レベリング開始?
「今日明日とレベリングするぞ!」
朝のリビングに俺の宣言がむなしく響く。
目玉焼きトーストを食べながら、りんは不思議そうに首をかしげる。
「むむむんむ?」
りん、口にいっぱいに入れたまましゃべるな。まあ、「レベリング?」とたずねたかったんだろうが。
RPGは殆どやらなくても、俺のやってるのは良く見てたんだからレベリングぐらいわかりそうなものだが。
モンスターをバシバシ倒してるぐらいにしか思ってなかったんだろうな。
「レベルアップの為に経験値をガンガン稼ぐ事だよ」
「?」
りんは不思議そうに俺の方を見ながら、ゴクンと口の中のものを飲み込む。
「あおちゃんゲームでもするの?」
「…………」
こいつ遊び人の事とかすっかり忘れてないか?
そういえば、遊び人のスキル事は昨日学校から帰ってから話題にもなってなかった。
本気で忘れてたのか!? あれだけスキル『こける』の効果で痛い目にあったのに!?
案外大物かもしれない。別の言い方をするとバカなんだろうけど。
「遊び人に転職~とか、魔法を使う~とかは覚えているよな、一昨日の事だったよな?」
「あああああああ~~~~昨日いっぱいころんでおかしいと思ってたんだよ! 私、あんなにどじじゃないんだから!」
うん、まるっと忘れてたわけだな。
あれだけこけて痛い目みたはずなのに、まったく思い出さないところが、りんだな。
「まあ、そういうわけで、この土日で効率よく経験値を稼いでレベリングするぞ」
「ダメだよ~今日明日はあおちゃんと一緒に買い物行く約束だよ!」
りんがあわてて約束を主張する。
「それは前に却下したはずだぞ」
りんの癖に約束を既成事実にしようとは……。
「ええええええええ~」
そんな不満そうな声を上げてもダメだ。
「それに、レベルを上げたらりんも魔法が使えるようになるかもしれないぞ」
ま、たぶん無理だけど……。あくまでなれるかもだからな。
「あおちゃん、レベリングって何すればいいの!?」
うん、ちょろいなりん。
そんな感じでレベリングする事になったのだが、おバカなりんは気がついていないが、何故レベリングをするかはまったく説明していない。
まあ、りんは説明された気になってそうだが。
その訳は、昨日の夜見た夢だったりする。
遊び人のりんだけがガンガンレベルを上げていって、俺のレベルより遥かに高レベルになっていたのだ。
まあ、レベルが高いだけならいい。
問題は、レベルUPによりステータスが大幅にあがり、りんのほうが賢くなっていたのだ。
そして一言、「あおちゃんそんな事も解らないの?」
なんて悪夢を見たのだ。
あのりんにバカにされるなんて考えただけでも恐ろしい。
りんのレベルに追いつくのは無理でも。少なくともあいつよりは賢いままでいたい。
じゃないと、何か大事なものをなくす気がする。
朝食後、俺の部屋でりんがワクワクしながらまっている。
「レベリング~レベリング~レベルUPで魔法使い」
そんな鼻歌まで歌っても、魔法使いにはなれないぞ……たぶん。
まあ、そんなりんは置いておいて。
肝心の経験値稼ぎの方法だ。
さてどうしたものか……。
まずはステータスを見て考える。
名前:来栖川 葵
職業:勇者Lv6
性別:男
HP :43/43
MP :22/22
SP :5
EXP :145/180(経験値取得履歴)
力 :6
体力:7
知力:8
魔力:6
速度:7
幸運:6
昨日の予定通り、寝る前の魔法でレベルが1つ上がっている。
やはり、魔法を無駄打ちするのが一番効率がいいのだろうか?
ただ、魔法を使いまくるとやる気が減衰してそのまま寝る事になるからな。
魔法を残りMP1残して勉強などやりまくるのがいいのか?
う~ん。
「あおちゃん、あおちゃん。私は? 私は? なにやるの?」
りんが暇そうに聞いてきた。
レベリングだけを考えるなら、りんはこけまくるのが良いのだが……。
1分間に1度こけたとしても8時間で480回、計960Pの経験値になるのだから。
だけどまあ、今回の裏の目的が俺が追いつく事だしな。
それに、こけまくるなんて酷い事をやらせるのも気が引ける。
「りん、適当にその辺で遊んでるか俺のベッドで寝てろ」
「ええええ~それじゃいつもと一緒じゃない! レベリングは?」
「それで経験値がはいるんだからいいじゃないか」
「あ、そうか~」
そのまま俺の漫画をあさりだす。
うん、何気に遊び人は、りんにピッタリの職業だったかもしれないな。
続きだ。俺のレベリングはどうしたら効率がいいか。
う~ん。
そういえば、今MPが0になって寝たとしたら1日寝てるのだろうか?
24時間眠りこける?
実際明日まで眠ってたらすごい時間の無駄にはなるが……。
休日にしか試せないのも確かだな。
今日試しておくか。24時間勉強したとしても24Pしか経験値入らないしな。
物は試しと、早速魔法を使いまくる。
今回は回復魔法の方を使う。火事の心配がないしな。
回、回、回……回……回。
何もかも面倒。もう寝る……おやすみ……。
「えええええ~あおちゃんもう寝るの!?」
りんの声がした気がしたが、考えるのも面倒だ……。




