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勇者になってみませんか?  作者: 七瀬 優
プロローグ
10/75

観察と考察

 りんの様子がおかしい。

 ずっと俺の方を見ているのだ。

 これが、にらみつけるなり、期待に目を輝かせるなりなら、放置なり、期待を裏切るなりの対応はしようがある。

 だけど今回は、俺の一挙手一投足を見逃さないと言った感じなのだ。



 例えば、

「りんの好きなテレビそろそろ始まるんじゃないか?」

 と教えてやれば、急いでテレビに行って録画のセットしにいく。

 って……「それに上書きするな!」

 そんな感じで、俺が録画のセットをする事になる。

 いつもなら、テレビを見に行ってまるっと忘れてしまうのに……。

 まあ、一挙手一投足を見逃さないようにしつつも、録画しに行く時点でりんらしいといえばらしいのか?


 また、

「戸棚にりんの好きなポテチがあったぞ」

 とお菓子で釣ってみる。

 すぐにお菓子のしまってある戸棚に行って。

「うわ~マヨポテだ~~」

 と喜んでいる。

 いつもなら、その場でポテチをあけて食べ終わるまで静かなんだが……。

 今日に限っては、ポテチを持ってきて、俺の方を見ながらポテチを食べ始めたのだ。

 やっぱりりんらしくない。

 まあ、よそ見しながら食べるから自分の指ごと食べて、痛そうに涙目になってるのはりんらしかもしれない。


 そんな感じで、食器の準備でよそ見をしながらだから、食器をガンガン割ったり。

「今日は夕食の準備手伝うな」


 お風呂に入ってる時は、こっそり、戸を少しあけて顔を赤くして覗いてたり。

「風呂ぐらいゆっくり入らせろ!」

 おい、りん何故そこで見つかったと驚く。

 お風呂の戸は半透明になってるから丸見えだろ!


 トイレまで覗こうとした時には、扉ごと蹴り飛ばして、急いで鍵を閉めた。

「いたいよ~」

 うん、涙声が聞こえる気がするが、気にしない。



 と言った感じで今日はりんがおかしいのだ。

 確か、おかしくなったのは、放課後の辺りからだったとおもうのだが……。

 何かおバカなことでも思いついたのだろうか?

 もしかして、探偵ゴッコ?

 そんな子供でもあるまいし高校生にもなって……と普通なら考えるのだが、りんだからな。

 まあ、自室でそんな事を考えてる今も、ドアをほんの少し開けて覗いてたりする。

 あれで見つかってないつもりなのだろうか?

 目線があっても気にしてないし。

 う~ん、あれはあれで一種の才能なのかもしれない。


 さて、どうしたものかと考えたが、まあ1日もすれば飽きるだろうと放置することにした。

 それに都合がいい事に、今ならPCをいじっていても邪魔してくる気配はない。

「私もやりたい~」

 とか言わないだけマシだとおもうことにする。

 目線は……気にしたらダメだ……。



 と言うことで、りんに邪魔されずに、勇者のメダルについて考えれそうだ。

 まず、メダルのアイコンをクリックして、いつものステータス画面を立ち上げる。


 このステータスについて確証がほしい。

 今のところ半信半疑だが、このステータスが現実に影響を与えるのかどうかをだ。

 少なくとも、現実の情報を一部とはいえ反映してるのは確かなのだ。

 名前とか装備品とか……。

 これが本当に現実と完璧にリンクしてるのか?

 それとも、それっぽいお遊び画面なのかちゃんと確かめておきたい。


 と言うことで、まずはステータスだ。


 名前:来栖川 葵

 職業:勇者Lv3

 性別:男


 HP :21/21

 MP : 6/6

 SP :0

 EXP :21/25(経験値取得履歴)

 力 :3

 体力:3

 知力:4

 魔力:3

 速度:4

 幸運:3



 経験値は昨日たしか11だったから10ほど増えてる。

 レベルUPまでは4だな。

 まあ、今のところ4時間ぐらい必要か。

 

