偽物笑顔の暗殺者―嘆きの精霊バンシーに取り憑かれた青年の行く末―下読み結果(文:カバ太)
はい。初めての方ははじめまして。お久しぶりの方はいつもありがとうございます。なろうの片隅でひっそりと活動している底辺作家のカバ太です。
という訳ではないですが、この度下読み企画の批評者の一人としてこのレポートを書いています。
この下読み企画、普段目立たない作品にスポットを当て紹介する側面もありますが、基本的には自分が作品を読んで改善点を上げる事で、その作品がより完成度が高くなればという思いで書かせて頂きます。
かなりのネタバレが入っています。そして、ボロクソに書きます。グロ注意です。耐性がない方はブラウザバックをして下さい。
この文で挙げる改善点はあくまで個人的な主観による個人の好みです。決して、普遍的な内容ではありません。時には見当外れの事も書いてしまうかもしれません。
まあ要するに、勝手気ままに上から目線で好き勝手に書くだけなので、真剣に捉える必要もないし、改善点を実行する必要もありません。その程度の内容です。
なお、可能なら猫屋敷たまる様以外でもこのレポートを読んだ上で今回の作品も読んで頂き、指摘の部分に妥当性があるか等、考えて頂ければ嬉しいです。ネタバレが嫌いな方は先に作品を読むのも良いと思います。
という事で、以後は書いてある内容を笑って読み飛ばせる方のみお読み下さい。
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作品名:偽物笑顔の暗殺者 ―嘆きの精霊バンシーに取り憑かれた青年の行く末―
URL:https://book1.adouzi.eu.org/n4341fy/
作者:猫屋敷たまる
(あらすじ)
暗殺者である青年、蓮は【嘆きの精霊バンシー】に取り憑かれている事により、特殊な方法で暗殺任務を遂行する。しかしそれは任務の為だけでは無く、自分自身の為でもあった。
記憶も無く感情の乏しい、天涯孤独な青年、蓮。
彼は仲間たちと共に暗殺依頼をこなしながら、やがて所属する暗殺組織やバンシーの謎に迫ってゆく事となる……。
(アピールポイント)
様々な負の感情からなる哀しみの生々しさ
(気になっている点)
それが分かったら苦労してません!(笑)
そもそもにして、PVが低い。連載当初から。恐らく、手に取ってみようと思わせる「何か」が足りないのだとは理解してます。
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このお話、どんな話かと言うと、まあ暗殺者の話という事になっているが、大体が依頼者であったり標的であったりが一癖も二癖もある。つまりは頭おかしいのばかり。
イメージ的には現代版必殺仕事人という感じ。この手のジャンルは結構好き。
現代社会に蔓延る様々な理不尽、愛憎劇。その闇は日常とは隣り合わせ。
止むに止まれぬ理由、時には身勝手な都合で「殺人」を依頼せずにはいられなかった心弱き人。
憎みや悲しみの怨念の篭った札束。
主人公は自身の異能を駆使して標的を追い詰め、無慈悲な鉄槌を下す。
…………こんな風に思っていた時期がありました。
けど違った。
自分も人気の無い作品しか書けない底辺作家なので、こういう事を書くのは筋違いだと思う。
それでも、という事であれば少しの間辛抱して読んで欲しい。
それなりに多くのなろう作品を読んで何度も思った事があるけど、底辺作品に共通する項目として「作者は設定を知っているが読者は設定を知らない」という大前提を忘れている作品が意外に多い。
今回もその典型。
始まりは暗殺の実行シーンからとなる。そして、その中で主人公の異能の紹介。いや、言いたい事は分かるんだ。作品の見せ場だろうし、主人公の特徴を紹介したいと。
……けど、最低でも自分という読者はそれを求めていない。
主軸を殺人とするなら、この依頼はどういった経緯で殺人を依頼するまでになったのか? 確かに最後に語られていたよ。依頼者は頭がおかしい奴だったと。けど、それだけ。依頼という形ではあるけど、人を殺したいとまで考えるようになった依頼者のエピソードを書かないで、納得しろというのは難しい。
また、主人公の能力を重視するにしてもバンシーの呪いが、とか言っても「?」としかならない。200m離れた所からスリングショットでヘッドショット……どうしてそんな事をする必要があるのか分からなかった。
