を使うと身体の中に残っちゃうの。

 銃がない世界だから、体内に異物が入ったままというのを想像できなくても仕方ないんだけどね。


 みんなが集まったところで私はそのことを伝え、治癒魔法を使った。

 損傷部を消毒しながら異物を身体の外に押し出すイメージで魔法力(MP)を放出する。

 先に太腿から、少し遅れてお腹から、異物を押し出しながら傷が治る。


「ネージュ様…今のは…?」

「身体の中に入ってる物を押し出しながら、傷を治しました。いきなり同じことをするのは難しいでしょうから、深そうな傷を負った人の治療は私に任せてください」

「承知しました。皆さん、聞いた通りです。残っているけが人の治療は、そのようにお願いします」


 神官たちはマランさんの指示に頷きを返し、治療に戻った。


 さてと、それじゃ、ちゃんと治せてない人をパパッと治しますか。


  ☆


 けが人の治療は終了。重傷者も完璧に治したわ。聖女たるもの、部位欠損ぐらいは治せないとねー。


 もちろん、普通に治癒魔法を使ったんじゃ、部位再生はできないわ。

 傷口の細胞を未分化状態に戻して、失った部位を形成できるだけの栄養素を与えて、人体の構造をイメージしながら魔法を使う必要があるの。

 だから、それ相応の知識と魔法の技量が無いと無理。残念だけど、今のプルミエルじゃ使えそうな人はいないわね。


 そんなわけで、私は治したけが人や関係者に感謝されまくりながら、神官や僧侶の皆さんを従えるようなフォーメーションで、普通に歩いて教会に向かってます。

 衣装は違うけど、イメージ的には医療ドラマの院長回診ね。

 当然だけど、私、失敗しないわよ。


  ☆


 教会の偉い人たちとの顔合わせを済ませた私は、女性の聖職者用の寮に個室をもらい、当面はそこで暮らすことになった。

 私ぐらいの年代だと大半が見習いなので4人部屋、僧侶になっても2人部屋なので、これは破格の待遇よ。

 と言っても、寮の建物や家具は、教会の一部とは思えないほど質素なんだけどね。

 機会があれば理由も話すけど、教会は公爵家で生まれ育った私でも感心するぐらいに荘厳で豪華絢爛なの。


 そして、私は明日から教会で魔法を教えることになった。

 プルミエルの教会は学校も運営してて、魔法も教えてるの。もちろん、先生役は僧侶以上の聖職者よ。武術も教えてるから、聖職者は強くなきゃ務まらないわ。


 私が受け持つのは最上級クラス。

 生徒は神官や王宮魔導士レベルの才能の持ち主ばかりよ。

 教えるのは攻撃魔法以外。攻撃魔法を教えるのは、王宮魔導士の役目なの。


 ついでだから言っておくと、何日かしたら、王宮でも魔法を教えることになると思う。

 なにしろ、王宮魔導士の精鋭たちを軽くあしらっちゃったからねー。


  ☆ ☆


 あくる日、寮を出た私は信じられない光景を目の当たりにした。

 名のある貴族の子息やら、大商会のボンボンっぽい若者やらが大勢、私を出待ちしてたの!


 あー、もしもし、私、マジでそういう経験ないんですけど?


 ごめんなさい。こういうとき、どんな顔すればいいかわからないの。

 使い方が微妙に違うのはわかってるわ。でもね、他に言葉が浮かばないのよ…。

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