表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「断罪の令嬢 ― 弁護士の記憶が織りなす逆転劇」  作者: 月白ふゆ
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/57

後日談2 王太子は、信じた

執務室は、広すぎた。


机の上には書類が積まれている。

だが、どれも急ぎではない。


ユリウスは、椅子に深く腰掛けたまま、動かなかった。


断罪は、終わった。

正確には、終わらせられなかった。


それが、ずっと胸に残っている。


――自分は、何を間違えたのか。


答えは、もう出ている。

だが、簡単には受け入れられない。


信じたのだ。

聖女を。

宰相を。

仕組みを。


それは、怠慢ではなかった。

少なくとも、そう思っていた。


国家は、即断を求められる。

迷えば、混乱が広がる。

誰かが決めなければならない。


だから、信じた。


信じることで、判断を短くした。


リリアナ・ド・ヴァルフォードが立っていた、

あの大広間を思い出す。


泣かなかった。

叫ばなかった。

ただ、問い続けていた。


――それは、裁けるのか。


あの問いに、

自分は答えられなかった。


いや、

答えようとしなかった。


「間違っているはずがない」


そう思う方が、

ずっと楽だったからだ。


王太子は、拳を握る。


自分は、裁いたのではない。

裁きを許した。


それが、

一番重い。


宰相は、責任を自覚している。

聖女も、沈黙を選んだ。


では、自分はどうする。


罰は、与えられない。

だが、忘れることもできない。


ユリウスは、机の引き出しを開ける。


そこには、

再審で使われた資料の写しが入っていた。


何度も読み返したものだ。


事実。

判断。

省略。

信頼。


どこか一つでも、

立ち止まっていれば。


その「もしも」が、

これから先、何度も現れるだろう。


「……信じる、か」


呟いて、苦笑する。


信じることは、

責任を放棄することではない。


確認し、疑い、

それでも選ぶ。


それが、本来の形だった。


ユリウスは、立ち上がる。


次に同じ場面が来たとき、

同じ選択はしない。


そう、決めた。


それが、

断罪のあとに残された、

王太子としての義務だった。


窓の外では、

冬の雲がゆっくり流れている。


国は、変わらない。

だが、

自分は変わらなければならない。


ユリウスは、そう理解していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