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悪役令嬢だった私はスライムに生まれ変わりました  作者: 狩野生得
第二章 真の悪役令嬢は貴女です
10/13

10.悪役令嬢は男のプライドを傷つけていたようです

挿絵(By みてみん)

 今の状況を簡単に説明しておくわ。


 古代の森には、数匹の大型モンスターが暴れまわれるだけの広場になってるところが何カ所かある。

 そして、広場と広場を結ぶように、大型モンスターが使う獣道が走ってる。

 狩りゲーのエリアみたいなイメージね。


 2匹の爆砕竜は、同じ広場にいるわ。


 この2匹が怪獣映画みたいにガチで戦ってくれてたら、私たちは楽だった。

 共倒れしてくれれば超ラッキー。動けない相手に軽くとどめをさして、素材――うろことか爪とか――をはぎ取るだけの、簡単なお仕事になるからねー。

 普通にどちらかが勝ってもラッキー。ズタボロの敗者と、疲れてる勝者を倒すのは楽勝。あとは、はぎ取って任務完了。

 痛み分けでも悪くはない。どちらもダメージを受けてるから、倒すのに苦労はしないわ。あとは、楽しくはぎ取っておしまいよ。


 でもね、今回は2匹が争ってないの。

 それどころか、共同で狩りをしてたっぽいのよ。

 私の探知魔法には、頭を爆破されて絶命した草食恐竜タイプのB級モンスター(爆砕竜より大きい)を、仲良く食べてる爆砕竜たちの反応があるの。


 これは最悪と言っていいパターンよ。

 片方を攻撃すれば、間違いなくもう片方が助けに入る。

 それどころか、連携して私たちに対抗してくる可能性まである。

 なので、当初の計画――タランさんが魔法で相手の動きと視界を制限して、シアンさんと殿下が死角から攻める――は使えないと思いました!


 えっ、私の役目?

 支援と万一の時の回復役に決まってるでしょ。

 強力な魔導防壁が使えるから護衛が要らない、超優秀な支援&回復要員よ。


 えっ? 攻撃は、ですって?

 私、強力な攻撃魔法も使えるところは見せてませんので。

 理由? そんなことしたら、王宮魔導士の立場がなくなっちゃうでしょ?

 博物館で見せたのは、あくまでも解呪。攻撃魔法じゃありませんから。


 ファイヤーボールの迎撃? あれは「器用さです!」で押し通したわ。

 初級のファイヤーボールだから同時に使えて、数を撃つために小さくしましたってね。


 話を戻すわ。

 この状況で討伐を成功させるなら、2人ペアで爆砕竜1匹を相手にする形が無難だと思う。

 3人とも、爆砕竜を単独で倒せる実力の持ち主だからね。

 2匹を分断させれば、負ける要素はないわ。


 そう考えた私は、3人に提案してみた。

 そしたら、2人は賛成してくれた。

 でも、1人は思いっきり反対してきた。


 さて、ここで問題です。反対してるのは誰でしょう?

 答えは殿下ヴェントよ。


 理由は、その戦い方だと魔法でもダメージを入れることになるから。

 それの何が問題かというと、素材の損傷。

 魔法だと、どうしても剣より損傷面積が広くなる。特に、私はファイヤーボールしか使えないことになってるから、確実に焦げる。

 殿下アイツは、それが気に入らないの。


 まったく、国家の一大事だっていうのに、何考えてるんだか。


 殿下アイツは昔っからそうなのよねー。

 王位を継げないのが決まってるからだと思うんだけど、富と名声にものすっごくこだわるの。

 その執念が天賦てんぷの才を開花させたんだから、一概に悪いとは言えない。でもね、「時と場合を考えろ!」と声を大にして言いたいわ。


「殿下、ここはネージュ殿の言う通り、討伐を優先するべきです」

「そうだよ、ヴェント」

「いいやダメだ! このメンバーなら討伐はできて当たり前。だったら、より多くの(素材)を持ち帰ることを考えるべきだ!」


 シアンさんとタランさんが説得してるけど、殿下は首を縦に振らない。


 う~ん。私と婚約したころは、ここまでお金に執着してなかったのに、どうしてこうなっちゃったのかしら?

 ハッ!?

 まさか……私と付き合ったからってことは……ないわ…よ…ね?


 確かに私の方がお小遣いが多かったり、食べてる物のグレードが上だったり、衣装や小物が高価だったりしたけど、それは男性と女性の差のレベルよ?

 それに、私はお父様から商会をいくつか任されてたから、取り扱ってる商品のPRモデルも兼ねてたの。ほら、異世界でよくある、公爵令嬢のたしなみってやつよ。

 自分で言うのもなんだけど、私って結構有名人だったの。私が身につけた商品は、売れ行きがグーンと上がったわ。だったら、高価な物を身につけるのは、オーナー一族として当然でしょ?

 そのおかげで、他の公爵家じゃ無理よねーってレベルの贅沢ができるぐらい稼いでたわ。

 当然、殿下からプレゼントをもらったら、倍ぐらいのお返しをしてたわよ。ささやかなお礼の気持ちですって。


 あら? どこかから「お前のせいやないかーい!」って声が聞こえた気がするわね?


  ☆


 最終的に、殿下は折れた。

 私とペアを組んで、私は魔法でダメージを与えないという条件で、しぶしぶ首を縦に振ったの。

 私の名前を口にするときにぎこちなかったり、なるべく目を合わせないようにしてるのは、「ネージュ」っていう名前に何か思うところがあるみたいね。


 とにかく、これでようやく討伐に取り掛かれるわ。早速戦闘開始よ!


  ☆


 私は今、鳴り物入りで入団した超大物プレイヤーが全然結果を残せてない某チームの監督になった気分よ。

 シアンさんとタランさんペア、メチャメチャ苦戦してるんですけど!? ついでに殿下も…。

 3人ともS級モンスターと互角以上に戦えるはずだったのに、どうしてこうなったの!?


 戦況を端的に説明するわ。

 まず、タランさんの魔法は、爆発しまくる爆砕竜のブレスを相殺しきれない。なので、シアンさんが切り込めない。

 2人ともそうなんだけど、着弾点から離れてなきゃいけないのが超ネックになってるわ。

 殿下の方は、そもそも爆砕竜の動きについていくのがやっとというね…。


 私が魔導防壁を飛ばしてなかったら、とっくに3乙で討伐クエスト失敗よ(狩りゲー的表現)

 これは、城に戻ったら責任者を問いただす必要が……って、責任者はペアでここで戦ってるんだけどね。


 とにかく、この状況はよろしくない!

 このままじゃ、前回と今回の私の説明がウソってことになっちゃうわ!


 しかし妙ね。

 3人の魔法や動きは、訓練で見たときと同等以上よ。

 それなのに苦戦するって…。


 私の頭に、考えたくない仮説が浮かんだ。

 まさか…、今の爆砕竜の強さはS級を超えてる…とか?

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