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第4話 朝比奈 凪の憂鬱


《昼休み中 食堂内》


 私の名前は朝比奈 なぎ。あの桐生 士郎の幼馴染みにして、小鳥遊たかなし 柊……ヒーちゃんの一番の親友の女の子です。


「そんで相方の説明もろくに聞かず。カバンをフルスイングして逃げて来たと? 凪」

「それよりも私が気になるのは、何で泣きながら暴飲暴食してるんですか? 凪さん」

「ヒァウラ! アナハタカツフナテツフルユユ! (だって! 私、告白する前に好きな人取られちゃったんだもん)」

「食べ物を含みながら喋るな。行儀悪いぞ」

 この厳しい言葉のナイフを平気で刺して来る娘は筒井つつい 明日菜アスナ。中学からの友達で。

「凪さんは昔から理性が飛びやすい人ですね」

 そして、こっちの丁寧語で話す眼鏡っ娘の女の子が藤林ふじばやし 竜胆リンドウさん。竜胆さんとも中学から友達になったんだっけ。


 2人共。士郎といつも一緒につるんでいる、まこと君と快斗かいと君の彼氏なんだけど。まあ、そんな話は置いておいてよ……


「クウゥー! 何でよりにもよって、士郎がヒーちゃんと付き合うわけ? 何で? 何か2人に接点あったのかな? ねえ? (モグモグ)」

「そんな。私等にキレられてもねぇ……それと怒りながら飯食うな。食べ物頬張り過ぎて、顔がリスみたいに成ってるせいで。せっかくの可愛い顔が台無しだぞ」

「それは仕方ありません。凪さんは戦いに負けたのです。何の戦いに負けたのかはあえて言いませんが。凪さんは負けました。惨敗です。まさに戦わずして負ける。孫子もビックリの敗戦です」

「……ねえ? リンちゃん。何か私に恨みでもあるのかな? 何でそんなに私をいきなりディスるのかな?」

「いえ。特にありませんが。強いて言えば、凪さんはいじれば楽しく反応してくれるからでしょうか?」

「な、何それ? それって私がただの馬鹿みたいに聞こえるだけど」

「はい! 凪さんは可愛いらしいお馬…ムグッ!」

「話が脱線してるちゅうの。今はあれでしょう? 桐生君が本当に小鳥遊たかなしと付き合ってるかどうかって話でしょうが」


 アスナが竜胆さんの口を両手で抑えて喋れなくしちゃった。

 最後まで聞き取れなかったけど。竜胆さん、私をお馬鹿と言いたかったんだよね?

 絶対そうだよね?


「凪もさぁ。もう少し冷静になりなよ。ナツが朝、言ってたでしょう。昨日の放課後。本当は小鳥遊たかなしさんじゃなくって、凪の事を呼び出そうとして間違えたってさぁ」

「……い、言われてみれば。確かにそう言っていた様な」

「そう。だから桐生君は十中八九、凪に告白しようとしてたって事じゃない」

「では、アスナさんに聞きますが。何故、それで桐生君の間違い告白が成功し、小鳥遊たかなしさんの様な超絶美少女と付き合うの事に成功したんでしょうか?」

「それは……知らんけどさあ。まあ、小鳥遊さんって学年問わず人気だし、しょっちゅう告白されているみたいだから。桐生君をていの良い隠れて身のにした偽造カップルになろうとか、小鳥遊さんから言ったじゃないの? 桐生君も桐生君でしょっちゅう告白されてるし。丁度良かったんじゃないの?」

「……そんな偽造カップルがわざわざ昼食時の中庭でイチャイチャするものですかね?」

「は? 中庭でイチャイチャ? 何それ?」


 私は頭を傾けながら不思議そうな表情でそう言うと。


「あそこを見れば分かるかと」


 竜胆さんが外の中庭の方を指差した。


「「ん?……へ?」」


 私とアスナは竜胆さんの指差す方を追いかけてフリーズした。


「ねえ。アスナ……士郎がヒーちゃんにはい、あ~んしてもらってるんだけど」

「……それを真が羨ましいげに見てる。アイツ。後で折檻せっかんしてやる。許さん」


 私はその光景を見て呆然となり、アスナはアスナで真君の事でキレてる。


ピロリ~ン!


 そんな時、突然、インサタの受信通知音が私のスマホに流れて来た。


「あっ! ナツからだ……えーっと。何これ? 結果発表。パフパフ……?」


「「結果発表?」」


  何? この怪しいメッセージは下にスクロールしてね?……何か書いてあるの?


《正式に士郎とひいらぎが付き合う事になったってよ(柊の強制)……ドンマイ。凪凪》


「士郎とヒーちゃんが……正式に付き合う? 何で? ヒーちゃんのアホ、N・T・Rマニア ……」────ドサッ!



「はっ? 凪? どうした? いきなり」

「凪さん? ちょっと。お気を確かに!!」


 私はあまりの衝撃に数分間。気を失った。



《放課後 第二校舎》


「良し。ここからなら誰にも見つからずに1人で抜け出せる……小鳥遊たかなしさんのファンクラブの奴等に見つかる前に帰るか。八つ裂きにされる前にな」

「何で八つ裂きにされるの?」

「何でって、そりゃあ。あんな可愛い娘にいきなり彼氏が出来たってなったら。その対象物たる彼氏をほふりに来るのは当たり前で……てっ! 小鳥遊たかなしさん」


 プラチナブロンドの綺麗なロングヘアの髪。透き通る様な蒼色の瞳に少し大人びた顔立ちのが屈託なく笑顔というのは、こんなにも可愛く、そして、美しく見えるんだと見惚みとれてしまった。

 

「気づくの遅いし……ねえ、こんな所コソコソしてないで一緒に行きましょう」

「一緒に行く? どこに?」

「フフフ。そ・ん・な・の放課後デートに決まってるでしょう。彼氏君」


 小鳥遊たかなしさんは可愛いらしいウィンクを決めながら、俺にそう告げた。

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