主人公に感情が欠落しているのなら、普通に包丁で殺せば良いじゃんとしか思えない。下手に特殊弾を使用すると入手経路その他で足が付き易いので、その辺に売っている大量生産品で犯行を行なう方が後の事を考えると手堅い。
そもそも暗殺組織のサポートがとか言うなら、素直に銃を使えば良い。但しエアライフル。
要するに中途半端な導入になっている。
まあ、主人公の感情の欠落を表現するために次の殺しではかなり惨たらしい殺し方をしているけれど、感情の欠落している主人公がどうしてそれを選択したかのプロセスが無い。やはり消化不良。
アピールポイントで挙げるような人の感情を重視するなら殺人を依頼する経緯から、主人公を重視するなら主人公がどういう人物であるかを掘り下げて欲しい。
お陰で読んでいて「よー分からん」としか思わなかった。
全部は読めていないけど、この作品は万事がそんな感じ。
例えるなら、A=B、B=CならA=C という図式にならず、A=BならA=Cという書き方になっている。
いや、余計に分かりづらいか。
要は途中がバッサリ抜けているので、理解が追い付かない。映像があるならその手法でも良いだろうけど。小説は全てを文字で表現しなければいけない。
だから、その結果になるには何があってそれを選択し、実行に移したか? という嘘でも良いからそれっぽい説得力が必要となる。当然、その過程において合理性や妥当性は求めなくて良い。要は理由も無く結果が出てくるというのが問題。
戦闘シーンとかではとっさの事もあるのである程度は仕方ない所もあると思うけど、それでも大事な場面では伏線なりヒントを先に提示して、それを受けて結果を導き出すと読者はきっと「ああ、なる程」ときっと思ってくれる……筈。
何となく方向性が間違っているじゃないかと思う。
もう少し主題を限定して丁寧に書いて欲しい、というのが一番の感想。
個人的には折角三人称を使用しているのだから、主人公側の話しか書かないのではなく、依頼者側、標的側のエピソードを丁寧に描いて欲しい(多少はある)。
正直、主人公側の描写は依頼を受けるシーンと暗殺実行の直前くらいでも良い。それよりも依頼者の後ろ暗い人間性や標的の行動や人格が端的に分かるシーンを挿入した方が楽しい。調査報告や推理、会議がメインで負の感情を読者に感じろというのは難易度が高い。
一応は感情をリンクさせるようなシーンが入っているが、端的に情報だけを入れてもシチュエーションも何も分からないんだから「やっぱり、よー分からん」となる。
また、謎解き的な要素を全面に出したいなら、一人称にして、情報が主人公の目に見える範囲だけに限定して話を進める方が個人的には面白いと思う。
ざっくり纏めると、アピールポイントはもっと分かり易く丁寧に描こう。動と静とのメリハリは大事。中学生でも分かるレベルで話を組み立てて欲しい。もしくは小学生並みの自分の理解力に合わせて欲しい。
正直読んでいて……「バンシーの設定いらないんじゃね」と思う事が度々あった。今後どうなるかは分からないけど、今読んだ範囲では設定を使いこなせておらず、後付けで無理矢理絡めているくらいにしか読めなかった。
特にピアノの話はお話自体は好きなだけに、「バンシーも会議も要らないな。何ならあのチーム自体出番無しの方が好みだな」と思ってしまった。
大事な設定だと言うなら、早い段階でバンシーに拘る理由や主人公の背景に付いてもっと前面に押し出して欲しい。
あっ、そうそう。応募には「気になっている点」もあった。
PVの問題か。うん。タイトルとあらすじを変えよう。
タイトルはきっと拘りがあると思うので、それでもあらすじだけは変更した方が良い。
あらすじに付いては、
>暗殺者である青年、蓮は【嘆きの精霊バンシー】に取り憑かれている事により、
>特殊な方法で暗殺任務を遂行する。しかしそれは任務の為だけでは無く、
>自分自身の為でもあった。
この部分がそもそも不向き。
どちらかと言えば、どういうお話となるかを書く方がお勧めである。ウリの部分。決して「仲間たちと共に暗殺依頼をこなしながら」というのがこの話の肝ではないだろう。自身の作品はこういう話だという事を端的に纏める事をお勧めする。
こんな感じだろうか。
けれども、あらすじを変更してもこの作品においてはPVは大きく変化しないと思う。
理由は内容的になろうウケの路線から外れているから。
自分の作品も異世界転生ファンタジーなのになろうウケからは思いっきり外れているので、未だに一日のPVは平気で二桁の日もある。現実にはそういうものだと思って欲しい。
なら、どういう戦い方をすれば良いか?
