職業は?
やくそうは精神的なダメージも治すのか?
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あの後、りんは調子の悪そうな人の口に片っ端から『やくそう』を突っ込み始めた。
今、犠牲になってるのは柏木さんだ。
涙目を俺の方に向けて助けてと訴えかけているが『やくそう』配る程度なら実害はないだろう。方法はともかく。
俺は、りんをしばらくまかせると目線で伝える。
つたわらないだろうと思っていたが、柏木さんは悲壮な覚悟をにじませてうなずいてくれた。
後で埋め合わせするよと口の形で伝えて博士と向かい合う。
博士も薬品とかにしばらく手を出しそうに無いのをみて少し安心したように話始めた。
「先ほどの続きの前にまずはお礼を言っておく、ありがとう。正直あのままなら危なかった」
「いえ、それよりも先ほどの続きをはじめましょう」
博士が科学部部室にモンスターが進入できない理由についての推論を述べた。
『職業の証』を取得した場所の一定の範囲内がセーフティーゾーンになるのではないかという事だ。
たしかに、俺も『勇者の証』を手の入れたのは俺の家だし、りんも同じだ。
ある程度納得すると共に、りんの『遊び人の証』は別の場所で取得させた方が便利だったのではと少し後悔した。
「あ、ひとつ聞き忘れていたんだけど、何の職業の証なんですか?」
博士だから賢さが必須の職業だというイメージがあったんだが、あの証の絵がどうにも結びつかない。
いきなり『調べる』スキルを使うのもあれなのでたずねてみた。
「ああ、私のは武闘家ですよ」
え? 博士が?
その表情をみて俺の言いたいことが解かったのだろう苦笑しながら。
「あの選択画面で魔法使いとかの魔法の関係する職業は最初に除外したのですよ。私にとって魔法とは錬金術などの詐術の類でしたから」
「それでも何故、武闘家などを選んだのです? 他にも候補はあったでしょうに……」
魔法が関係しなくても、色々あったような気がするのだが……例えば商人とか……。
「私には似合いそうも無いですか……。確かにそうですが、そうだからこそでしょうか?」
「どういう?」
「体力があれば今以上に無理がきくではないですか。徹夜とか無茶もしやすくなるかと……。まあ、選ぶ時はそこまで深く考えていませんでしたが……」
「では何故? 証を手に入れようとしたのですか?」
「実際手に入れたならわかるでしょう。それまでの色々なプロセス。リンクの遷移だけでもあれは異常でした。色々調べてみたいと思うのは当然でしょう」
最後の答えで良くわかった。
博士はその名の通り博士なのだと。
何よりも、不思議な現象の解明が優先すると。
その後、博士の許可をもらって、『調べる』スキルを使ってみた。
博士
武闘家Lv12
HP166/182
MP36/36
多分適正にあってないためだろうレベルは俺よりも低かった。
それでも最大HPが俺と同じぐらいなのは前衛職の職業特性か?
逆にMPはりんよりもはるかに少ない。
あと、俺とりんの職業も博士に教えておいた。
博士はりんの職業には大いに納得していた。
その後、俺の職業については現状では口外は出来るだけ控えるように言われた。
「この状況下でその職業名を口にすれば、面倒な期待を背負うことになりかねませんよ」
博士はそう忠告してくれた。
確かにと納得してこれからは出来るだけ隠すことにした。
「さて、この場所が安全だと解かったのは嬉しいけど、この場所にずっと居るわけにもいかないよな? 何かこの校舎を出る方法はないのか?」
「2つほど認識が間違っています」
博士は深刻そうな顔になって小声で話を始める。
1つ目。
現状この部室は結界で守られて安全ではあるが、夜になると効力が弱まり守られる範囲が怪我で生徒が寝ていた部屋だけになる事。
周りのモンスターが凶悪なものになる事。
そのために夜まで皆で此処にとどまり続けるのは不可能だということだった。
一度夜の学校に来たことがある俺はそれが間違っているとはとても思えなかった。
それ以上に今夜も結界が持つ保障があるのかという事すら疑問だった。
博士もそれは不安に思っているらしく、賭けようとは思えないと言っている。
2つ目。
俺はてっきりこの校舎だけの異変と思っていたのだが、暗幕をめくり窓の外を見せられて、それが間違いだと言う事を知らされた。
校庭のグランドは数体の大なモンスターが多分ゴーレムで間違っていないだろう。
それが闊歩していた。
その上、校門の前にひときわ巨大なゴーレムがその場を守るようにして立ちふさがっている。
そのほかのモンスターを探してみると、校庭に不自然なふくらみが幾つかあるのが見える。
多分何らかのモンスターが隠れているのだろう。
そのほかグランド以外の場所も木々が植えられた近くに動く木のモンスター、あれはキラーウッドだと思う。
10や20じゃ利かない程の数が居る。
プールや池の方からは水生のモンスターの姿も何種類か見える。
此処からじゃ良くわからないが本校舎の方もモンスターであふれているのだろう。
つまり旧校舎を脱出しただけでは意味が無かったのだ。
ただひとつ朗報なのが、この科学部部室には火災の避難用に筒状の滑り台のようなやつ、博士の言葉では火災救助袋が設置されているという事だった。
一人ずつ降りることになるので、時間はかかるが、校舎内をショートカットできるのは助かる。
「結構まずい状況なんだな。その上時間制限まである」
俺のつぶやきに博士はうなずいている。
「あ、さやちゃんだ~それにしーちゃん、まーちゃんも居る! まーちゃん無事だったんだよかった~」
いつの間にか窓際まで来ていたりんが外を見ながら嬉しそうに声を上げる。
『まーちゃん』以外の心配はしてなかったのか? そう疑問に思うが、素で「何で?」と返されそうなのでやめた。
こんな異常時でも心配するまでもないと思われてる二人の事を知るのが何気に怖かったのだ。
「いけ~さやちゃん、やっつけちゃえ~」
『さやちゃん』は、なんとゴーレムの一体に切りかかろうとしていた。
彼女が比較対象として見えたことで思ったよりもでかいことが解かった。
彼女の身長の3倍程度、軽く5mは超えている。
スライムにすらゲーム内のアイテム以外ではダメージを与えられなかったんだ。
ゴーレムなんてなおさら……。
俺は、あわてて窓を開けて叫ぼうとしたが、窓はびくともしない。
それでも、締め切った室内で叫んだ。
「無茶だ、やめろー」
当然その声が届くことも無く、『さやちゃん』はゴーレムに斬り付けていた。
りん「何かまだ顔色がわるいよ~もっと食べないと!」
さな「だ、大丈夫。元気一杯!」
りん「顔がまっさおだよ。だめだよ無理しちゃ」
さな「だめ、お願いだからもうやめて。助けて~来栖川さん~」
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りん「↓のリンクを一日一回クリックしてね~」
りん「やくそう食べて元気いっぱい!」
りん「みんなも、けがしたらやくそうだよ~」




