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悪役令嬢だった私はスライムに生まれ変わりました  作者: 狩野生得
第一章 私が悪役令嬢? いいえ、私は聖女です
4/13

4.悪役令嬢の言葉にも耳を傾けてください!(切実)

挿絵(By みてみん)

 えーーーっと、この状況って……。


 私の頭は、あまりのスピードにハムスターが飛び出した回し車みたいに超高速回転し、全力で否定したい仮説を導き出した。

 もしかして……、偽物が先に現れて聖女になりすまして、私を偽物に仕立て上げた……?


「!」


 うわー、やっぱりー!

 思いっきり矢が飛んできたー!

 プルミエルの弓って射程距離アップの魔法が付与されてるから、ヘタな魔法より遠くまで届くのよ!


 私は降下を止め、物理攻撃を無力化する魔導防壁を展開した。

 防壁は、当たった矢の運動エネルギーを波紋に変えて受け流す。

 エネルギーを失った矢は、ぽたぽたと地上に落ちていく。


 実を言うと、私に防壁は必要ない。物理用だけじゃなく、魔法用もね。

 ヒルコスライムは神種しんしゅ。ハース大陸で共通のモンスター強さ基準に当てはめると、余裕で最上位のSSS級なの。

 多少の訓練を積んだレベルの人間が繰り出せる攻撃じゃ、かすり傷ひとつ付かないわ。

 私にダメージを与えたかったら、最低でも一撃で魔王を倒せるレベルの攻撃じゃないとねー。※それで倒せるとは言ってない。


 でも、そのことを、偽物だと思われてる今の状況で知られるのは非常にマズい。

 どう考えても悪魔の仕業になっちゃうからね。

 私が本物の聖女だと認められて、誰もがそれを神の奇跡だと思うようになるまでは、絶対に知られちゃいけないのよ。

 だから、面倒でも防ぐか避けるかしなきゃいけないわけ。


「!」


 うわっ、やっぱり魔法も飛んできた! 大きめ――ビーチボールぐらい――のファイヤーボールが5発!

 さすがに王宮魔導士の精鋭さんたちね。モブな兵士が撃ってくる矢とは、比べ物にならない威力だわ!

 相変わらず矢も飛んできてるから、防壁を切り替えるわけにはいかない!


 これは……、こちらもファイヤーボールで迎撃するしかないわね。

 あー、面倒くさい。

 私のファイヤーボールは威力がケタ違いだから、思いっきり手加減して撃たなきゃいけないのよ……。


 私は右手を開いて突き出し、それぞれの指先から小さめ――ビー玉ぐらい――のファイヤーボールを放った。


 よし、迎撃に成功!

 魔法の手加減を練習しておいてよかったわー。


「!」


 げっ、今度は乱れ撃ってきた! ひいふうみい……10発か。

 超面倒くさい!


 私は両手の指を使って10発のファイヤーボールを放ち、力の差を見せつけるように迎撃した。


 さすがに今ので通用しないと悟ったのだろう。攻撃はひとまずやんだ。

 おかげで、あれこれ考える余裕ができた。



 う~ん、このまま地上に降りたら、私は確実に捕縛ほばくされるわね。


 今のは問答無用の攻撃だったから、正当防衛を主張できる。聞き入れてもらえるかどうかは別だけどね。

 でも、「おとなしくばくにつけ」と言われた後は、抵抗すると超マズい。たいていの場合、それだけで罪人にされちゃうのよ。

 さて、どうしたものかしら?


 方法その1、私が本物だと神様に証言してもらう。

 悪魔に助けられた大罪人が聖女をかたる噂がなければ、一番確実な方法だったと思うわ。

 でも、そんな噂が流れたから、声だけだと神様か悪魔かわからないと思うのよ。

 そうなると神様本人(ダール様)に出てきてもらう必要があるんだけど……。

 ダール様を神様だと信じてもらうのって、今の私を言葉だけで聖女だと信じてもらうより難易度高そうなのよねー。よってボツ。


 方法その2、力でねじ伏せて私が本物だと認めさせる。

 いやいや、どこの世界にそんな武闘派の聖女がいるのよ! 当然ボツ。


 方法その3、下にいる方が偽物だという証拠を突き付ける。

 うん、やっぱりこれしかないわね。

 私の当面の目標は冤罪えんざいを晴らすこと。それには証拠や証言を集めなきゃならない。

 その予行演習にピッタリだわ。


 問題なのは、証拠を探しに行けないってことね。

 今この場から姿を消せば、私は自分が偽物だと認めたことになる。「やましいことがあるから逃げたんだ」ってね。

 そうなっちゃったら、挽回するのはほぼ不可能と言っていいわ。


 さあ、考えるのよ私。

 下にいる偽物は、なぜ本物になりすませてるのか?

 この答えは簡単ね。偽物も青髪だからよ。


 ハース大陸に青髪の人間は生まれない。プルミエル王国だけじゃなく、他の国でもよ。

 青髪は、神に選ばれた人間のあかしなの。だから、生まれるときには必ず神託がある。どこかから現れるときも同じよ。

 神託に合わせて青髪の人間が現れたら、疑う人はいないと言っていいわ。

 偽物は先に現れたから信用された。これは間違いないと思う。


 で、偽物は髪を染めてることになるんだけど……プルミエル王国にヘアカラーは無いのよね。どうやって染めたのかしら……?


 ん……? あ、そっか!

 染め方なんかどうでもいいのよ。大事なのは、ヘアカラーで染めたんじゃないってところ。

 普通の染料を使ったんなら、水で落とせるんじゃないかしら?

 だったら話は簡単よ! 偽物の髪を濡らしちゃえばいいんだわ!

 水魔法を使えば手っ取り早いんだけど、攻撃したと思われるのは避けたいわね……。


 あとは、私が知らない魔法で髪の色を変えてる可能性もあるわね。

 この場合は、水で落とせるとは限らない。

 でも、聖女の力なら、よこしまな者とみなして魔法を消せても不思議じゃないわね。


 あくまでも聖女として振る舞って、一度に両方試せる方法は……。

 そうだ、雨を降らせればいいんだわ!


 私は全身にまとっている光を広げて神々しさを増し、うれう声で地上の人たちに告げる。あ、声は魔法で大きくしてます。


「あなた方は、なぜ私に矢を向けるのです? なぜ私に魔法を撃つのです? 私をかたる者の言葉にだまされてはいけません!」


 おお、効果は抜群だわ! 兵士も、偉そうな人たちも、みんな動揺してる!

 それじゃ、一気に行くわよ!


「今から雨を降らせます。おのが身にやましいところがなければ、何も起こりません。ですが、偽っているものがあれば、それは洗い流されます」


 人々は互いに顔を見合わせてから、半信半疑そうな顔で私を仰ぎ見る。

 八割がたの視線を集めたあたりで私は右手を天にかざし、魔法で雨を降らせた。


 さーて、偽物はどうなったかしら?

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