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勇者になってみませんか?  作者: 七瀬 優
プロローグ
7/75

早寝・早起き

「……カレーが……助けてあおちゃん……」

 悪夢にうなされるほどのカレーなんて作るなよな。

 隣に寝てるりんの耳元に口を寄せて「赤い、赤い、真っ赤に染まってる」とささやく。

「……許して……許して……カレー王子……」

 カレー王子ってのが何気に気になるな。どんな夢を見てることやら。


 夕食の激辛カレーを涙目で食べてたりんに何でこんなに辛くしたんだと聞いたら?

「甘口(子供用)だったから、激辛追加で普通味になると思ったんだよ」

 うん、今度、辛さ(+1)と甘さ(-1)で足して普通(0)にはならないという事をちゃんと教えておかないと地獄を見そうだ。

 悪夢にうなされ続けるりんのほっぺたを突きながら心に決める。


 ………………。

 …………。

 ……。


「っておかしいだろう!?」

「……うるさい……あおちゃん……」

 突然あげた俺の声にりんが寝言でこたえる。


 何故だ?何故こうなった?

 隣には俺の体を抱き枕のようにしがみついて寝言を言ってるりんが居る。

 俺の腕には女の子特有のある部分の感触が……。

 感触が……。

 ……。

 洗濯板じゃない程度に感じられた。

 そう思った瞬間、殺気じみた感触とともにりんにガブリと腕をかまれる。

 起きてるのか!?と彼女を見てみるが、寝ぼけてただけのようだ。

 まさか、寝てるときまで直感で感じ取ったりしてないだろうな……。


 それにしても、本当に何故?俺の部屋の俺のベッドでりんと一緒に寝ることになったんだ!?

 どうしてこうなった!?

 思えば激辛カレーの夕飯の後からおかしかった気がする。



 夕飯の後……。

 台所で食器を洗っているところに、

「あおちゃん、お風呂にお湯入れるね~」

 とりんが風呂場に向かったあたりで気づくべきだったのかもしれない。

 時々、うちに来て夕飯食べて、その後風呂に入っていくことがあるので、特に気にしなかった。

 食器洗いはそれなりの頻度で食器を割るのでいつもお風呂のお湯張りをしてるのだ。


 りんは風呂の準備ができると、まだ俺が食器洗いを続けてるのを見て、カレーを作った鍋がひどい有様でひどく手間がかかったのだ。

「あおちゃん、先お風呂入っていい?」

「おう、食器が洗い終わってないから先入ってろ~」

 このあたりで疑問を持つべきだったんだろう。

 学校から帰って直で俺の家に来たので、着替えも何ももってきてないはずだったのだ。

 

 そして、お風呂から出てきたりんが自分用のピンクの可愛らしいパジャマでリビングに戻ってきた時には、何かが手遅れだった……。

「いつ着替えを持ってきたんだ?」

 何かがおかしいと感じながらあせって問いかける。

「そこのタンスから出したんだよ」

 といつもと変わらない様子で風呂場の方を指差す。

 何かおかしい、俺の家のタンスに何でりんの服がしまわれてるんだ?

 何かまずいきがする。そんな思いを隠して、

「まあ、それはいいや。湯冷めする前に家に帰れよ」

 と帰宅を促してみる。

「えっ? 私今日はあおちゃんの家に泊まるんだよ」

 なんて事をぬかしてきたのだった。



 そして、そのまま今に至る。

 俺が風呂に入った後、すぐにベッドに連れて行かれたから全然眠れない。

 PCをかまおうとしたら「私もやる!!」とか恐ろしいことを言いやがるし。

 結局そのまま、12時前に寝ることになってしまったのだ。


 今回の件はどうやら、りんの企みというより、りんの母親とうちの母さんの企みっぽかった。

 文句を行って追い返そうとする俺にりんは母さんとりんのおばちゃんの手紙を渡してきた。

 中には、りんが心配なので、旅行中よろしく云々という内容が書いてあった。

 最後の方ポロっと「早く孫の顔が見たいわ」とか書いてあった気がするのは気のせいと思いたい。




 そんなこんなで眠れない夜をすごし、朝6時なんて時間にりんにたたき起こされることになる。

「朝だよ~あおちゃん~おきろ~~~」

 まだまだ時間があるんだから、ギリギリまで寝かせて……。

 もしかしたら、家の親はりんを使って俺の生活が乱れないようにしたかったのかもしれない。

「はやく、おきろ~。起きないと~~こうだ~~~」

 とジャンプして飛び込んでくるのが見えた。

 その一撃はマジで痛かった。

 PCを落とす前にちょっとのぞいたら、HPが1P減っていた。

 このステータス画面何気に怖くなってきた。

 HP :20/21

 いつかりんに、HP0にされないだろうか心配だ。

 HP0になったらマジでどうなるんだ??

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