 『経験値取得履歴』を確認する。


 ダメージLv1 (取得経験値 1/10回) 2P

 学習Lv1(取得経験値 1/時間)+6P

 運動Lv1(取得経験値 1/時間)+1P

 改心Lv1(取得経験値 1/10回)+1P


 今日は学校の授業はまじめに受けてたから、学習で6時間分は問題ない。

 運動も、通学とか色々あるし、歩くだけでも経験値が入るっぽいので、合計1時間以上歩いたって事だろう。

 問題は、『ダメージLv1』と『改心Lv1』だ。


 ダメージか……。

 1/10回ってあるから、10回ダメージを受けると1Pになるのだろう。

 さて問題は、2P分つまり、20回もダメージを受けた覚えがないのだ。

 もし、20回ダメージを受けたなら最低でもHPが-20されているだろう。

 ステータスを見る限りHPは21/21全快になってる。

 う~ん謎だ。

 

 もう一つの改心ってのは……。

 

 

 かい‐しん【改心】


[名](スル)今までの行いを反省し、心を改めること。改悛(かいしゅん)。「―して出直す」

 ※goo辞典より


 

 ネットでしらべるとこんな風に出てきたが、まあ特に変わった意味もなさそうだ。

 俺、今日何か反省するようなことあったかな?

 う~ん、りんじゃあるまいし……。

 あ、まさか。

 りんを改心させたって事なのか?

 それなら、何かありそうだぞ。

 まあ、1回分ってのがいまいち解らないが、まあたぶん、りんを何か改心させたんだろう。

 それ以外に思い当たらない。

 

 う~ん、となるとダメージもりんがらみな気がしてきた。

 ただ、ダメージって言うからにはHPが1は減ってるはずだよな?

 おかしいな。

 ダメージを受けたあと回復でもしたんだろうか?

 そういえば、回復ってどうすると回復なんだ?

 レベルUPしたときにHPが最大値になってるから、レベルUP時に回復するのか?

 確か昨日の朝、りんにベッドから落とされたダメージが夜帰った時には回復してたはずだ。

 1Lvあがっていたから、そう考えるとつじつまはあう。

 まあ、正確な考察するには、レベルアップ前にダメージ受けておいて、レベルアップと共に回復するか見るしかないか。

 後は何だろう?

 RPGとかで順当にいくと、宿屋なんかで寝ると回復だよな?

 やっぱり寝ると回復するのだろうか?

 となると、レベルUPで回復したんではなく授業中の居眠りで回復した可能性もあるのか……。

 やっぱり、情報が足りないな。

 追々しらべていくことにしよう。

 う~ん……寝ると回復か……なにか引っかかる気がするんだが……。


 

 あとは……。

 そういえば、昨日スキルを取得してそのままになってたんだった。

 あれは確か……。


スキル

 火魔法1

 ガイド


 ああ、ガイドだ。

 説明不足のこの画面だから、少しでも説明がほしくて取ったんだった。

 まあ、ヘルプ見るのにSP必要ってのもひどいゲーム(だよな?)な気はするが……。


 つかうには……。

 う~ん、どうしたらいんだ?

 ためしに、

「ガイド」

 と小声でつぶやいてみる。さすがにりんが覗いてる前で聞こえるような声だすのはちょっとな……。

 

 …………。

 ……。


 まあ、何も起こらないか?

 魔法の時もそうだったし、まずはコマンドで確かめてみるか。


コマンド

 ・アイテム

 ・装備

 ・魔法

 ・スキル

 ・ガイド

 ・設定


 お、『ガイド』の項目が増えてる。

 早速、『ガイド』っと。


ガイド

 ・ガイドについて(NEW)


 項目は一つだけか。

 ポチっと。



---------------------------------------------------------------------------


ガイドについて


 

 へっ、ガイドとか唱えてやがる。

 バカじゃね?

 中二なの?

 wwwwwwww


 そんなバカなお前に、俺様がおしえてやるよありがたくおもえよな!

 そら!感謝の言葉が聞こえね~ぞ~。

 

 この『ガイド』のスキルはお前らみたいなバカのためのスキルだからな。

 取った奴はすなわちバカなんだよwwwww

 

 で、バカなやつがバカらしく、バカな事をやった時に、何がバカなのかわからないお前たちに

俺様が教えてやると言うありがたいスキルなんだよ。

 ありがたくおもえ。


---------------------------------------------------------------------------



 ………………。

 何故だろう?

 画面を殴りとばしたくなった。

 握ったこぶしがプルプル震えている。

 俺は、冷静だ。

 うん、冷静だ。

 PC壊しても何の意味もない。

 そうだ、解ってる。

 解ってるはずだ。

 なのに、どうして無性に殴りたくなるんだ!

