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勇者になってみませんか?  作者: 七瀬 優
第一章 名称未定 りん「りんの大冒険がいいよ!」
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うちの学校の名物部員

 今日も放課後がやってきた。

 う~ん、なんだがやけに早い気がする。

 まるで、授業中がショートカットされたような……。

 まあ、それだけ授業を適当に聞き流してたって事だろうな。

 今日は、そんなに寝てないはずだしな、うん。


「あおちゃん、あおちゃん、帰ろうニャ」

 りん、その言葉まだ続けてたのか。

 俺が描いた猫の落書きはそのままだけど、その言葉使いまで続けなくてもいいだろうに。

 そういえば、授業中もこの顔で通したけど、何気に教師に注意されてなかった。

 本命、りんが居眠りしていてそもそも顔を見ていない。

 大穴、りんの奇行になれて教師すらスルーしていた。

 う~ん、大穴もありそうで怖いな。


「あおちゃん? 聞いてるニャ?」

 おっと、考え事で返事が送れたな。

「悪い、少し考え事してた」

「じゃあ帰るニャ!」

「わかった、少しまってろ」

 俺は荷物をまとめながら、何か忘れてるような気がしたが。

 ま、忘れているって事は重要じゃないって事だな。


「よし帰るか!」

「うん、ニャニャニャニャ!?」

 りんが返事を返そうとした瞬間、遠くの方で爆音が響いた。

「なんだ?」

「なにニャ? なにニャ? 魔法かニャ?」

 教室の窓を開けて音のしたほうを見ると、特別教室が集まった特別棟の1階から煙が出ていた。

 あれはたしか理科室? 科学実験室? 名前は良く覚えてないが科学の実験をする部屋だったはず。

 使ったのは1度か2度ていどで殆ど使った覚えはない。

 使わないなら作るなとは思うが、法律とかで使わなくても、作りなさいとでも書いてあるんだろうな……。

 

「わ~~火事だニャ! あおちゃん、火事だニャ!」

 りんが妙に興奮してた。

 まあ、火事の野次馬に真っ先に駆けつけるからなこいつは。


「ああ、あれは気にしなくていいわよ」

 俺達が騒いでるのに気がついたのだろう、近くの女子が話しかけてきた。

 そういえば、あの爆音で騒いでるのは俺達だけだな。他のやつらは普通にスルーしてる、なぜだ?

 そんな疑問を読み取ったのだろう、

「放課後の爆発といったら、博士の仕業よ。まあ、今日はいつもよりなんか早い気がするけど。いつもは部活が始まってからだったはず」

「博士ニャ? 魔法じゃないニャ?」

 りんが不思議そうにたずねる。

「魔法?」

 予想外の言葉が出て、女子はたずね返していた。

 まあ、魔法じゃないかとか聞かれたら、普通そういう反応を返すよな。

「あおちゃんみたいに、魔法でバーンとやるんじゃないの!?」


 りんの言葉に女子は俺の方に顔を寄せて、「手品でも使って、りんちゃんをからかったの?」と小声でたずねてきた。

 俺は、口の前に人差し指をたててシーと内緒の合図を送る。

 彼女は、少しあきれた様子で「ほどほどにしなさいよ」と口を動かしていた。


「りん、あれは科学って言う魔法なんだ!」

「科学!? 眠くなりそうな魔法だニャ」

 りんはそれで納得してしまった。

 う~ん、それでいいのかりん。

 あと、女子の目が「あなたね~」とあきれ半分、非難半分の色をしていた。


「それにしても、何でみんな知ってるんだ?」

「それは、部活動してる人間は周に3~4回遭遇するからな。そんな事より~りんちゃん~かわいい~~」

 近づいてきた『サヤちゃん』が答えてくれたけど、りんを見た瞬間役立たずになった。

 しょうがないので、女子に続きを聞く。

「名物生徒ってやつか?」

「そうね、科学部部長の博士、柔道部部長の番長、剣道部の鬼ひ……なんでもない最後のは忘れて」

 『サヤちゃん』に目を向けられた女子は慌てて言葉を取り消す。

 なんか、震えてなかったか今。

「って感じで、この学校の部活動には3人の有名人がいるのよ」

 博士と番長と鬼か……。

 色々武勇伝がありそうな気はするが、まあかかわる気も無いし、さっきの爆発が日常茶飯事なら特に気にする事でもないな。

「じゃあ、りん帰るぞ~」

 かばんを手に取り、りんのほうを向くと。

「たすけてニャ~~~~~」

 りんが『サヤちゃん』にもみくちゃにされていた。

 う~ん、これどうしたらいいのだろう?


「来栖川、東堂いるか~」

 そこに、救いの神ならぬ俺達の担任があらわれた。

 あれ? 職員室にいったんじゃ?

「来栖川、田中の件で少し聞きたい事があるんでちょっと来てくれ」

 あ、そういえば、今日の終わりのホームルームの時に、田中が行方不明で家に帰ってないって話をしてたな。

 その時にバイトの話が出てたから、バイトの話を聞いた生徒は職員室に来るように呼び出されてたんだった。

 ああ、どおりで帰宅部の生徒が殆どいないわけだ。

 あいつ、暇そうな奴に片っ端からバイトの話してたからな~。

「解りました~すぐ行きます~」

「えええ~~~いっしょに帰らないのニャ?」

 りんが不満そうな顔で、俺の方を向いてくる。

 まあ、すぐに終わるだろうからまってろと言おうとしたところで、

「あと、東堂。今日はお前の居残りだと、何人かの先生ワクワクした様子だったぞ。早く言った方が身のためだぞ」

 ああ、そういえば居眠りで全然起きないりんに放課後に補習を言い渡してたな……。

 それから担任はりんの顔の落書きはスルーなんだなやっぱり。

 マジで大穴のりんの奇行に慣れているってのがありそうだな……。


 その後、職員室で田中のバイトの話を聞かれたが、他の生徒と殆ど変わらない話ですぐに解放された。

 りんの方は、数人の笑顔の先生に囲まれて空き教室に連れて行かれた。

 教師の眉間に血管が浮かび上がってたのは見なかった事にしよう。

 あと、りんの「たすけてニャ~あおちゃん~」と言う声が聞こえた気がするが、幻聴と言う事にしておこう。



 りん、授業中は居眠り注意されたら起きるぐらいの事はしような……本当に……。


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