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悪役令嬢だった私はスライムに生まれ変わりました  作者: 狩野生得
序章 悪役令嬢、スライムに生まれ変わる
1/13

1.悪役令嬢は断頭台の露と消えた?

恋愛ものは初挑戦になります。

よろしくお願いします。

 公爵家令嬢だった私、ネージュ・カデットは、断頭台の上で最期の時を待っていた。


「王家にあだなした大罪人よ、最期に言い残すことはないか?」


 投げやりになってる頭に刑吏の声が届く。

 最後に言い残すこと……か……。


 そんなもの、何も残ってないわ。


 婚約者を奪われた。婚約は一方的に破棄された。

 身に覚えのない罪状を並べられ、私は捕縛された。


 私は聞かれたことすべてに、嘘偽りなく答えた。全能なる神、ダール様に誓ってね。

 でも、私の言葉はすべて否定された。


 家名を守るために、家から縁を切られた。当然、名前も取り上げられた。

 そしてその日から、私は大罪人とだけ呼ばれるようになった。


 もう、何を言っても無駄ね。

 こうして考えるのにも疲れたわ。

 思い残すことがないわけじゃないけど、早く終わってほしい。


 そうね。そのためには、何か言わないといけないのよね。

 取り乱さない。命乞いはしない。悪いことはしてないから謝らない。

 それが貴族として生まれ育った私の矜持プライドよ。


「別にないわ。早く処刑してちょうだい」


 そう言い終わった瞬間、身体が消えていくような不思議な感覚に包まれた。

 そうか、死ぬってこういうことなのね。

 何も見えない、何も聞こえない。

 私の意識は、そこで途切れた……。


  ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


再生ルネサンス


 どこか遠いところから、若い男の声が聞こえた。

 私は意識を取り戻したようね。

 上手く言えないけど、眠りから覚めて目を閉じてるような感覚だわ。


 目を開けようとして、私は全身の違和感に気付いた。


 手がない。足もない。首もない。

 今の私は魂だけの姿――たぶん人魂ひとだまっぽい――だろうから、これはわからなくもないわ。

 この状態から強くなって幽霊やゴーストになると考えれば、不思議でも何でもない。

 でもね、体中がポヨンポヨンしてるのって、おかしくない?


 まあいいわ。

 目を開けて現状を受け入れましょう。


 目を開けると、私は真っ白なところに浮かんでいた。

 人魂みたいなものなんだから、これは当然ね。


 うわっ! なにこれ、視野がもの凄く広い!

 前後左右に上下、身体を動かさなくても全方位が見えてるの!


 人魂って、こんなにすごいモノだったのね。これならポルターガイストとか起こせそうな気がするわ。

 ううん、それどころか、呪殺とかもできちゃいそう。

 メラメラメラ。「こ・の・う・ら・み・は・ら・さ・で・お・く・べ・き・か(この恨み、晴らさで置くべきか)」とかね。

 壁抜けとか姿を消すのは当然できるだろうから、私を断頭台送りにした連中を探し出して……。


「あー、残念だけど、人魂じゃポルターガイストは起こせないし、壁抜けもできないぞ」

「!?」


 突然声が聞こえた。さっきの若い男の声だ!

 私は声がした方を見た。


 そこには、淡く光る青い物体が浮いてた。少し潰れた球のような形で、見るからにポヨンポヨンだ。

 スライムに似てるけど、目がなくて、頭のてっぺんがとがってない。そもそも、スライムは言葉を話せないはず。

 じゃあ、この青い物体は、いったい何者?


「俺はダール。見ての通りスライムだが、この世界を任されてる神だ」

「え゛!?」


 言葉にならない声が出た!

 目の前の物体が、全知全能の神ダール様ですって!?


 教会のレリーフに彫られたダール様のお姿は、御使みつかいたちにあがめられる太陽のよう。だから、ダール様は太陽の神様だと誰もが思ってた。もちろん、私もそう思ってた。

 なのに、それなのに、ダール様はスライムですって!?

 ……確かに形は似てるわね。それに、少しだけど光ってるし……。


 いいえ、待つのよ私。

 ハース大陸――私が生まれ育ったプルミエル王国がある大陸よ――のスライムは、いわゆる雑魚モンスター。それが神だなんて、そんなことはあり得ないわ。

 そもそも、外見がスライムとは違うし。


「あー、その件は、だな。モンスターが俺と同じ姿じゃ人間たちが討伐できなくて困るだろ? だから、ちょっとだけ形を変えたんだ」

「……!?」


 今気付いたけど、私の考えてること、ダール様(自称)に読まれてる!

 さっきから、私は考えてるだけなのに会話ができてる!

 そんな真似、神様か高位魔族でもなければできないはずよ。

 ……ということは、まさか……、目の前にいるのは……自称じゃなくて、本物のダール様……?


「ああ、本物だ」

「し、失礼しましたーーー!!」


 私は全力でジャンピング土下座を試みた。


 あ れ ?


 伸びあがった拍子に、自分の全身が見えた。

 淡く光る青いポヨンポヨンな物体が……伸びて……る?


 えっ? えっ!? ええぇぇぇぇぇっ!!?


 私……、ダール様と同じ姿になってる!?


 困惑中の私に、ダール様のありがたーいお言葉が届く。


「ふう、ようやく気付いたか。ネージュ、それが生まれ変わったお前の新しい身体だ。神種しんしゅのスライムだから、メチャメチャすごいぞ」


 あ……ありのまま今知ったことを話すわ!

 私は断頭台で処刑されたと思ったら、神種しんしゅのスライムに生まれ変わってたの。

 な……何を言ってるのかわからないと思うのだけど、私も何でこうなったのかわからないわ。


 普通に死んで、普通に弔われた人は成仏する。だから、幽霊やゴーストなど、いわゆるアンデッドモンスターの類にはならない。

 でも、無念が強いと幽霊やゴーストになる。弔い方が雑だと、ゾンビやスケルトンになる。

 それがダール様をまつる、ダール教の教えよ。


 だから、身に覚えがない罪で処刑された私がアンデッドになるのはわかる。

 身の潔白を明かしたい。私を断頭台送りにした連中にそれ相応の報いを受けさせたい。その思いは強いからね。

 でも、スライムになるなんて話は聞いたことがない。

 しかも、神種しんしゅだなんて。


 これって見た目だけじゃなく、能力も神様クラスってことよね。

 貴族の娘だったとはいえ、人が神様に近い力を得るなんて、普通は考えられない。

 そも、「しんしゅ」を「新種」じゃなく「神種」と変換できてる時点でおかしいわ。

 それに、「メラメラメラ。この恨み~」とか「あ……ありのまま~」とか、見たことも聞いたこともない言い回しがスラスラ出てくるのって、あり得ないと思うのよ。


 これは、ダール様にキッチリ説明してもらう必要があるわね。

新連載始めました。


ストーリー上のつながりはありませんが、神様の設定は拙作「俺、スライムに転生できました」(https://book1.adouzi.eu.org/n8082fd/)の主人公を流用しています。


よろしければ、感想、ブクマ、評価などお願いします。

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