第9話 小鳥遊さんは積極的です
チュンチュンチュン
あー、朝から二匹の雀仲良く戯れてるわ。その光景が眩しい。
「ハァー」
「ねえ? 何で私を顔を見た途端にため息出るわけ?」
「さあな。何でだろうな。そのアホなお摘むに聞いてくれ」
「アホなお摘む?……あれ? これって朝から私、バカにされてる?」
昨日、凪ママにひっぱ叩たかれた後遺症なのだろうか? 朝からアホ前回だな。俺の幼馴染みは。
しかし、昨日の勇気を振り絞った一斉一代の告白は見事に失敗した。小鳥遊さんとの誤解も解け、凪に告白する覚悟も決めてたのにだ。
自分の母親に脳天チョップされて記憶飛ぶとかどこのギャク世界ですか? 神様。
「でもさぁ。士郎」
「んー? なんだ? 凪凪」
「ナギナギ? 何? その変なアダ名?!……昨日、私に本当は何を伝えたかったの? 教えてよ」
「俺の幼馴染みがこんなに可愛いわけがないって、言おうとしたんだ。以上、終わり」
「はい? 何? それ」
「……何でもない。妹に読まされた不屈の名作を少し言い換えただけだから」
「不屈の名……作?」
「それより良いのか? 俺とゆっくり離してて、今日から朝の部活のスケットなんだろう? テニス部のさあ。近くの莉桜高校との合同朝練の練習試合で確か人数足りないとか昨日、言ってなかったか?」
「昨日? ああ! そうだった。すっかり忘れてたぁ! ご、こめん。士郎。私、先に学校行くからぁ!」
俺のその台詞で凪は慌て始め、電光石火で学校に向かって走り始めた。
「おう。達者でな~」
などと言って、軽く凪に手を振る。
しかし。運動神経が良すぎるも困り者だよな。本当の所属は写真部なのに、うちの学園は部活人口が減ってるからそこら中の運動部からスケットに頼まれるだからな。
ちなみに俺は帰宅部である。自分の時間大事。
そして、ようやく1人で登校できる時間が来た。
毎朝、あんな可愛い幼馴染みと登校出来るのは嬉しいんだが。1人の時間も大事である。
「どれ。コンビニでも寄ってMAXコーヒーでも飲んでゆっくりと学校に行く…」
「おはよう。桐生君。それで? 昨日の夜。ナーちゃんになんて言おうとしたのかな?」
「…か──ん? 小鳥遊さん。おはよう」
突然、俺の目の前に現れたのは、俺と偽造恋人関係にある小鳥遊 柊さんだ。
今日も朝からそのキラキラオーラで絶対的な存在感を放っている。
こんな可愛い娘が本当にいるのかよ。と思いたくなるが、実際に目の前に居るんだ。
眩しい笑顔で、俺に……何か怒ってないか? これ?
「うん。それで昨日の夜、ナーちゃんになんて言おうとしたのかな?」
──RPGの村人A の様に同じ台詞を繰り返す金髪美少女。
「ていうか。俺と凪の会話。いつから聴いていたんだ?」
「うん。桐生君が(はぁー)って溜め息付くところからなか?」
「それってまるまる最初の方からじゃん」
「うん。それで昨日の夜、ナーちゃんになんて言おうとしたのかな?」
再び同じ台詞を……つうか。何でこの人こんなにニコニコしてんの? しかも段々、俺にジリジリと近付い来る。圧を感じるんだが?
「た、小鳥遊さんに関係ないだろう。昨日のマスドの時に、俺達の勘違いの告白も皆に分かってもらったんだしな」
「関係なくは無いよ~、私は今、桐生君の彼女なんだもん」
「いやいや。それは疑似カップルってだけ……んぐ?!」
「うんうん。何の事かな? 私の大切な彼氏の桐生君」
最早、当たり前の様に小鳥遊さんは俺の唇に右手薬指を押し当てて、俺の言葉を遮った。
「……だから疑似カップルだろうが。小鳥遊さんは何でそんなに、俺が昨日の夜、凪に言った事を気にするんだよ」
「ほうほう。ナーちゃんと何かあったと? それで? それで?」
ノートもペンも持って無いくせに、メモを取る様な仕草をしはじめた。可愛いな。おい!
つうか。これ、昨日の夜の俺が凪に告白した話をこの娘が聞き出すまで、事情聴取が終わらないんではなかろうか?
なら。さっさと告白は失敗に終わったけどなにか? てっ教えて早くMAXコーヒーを買いに行こう。早く飲みたいからな。
昨日の誤解も解けたし。別に話したところで何も起こるまい。
「いちを昨日のマスドで、凪の誤解も解けたからさ。告白したんだよ。勇気を出して凪にな。そしたら、凪の奴ちゃんと聞いてなくてさ……フエラァ?」
最後まで言おうと言っていた台詞を小鳥遊さんは俺の両頬の頬っぺたおもいっきり摘まんで遮った。
「ふ~ん! 桐生君は私って言う。彼女さんが入るのに、ナーちゃんに告白しようといたんだ? ふ~ん! へー、これってあれだよね? 浮気ってやつだよね? 桐生く~ん!」
「痛たた! しゃめろぉ。頬が延びるだろうが。それに俺達。実際は付き合ってな…ヒファイ?!」
「付き合ってるよね? ラブラブだよね? 私達。昨日、恋人繋ぎして帰ったよね? それでナーちゃんに告白ってどういう事なのかね? 恋人く~ん!」
小鳥遊さんはニコニコ笑顔で俺の両頬に大ダメージを与えた、満足したのか。機嫌も良くなった。
そして、俺達はその後、一緒に登校する事になり、小鳥遊さんの提案で、手を恋人繋ぎをした状態で登校する事になったんだが。
小鳥遊ファンクラブが見たらぶちギレるであろう光景間違いなしである。
「フフフ。桐生君の手を大きいね~」
「……スゲー、恥ずかしいんだけど」
こんな甘々な俺達の光景を登校中の生徒達が、沢山入る事に俺は心の中では戦慄していた。
「……そのうち。俺、君のファン達に血祭りされるかもな」
「ん~? 何で~? 私の恋人君」
小鳥遊さんはクスッと笑いながらそう言うと。俺の右肩にくっ付いて、周囲に対して、俺との 恋人アピールを更に強めた。




