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悪役令嬢だった私はスライムに生まれ変わりました  作者: 狩野生得
第二章 真の悪役令嬢は貴女です
12/13

12.悪役令嬢と第二王子は相性が悪かったようです

挿絵(By みてみん)

イメージ画:相内 充希 様作

 爆砕竜の討伐から3日。私は富裕層に成り上がった。


 爆砕竜はS級モンスター。

 素材がそれなりの額で売れるとは思ってた。でも、4人で山分けするから、大した額じゃないとも思ってた。

 それが、2匹分で倍になった。しかも、状態が良かったので、買い取り額がグーンとアップした。


 爆砕竜ズは最高戦力3人でも手に負えないほど強かった。

 それを倒したということで、国からの褒賞金ほうしょうきんがグググーンとアップした。

 金額は各々(おのおの)の戦功に応じて決まる。

 私の褒賞金は、爆砕竜2匹分の素材売却額を軽く超える金額になった。


 はい。合わせると法服ほうふくの侯爵家の年収を超えてます。ありがとうございます。

 あ、法服っていうのは、領地を持ってない貴族を指す言葉よ。彼らは王都で役職に就いてて、その報酬で生計を立ててるの。世襲のキャリア官僚みたいなものよ。


 庶民がこれだけもらったら、一生遊んで暮らせるわ。生活費とかを計算して、計画的に使えば、だけどね。


 一方、私は教会住みの聖職者。庶民と違って生活費の心配は要らないの。

 当然、老後は年金だけだと金貨2000枚ぶん足りない!? なんて心配もないわ。

 これはパーッと使いに行く以外の選択肢は無いわね!


 というわけで、私は古着屋さん(貸衣装屋も兼業)に向かってます。

 目的は夜会用のドレスを買い込むことよ。


 えっ? お金があるのに古着屋なの、ですって? そうね。それは、もっともな疑問ね。

 実は、プルミエルの聖職者は、贅沢ぜいたく品を買っちゃダメってルールがあるの。


 当然、夜会用のドレスは贅沢品よ。そも、夜会自体が贅沢をむねとする上流階級のイベントだからね~。

 だから、新品のドレスは買えないのでしたー。


 あ、ピーンときた? そう。誰かが使って要らなくなった物は、贅沢品じゃなくなるの。

 古着のドレスは贅沢品じゃないから、聖職者も買えるの。それも、金額の上限なしにね。

 新品で金貨10枚のドレスは買えないけど、古着なら金貨100枚するドレスを買ってもいいのよ。


 えっ? 古着屋にそんな高価なドレスがあるのか、ですって?

 たぶんあるわよ。だって、そのお店の商品の大半は、王族や上級貴族が払い下げた物だもの。


 そうね、およそで2割ぐらいは、カデット家の払い下げだと思う。

 正装ならともかく、夜会の衣装を3回着るなんてことは、王家や公爵家のすることじゃないの。

 普通は1回着たら払い下げ。よほど気に入った物なら、主催で1回と招待されて1回着るって感じね。


 利用客の大半は、中級~下級の貴族よ。上級貴族もたまにいるわ。

 社交シーズンになると、夜会は毎日のように開かれる。でも、毎回違う衣装を自前で用意できる貴族は少ない。

 そこで、貴族相手の貸衣装屋が重宝されてるわけ。


  ☆


 古着屋の前にはオレール子爵家の馬車が停まってた。

 あー、これはちょっと店に入りたくないかも。


 理由?

 私が断罪されるきっかけになったのが、そこの令嬢だからよ。

 もしも中に当人そいつがいたら、ちょっと冷静じゃいられなくなるかもしれないからね。


 ちょうどいい機会だから、そのへんのことを少し話しておくわ。


  ★


 オレール子爵家の令嬢はスリジエ。学年は私の2コ上で、殿下ヴェントと同じよ。

 当主夫妻の実の子じゃなく、遠縁から養女に入ったと聞いてるわ。


 これは貴族じゃよくあることよ。法服だと、特にね。

 秀でたところがある子どもを養子にして、上役の覚えが良くなる相手と結婚させる。これ、出世方法の定番だからねー。


 スリジエは、容姿と頭脳が優れてたわ。

 ただ、彼女はそういうのをひけらかさない、いわゆる優等生で委員長なキャラのポジションにいたの。学年が違うから、また聞きなんだけどね。

 当然、貴族としての常識もわきまえてたと思う。


 ところが、よ。

 最終学年になって早々、彼女は殿下ヴェントびだしたの。それはもう、誰が見てもやり過ぎってレベルでね。


 爵位を継げない次男三男が、婿入り狙いで爵位継承権がある令嬢に近付くのは、貴族的にあり。

 生家より爵位が上の令嬢を狙うのも許されてるわ。成功率は、ほぼゼロだけどね。


 爵位と無縁の令嬢たちが分相応の結婚相手を探すのも、一か八かで玉の輿を狙うのも、同じように認められてる。玉の輿が高難度なのは、男性の場合と同じよ。


 そんな感じで、貴族同士の恋愛は、割と自由。ただし、1つだけタブーがあるの。

 それは、王族には手を出さないってこと。


 王族との結婚は、貴族間のパワーバランスにものすごく影響する。

 国民受けも考えなきゃいけない。

 子ども同士で軽々しく決めると、後で大人が苦労するのよ。


 なので、王子や王女の結婚相手は、王家と全ての公爵家で相談して決めるの。

 私と殿下ヴェントの婚約も、それで決まったのよ。

 

 それなのに、スリジエは殿下ヴェントを誘惑した。

 婚約者がいる人間には手を出さないという常識を破り、王族には手を出さないというタブーを破ったの。

 そりゃ、文句の一つも言いたくなるでしょ!

 ていうか、黙ってる方がおかしいわよね!


 ええ、全力で抗議したわよ。殿下ヴェントがいる前でね。


 さすがに反省したみたいで、次の日は学園を休んだって聞いたわ。


 そしてその翌日、私は家を出たところで衛兵たちに捕らえられ、罪人呼ばわりされたの。

 その罪状が、笑っちゃう内容なのよ。

 私は「嫉妬で狂ってスリジエに暴力をふるい、止めに入った殿下ヴェントを負傷させた」んだって。

 そんなバカな真似、私がするわけないじゃない。


 私は公爵家の令嬢として、さらには王族に嫁ぐ者として、入学前からそういう教育を受けて育ったの。

 殿下ヴェントに対して普通の人みたいな恋心や愛情があったとは言い切れない。

 でも、将来王族の末席に加わる者として相応しくない行動は、絶対にとらない。

 そして、そのことは、私の周りにいた人たちは、みんなよく知ってるはず。


 それなのに、私の言うことは誰にも信じてもらえなかった…。


  ☆


 改めて考えると、これは異常よね。

 

 カデット家は公爵家の中でも頭一つ抜けた権力と財力を持ってる。

 私はそこの令嬢で、第二王子ヴェントの婚約者だった。


 そんな私を罪人に仕立て上げようとしたら、どれだけ関係者を巻き込めば良い?


 そう思った瞬間、私はひらめいてしまった。


 もっと簡単な方法がある!

 私より立場が上の人間が、私の悪行を証言すればいい!


 そうか…。

 殿下も深くかかわってたのね…。

今回投稿ぶんから、ルビが文字数にカウントされなくなっています。

にもかかわらず、一話は2500文字目安のまま書いてます。

なので、一話が若干長くなっていると思います。

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