突撃
彼女達の命運はどうなる?
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無謀に見えた『さやちゃん』の突撃。
その一撃はゴーレムの足にヒットし、意外にもわずかながら動きを止めさせる。
「ちっ」
ただ、攻撃は一度だけで、即座に離脱する。
最後に舌打ちした様に見えるのは気のせいだろう。
それにしても、ゴーレム相手にまともに攻撃が通るということは『さやちゃん』も『職業の証』の所有者なのだろうか?
スライム相手でもゲームアイテムを使わなければ攻撃も通じなかったことを考えると、最低でもあの手にした刀はゲームアイテムなんだろう。
「いけ~さやちゃん! あれ? 何で逃げるの?」
応援していたりんの戸惑いの声が聞こえる。
確かにりんの言うとおり、『さやちゃん』は逃げ出している。
あれは……。
「誘導ですか……。まあ、彼女は一気にしとめるつもりだったようですが……」
確かにゴーレムを引き連れて走っている『さやちゃん』の表情は不満げだ。
それにしても、何処に連れて行く気だ?
そのまま進むと学校を囲むフェンスだぞ。
まさか敷地の外に出すつもりなのか?
すると、突然ゴーレムの背が縮んだように見えた。
「うわ~おっきな落とし穴だ~私もやってみたい~」
確かに、ゴーレムは落とし穴に落ちていた。
縮んだように見えたのは穴に落ちたからか……。
「いけ~そこだ~やっちゃえ~~」
お、今度は『まーちゃん』が穴に落ちたゴーレムに何かを投げつけている。
一発一発当たるごとに、炎が吹き上がったり、雷撃が貫いたり、凍らせたりと色々な攻撃を加えている。
あれは多分、このゲームのアイテムだろうな。
さすがに投げつけて炎が上がる程度ならともかく、電撃で攻撃するなんてものは普通はありえない。
落とし穴で足を止めてあれで倒すつもりか?
一瞬そう思ったが、効果的なダメージを与えているようには見えない。
でも何故だ?
『まーちゃん』の顔には戦いが思ったとおりに進まない焦りのようなものは伺えない。
現に今も、派手な攻撃につられて回りから、犬? 狼? いまいち良く解からないが、獣型のモンスターの群れが二人を取り囲もうとしている。
それを阻止するため、『さやちゃん』は孤軍奮闘しているのだ。
『さやちゃん』はモンスターの群れの中に突っ込み当たるのを幸いと切りまくる。
殆どの獣型を一撃で沈めている。
何か鬼気迫るものがある。
先ほどのゴーレムを一撃で倒せなかったのはあれが相当上位のモンスターだったからなんだろう。
それでも時間をかければ倒せないこともなさそうに思えた。
「それにしても、妙ですね。最初は陽動かと思いましたが……。一向に別働隊の気配もしない。何の目的があっての行動なのでしょうか?」
博士は疑問を口にする。
確かにそうだ、今戦ってる最中にも回りからモンスターが集まってきている。
それに加え、グラウンドの他のゴーレムたちもゆっくりだが徐々に近づいている。
どんどん状況は悪くなっているようにしか見えなかった。
「あれ? そういえばしーちゃんはどこに行ったの?」
りんは、キョロキョロと窓の外を見回す。
そういえば、最初は三人だったな何時の間に消えたんだ?
「あ~みつけた~フェンスの所で何かしてる~」
確かにフェンスの所にいるな、何かで斬り付けてるような……。
あ、諦めて今度はハサミ? それともペンチかニッパーなのか? フェンスの網を切ろうとしてるようだ。
でも、すぐに諦めたようだ。
何がしたかったんだ?
すぐに『しーちゃん』は何処からか筒を取り出すと空に向ける。
次の瞬間、赤色の光が煙を上げながら空に上がっていった。
「あれは信号弾ですか。となると……」
博士のその言葉を待っていたかのように本校舎の正面玄関から沢山の生徒達が飛び出していた。
皆一様に両手にひとつずつ黄色い玉を持って、正門に一直線に全力疾走している。
いくら敵をひきつけたからといって、モンスターは残っている。
あれでは襲われたらひとたまりも無い。
実際に襲われそうになってる生徒が何人か居る。
「あ~みんながやられちゃうよ~助けなきゃ!」
りんが慌てるのも解かるが、今から駆けつけても間に合わない。
どうするのかと固唾を呑んで見守ると。
襲われそうな生徒は手にした黄色い玉をモンスターに投げつけている。
玉が当たるとモンスターは黄色い電撃のようなものに打たれて動かなくなる。
倒したのか?
いや、一定時間動かなくなるだけのようだ。
黄色い玉はマヒの状態異常を付与するアイテムか何かだったのだろう。
それでも、黄色い玉は一人2個だ。
その上外れたら効果はないし、当たっても効果が無い事もあるようだ。
何人かがモンスターにやられていくのが見える。
真っ赤に染まった死体になるのではなく、俺達がモンスターを倒したときと同様に光となって消えていく。
「これは、生存者を出来るだけ多くするために、犠牲をいとわず戦いを挑んだようですね。確かにこれなら一定数学校から出られるかもしれません」
そういう博士の顔は固い。
全員生存は望めない、相当数の犠牲者が出るとわかってるからだろう。
「ちょっとまて、今なら俺達もにげれるんじゃないか?」
「確かに、そうよ逃げましょうよ!」
いつの間にか部屋の生徒はみんな窓際でグラウンドを見ていたようだ。
逃げるチャンスと気がついて我先にと脱出用装置に飛びついている。
「まってください、今からでは間に合いません」
慌てて博士が止める。
確かに、殲滅して突破しているならともかく、全て一時的な足止めで強行突破しているのだ。
彼らが学校から逃げた後には正門近くはモンスターであふれかえっているだろう。
実際、彼らの周りにはモンスター達が大量に集まってきていた。
「くそう」
「なんで」
「どうしてこんなことになったの!?」
教室に居る男女の悲嘆にくれた声が聞こえるが、今逃げてる生徒もまだ助かったわけではない。
特に正門の前に門番のごとく立ちふさがる巨大なゴーレム、8~10mぐらいの大きさだろうか?
あれはどうするつもりなのだろう?
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たくさんたくさんやられちゃったよ~ りん』