 


 スーハー、スーハー。

 大分落ち着いてきた。

 『ガイド』これはあまりにひどいスキルだった。

 こんなヘルプ作った日にはそのゲームはもう苦情が殺到するのではないだろうか?


 だが、この文章の書き手の性格はともかく、情報がほとんどない俺にとっては、口調はともかくとしてある程度有用な気はする。

 すこし、いやめちゃくちゃシャクではあるが、背に腹は変えられない。

 …………。

 ……。

 しかたなく、『ガイド』のコマンドをクリックする。


ガイド

 ・ガイドについて

 ・魔法失敗について(NEW)

 ・MP0のリスク(NEW)


 項目が増えていた。

 それに、気になっていた魔法についての内容だ。

 あんまり気が進まないが……。

 ……。

 ……。

 しょうがない、ポチっと。


---------------------------------------------------------------------------


魔法失敗について

 

 魔法に失敗するなんてバカだろお前。

 それも一番簡単な初級魔法とか、死んだ方がいいじゃね?

 wwwwwwwww


 まあ、俺様が失敗しない魔法の使い方について教えてやるよ感謝するんだな!

 

 まずは、唱える魔法の必要MP以上のMPを持ってることだ!

 まあ、当たり前すぎるよなwwww


 まあ、それすらできないバカが居るんだがwwww


 

 でだ、それすらできないバカに俺様が、いい事を教えてやろう。


 魔法の名前ってやつは『魔法』のコマンドで好きな魔法を選んだ時に出る。


  ・魔法発動設定

  ・呪文設定


 この二つのうち、『呪文設定』で好きに変えられるんだぜ!

 一つ賢くなったな。俺様に感謝するんだぞ。


 だがまあ、バカなお前の事だ、適当な魔法名にして使いこなせなくなるだろうから教えてやる。

 

 魔法名(呪文)ってやつは長ければ長いほど、威力が大きく消費MPがでかくなんだぜ。

 よかったな一つ賢くなって。


 設定の入力した文字数で変化するからよく覚えておけよ。

 例えば、

 

 ほのお 3文字

 炎   1文字

 

 って感じでだ覚えておくんだな。

 まあ、バカなお前には無理だろうけどな~

 wwwwwwwwww


 あとは、当たり前だがまあ、バカなお前には解らないかもしれないがwwww

 何に魔法を使うかを決めないと発動しないぜ。

 まあ、お前に当てたいとおもって発動させるだけだから、バカなお前にもできるかもな~

 wwwwwwwwwwwwww


---------------------------------------------------------------------------



 ぐっ。

 こらえるんだ俺。

 スーハースーハースーハー。

 

 見たくなくなるヘルプってのもある意味すごいな……。

 だが、魔法についてある程度はわかったぞ。


 コマンド→魔法→火・単体小→呪文設定


 テキストボックスの中に火・単体小と言う呪文が書かれていた。

 どうやら、このまま直接入力で呪文名を変えられそうだ。

 

 あと、下の方に。


 消費MP5:1*5(1MP/文字)

 

 とあった。

 この呪文はどうやら1文字で1MP消費するらしい。

 呪文の威力がふえていけば、この文字数あたりの消費MPもどんどん増えていくんだろう。

 前回使った時は最大MPが3しかなかったから。

 MP不足だったのか……。

 

 今現在のMPは6だからこのままでも一応使えはする(MP的には)。

 まあ、ためし打ちするだけだし、1文字で試してみるべきだろう。

 威力が強すぎるとか、MPが足りなかったとかいやだしな。


 そして、呪文を変更する。

 

 火

 消費MP1:1(1MP/文字)


 日常会話で「ひ」という文字が出てきた時どうかとおもったが、さっきの説明だと目標を設定しないと発動しないらしい。

 まあ、一度試してみる分にはこのままでいいだろう。


 さて、準備は整った。

 このステータス画面が本当に現実にリンクしてるか確かめる時だな。

 そうおもいながら、部屋を見回す。

 ドアが少し開いていた。


 あ、そうだった、りんを忘れてた。

 彼女に見られるのも何かいやだな……。

 何とかしてしばらく外してくれないだろうか?

 

 ドアを開けてみると、ポテチの袋を持ったりんが廊下で眠りこけていた。

 りん、そんなところで寝ていると風邪を引くぞ。

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