第48話 月峰紗夜との
ブラックかカフェラテのどちらがいいか聞けば、ブラックと言われたので渡してやった。少し温めから熱いくらいの温度になったら、少し水を抜くのに栓を開け。
奈月は濡れてもいいが、なんとなくぴっちりした浴衣からでも見える体のラインを直視出来ず……風呂場の椅子に座ることにした。
「……色々聞きたいけど。俺は加東奈月で、君は月峰紗夜だよね?」
「うん。それはその通り……中学以来? こうして会うの」
沸かし直しのボタンを押し、じゃばじゃばとお湯が沸いてくるが浴衣は脱がないままだった。流石に重くとも脱ぐ雰囲気にはなれないからだろう。
ホットのブラックだが、とっくに冷めているのかでごくごく煽る姿は少し男っぽいが顔もなにもかも女性そのまま。
おそらく、今までの並行世界でも『近く』にいたのは彼女なのか。まちゃでも藍葉でもメメでもなく、もっと他。
『誰でもない存在』。の中に混じっていたら、見つかりもしない。
それが最後の最後で、一番長く滞在していた並行世界でパートナーになりかけた相手だろう。苗字はそのままに名前だけいじった『月峰咲夜』と設定して。
「うん、中学以来……だ」
最初にダイブしたと『見せかけ』られた校舎裏の水道汚染。
あれはちょうど、紗夜と桑の実を食べに行こうと裏庭を通ってみた光景そのまま。つまりは、半分くらいタイムリープさせられていたのだ。奈月の肉体が手術開始と同時に……意識は別で動くように。
依頼を受けた父親も母親にも真意を告げず、目の前の彼女が『提案した』のかも今聞かないとわからないが。少なくとも、現状では情報が足りない。
態とにしないと混濁して、『消滅』に至ってしまうから避ける必要があった。それを、天災という『大災害』で……ここまでの環境保護程度で済むようにしたのは。
間違いなく、多くの代価を同時に支払った紗夜のおかげだ。裏工作をどこまでしたのか、これから話してもらいたい。お互い、一瞬でも死にかけた上で得た『現在』なのだから。
「えー? どこから話せばいい? つか、部屋大丈夫だった?」
「……めちゃくちゃになってたけど。なんで、外があんな氷河期手前??」
「環境汚染からの仕返しだよ。けど、ほんのちょっと視点をずらせば、『あの世』とかも共有出来たの。私が先に法則とかに気づいたから……二十歳の今日まで、ずっと意識を切り離してた。精神障がい者にして、支援を受けた人間ってことでずーっと君が健常者になれる方法探してたんだよ」
「え、待って? 紗夜もなんか持病あったの??」
「ADHDがグレーだけどあってねぇ? けど、おかげでクリエイター側の副業もらえたし、大学も休学してたけど。藍葉ちゃんとこのシゲくんのためにも頑張ってたんだよー? ただ厄介なのは、限界まで頑張ると食事も服薬も忘れるから……半分くらいタイムリープしてた」
「おい!! 俺もひとのこと言えないけど、会話頑張ろう!! なんか要点めちゃくちゃ!!」
「ごめん〜。ま、生きるか死ぬかなら、奈月くん助けたいがずっとあったもん。依頼来た時、即承諾したし」
「……ありがと」
奈月も大概会話に不十分なところがあったが、相手も不足が多いのなら補えばいい。とりあえず、次の話し合いの前に腹が減ったのでカフェラテを煽ってから非常食を探すことにした。
次回は月曜日〜