今の路線を踏襲したいと言うなら、PVの大幅な増加は初めから諦めた方が良い。
けれども、そうした少ないPVでも、読んでくれた人が納得するような独自色の強い作品を求めれば良いだけである。
要するにニッチ市場の開拓である。
そうすれば少ないPVでもブックマークや評価が付き易くなる。類似品が無いのでその分野ではパイオニアになれる。世界で一つだけの花。
要は今よりももっと深掘りした作品作りをして欲しい。中途半端な事はせず、やるなら徹底的に。そうすればめでたくニッチ作品になり、一定数の評価は得られるだろう。
そうそう。読んでいて物凄い違和感があった。主人公のチームが暗殺組織の人間なのに常識人ばかりだった。依頼者や標的は頭のネジが抜けているのに、主人公の周辺に個性の欠片も無い。ただ仕事ができるだけのキャラになっている。殺しの会議のシーンで標的の女癖の悪さを揶揄する所とか、その時点で萎えた。
普通なら暗殺組織に属している段階でマトモな人間じゃない筈。言動や価値観に普通の人と隔たりがないと変。常識的な価値観のキャラなら、普通は殺人やそれに関わる事に耐えられない。
つまりはキャラが崩壊しているという事になる。もしくは話を進めるためだけの舞台装置的な役目でしかない。これは結構問題じゃないだろうか。
うーん。改めて見ると結構無茶な事を書いたかもしれない。
もし、今回書いた内容が的を得た内容であったとしても、改稿に付いては安易に考えないで欲しい。
それは勿論、労力的な面でかなりの負担になる事もあるが、小説というのは外科手術ではないので、悪い部分を取り除けばそのまま良い部分だけとなり、良い結果が生まれる……という事はあり得ないからだ。
トータルバランスというものがあるので、下手な改稿は改悪になる場合も結構あったりする。
個人的に改稿でお勧めするのは、一度全部捨てる事である。その上で、アプローチの仕方を変えて書き直す事である。
経験談となるが、自分も一度長編をボロクソに言われた事があり、全面改稿した。その時、同じ内容では同じ失敗をするだろうと、ほぼ新作として書き直した事がある。捨てた文字数は都合17万字。実はその後も何度か改稿はしている。
なので、改稿は中途半端な気持ちではお勧めしない。する時はドラスティックに。
……今回の作品は読みづらいとかそういうのではなく、読んでいてひたすら「?」ばかりとなってしまったので細かい点よりも大きな枠組みでの指摘とした。個人的には見せ方の問題だと思う。なので指摘に具体性は乏しいと思う。
今回の指摘はほぼ自分の好みだと思う。その程度の内容なので無視するも良し、真摯に受け止めるも良しである。強制はしない。反論も当然ありだ。
是非、今回の件を糧として今後も創作活動を頑張って欲しい。




