第60話 ゴミ回収業者は
それは二日目の昼前にあった発言から始まる。
「あ、なっちゃん。今日何曜日?」
「え? ……っと、火曜日」
「燃えるゴミの日だ。外に出さないと」
「俺がなんとかするから、収集場所だけ教えて」
「駐車場脇に、大きな銀のボックスあるからそこかな?」
こんな異常気象の中でも、清掃業者はきちんと活動しているらしい。それの仕組みを整えたのは政府なのか誰なのかはわからないが、ゴミ出しが出来るのはありがたい。一度外を確認し、それらしきボックスという蓋を開ければ中には資源ごみなどの印以外空っぽだった。
このアパートを実質借りているのは紗夜と奈月だけだから、なにも入っていないのは当然だ。紗夜はまだ安静にしていた方がいいだろうと、奈月が何回か往復していきその中へと重たいゴミ袋を入れていく。
五回くらい往復した頃に、それらしき業者が来たので軽く会釈されたが。
「あ、どうも」
「どうも。……まだあります」
「あ、はい。あと二往復くらい」
「じゃ、ボックスいれなくていいんで持って来てください」
「ありがとうございます」
『クロニクル=バースト』の顔出しは基本していなかったし、声も変えていたために奈月がそれだと結びつかない。単純に『起きた』人間として認識されたかもしれない。あまり広めたくない理由もあったから、奈月は業者の指示に従ってゴミを出来るだけ下ろしていく。
向こうがプロなので、車両に詰め込むのは早かったが最後まで待ってくれていた。
「とりあえず、全部ですか?」
「はい。とりあえず」
「ほかの資源ごみも通常通り回収してるんで、『起きた』ばかりなら仕方ないですよ」
「あ、はい」
「ではこれで」
と、あっさり引き上げていくあたり、ほかのところでも同じ対応をしているのかもしれない。時間も午後一時だが業者として動いているのであれば普通だ。回収地域が多ければ多いほど、時間差があってもしょうがない。逆に田舎ほど早いとかであさイチで出さなければいけないことが多い。
「……よくここまで、回復したなあ」
空っぽになったボックスの中はまたこのあと掃除をすればいっぱいになるだろうが、そろそろ体力も限界なので一度寝たい。大手術から自然治癒程度への回復が出来るようになったとはいえ、まだまだ奈月も紗夜も少し丈夫になった程度の身体だ。軽く食べて寝たら、また片付けを繰り返さないと生活基準が整わない。
『まちゃ』と『メメ』にもまだ連絡が来ないし、こちらからも連絡していない。そろそろ落ち着く段階にきているだろうが、通常の救援物資があまり保たなかったのが痛い。買い物に行くのはいいのだが、紗夜の服を適当に風呂乾燥で乾かすのがようやく落ち着いてきた。
あとで、屋台でも元コンビニの建物でもどこか行こうと約束していたが、互いに眠気が勝ってしまい、整えたベッドでしばらく寝てしまった。
気が付いたときは、夜を通り越して翌朝の早朝とかになってしまうオチになり……せめて、生活リズムはもう少し整えようとお互いに決めたのだった。
次回は月曜日〜




