第36話 お仕置きするね。彼氏君
《桐生家》
「ただいま~! 聞いてよ。兄貴ー! 今日さ。学校で告白されちゃってさあ~、どうしようー……てっ! 何か人増えとる?」
「あっ! お帰り。凛ちゃん~、ご飯もう少しで出来るから待っててねー!」
「凛。お帰り」
「り、り、り、凛さん。お久しぶりです。お邪魔してます」
「……んー? 兄貴大しゅき幼馴染みトリオが数年振りに揃ってんの?」
◇
パシンッ!パシンッ!っと。とある部屋の一室で鞭のしなる音がなる。
「このッ! えいッ! もうっ!」
「………なあ。何で婦警のコスプレなんかして、自分の手をペチペチ叩いてるんだ? 柊」
「士郎くんを止めきれなかった。私を諌めているの。こんなに短期間で女の子に告白されるなんて思わなかった! もっと士郎くんを束縛しとけば良かった! 私、士郎くんの彼女失格だよぉ」
「いや。それで何で自分の身体をペチペチ叩くんだよ。それとそのエッチなコスプレは何だ?」
短いミニスカートにパツンパツンの上着。色々と目のやり場に困るんだよな。
「これは私の趣味よ。士郎くん。コスプレイヤーなの。最近は萌と一緒にブラスタにも投稿してるの」
「あー、あの抱き合ってエッチな…ごはぁ?!」
「エッチじゃないもん。趣味だもん。全く! 変な事を言うのはこの口かね? 士郎くん」
「ちょっ! また頬っぺたを引っ張るな。引きちぎれるだろう」
か細い腕の筈なのに何で俺の頬っぺたをつねる時だけ、ゴリラみたいな力で引っ張るれるんだ? 柊は。
「なら謝って! なーちゃんに襲いかかった事とか。萌にキスされた事とか。光莉ちゃんが士郎くんの事を好きになった事とか全部、私に謝って! それで私を抱きしめるてくれないと許してあげない」
「いや。どれもこれも俺は巻き込まれたんだぞ。それに前にも言ったけど。俺達は本当に付き合ってないだろう。彩希さんが勘違いで暴走したのも、俺達が本当に付き合ってる様に見えてたせいだし。そろそろこの辺で俺達の間違った告白から始まった関係も……ぐも?!」
柊の奴。俺が柊に対して、何もしないのを分かってるからって両手で俺の口を塞いで。
「疑似恋人解消は絶対にあり得ないよ。桐生く~ん。全く全く本当に全く~、私の性格をま~だ。分かってないな~、私は基本的に1度好きになったら絶対手放さなさいないのだよ。分かったかね? 浮気彼氏君」
「ぐぁ! 駄目だ。それじゃあ。俺に想いを伝えてくれた萌萌と彩希に悪いだろう。それに俺が本当に好きなのはな……」
再び口を塞がれ。
「……この先を言うのは許可しませんなぁ~、これは本当にお仕置きをして私のワンちゃんになってもらわないといけなくなっちゃったね。士郎くん~……少し痛い目にあってもらうね」
「ふーふー!」止めろ! 柊。暴走し過ぎだぞ!」
俺がそう避けんでも、柊は俺へのお仕置きを止め様としなかった。
◇
《再び リビング》
「へ~、それで色々とあったから、小鳥遊先輩が。現在、兄貴を母の部屋で婦警官のコスプレをして鞭で拷問中って凄いやばいシチュエーションだね」
「んー? 何が?」
「だって小鳥遊先輩って、超弩級のドMって昔から私達後輩の中でも有名だもん。わざと後輩の私とかに昔は自分のお尻を鞭で叩かせてたしさ」
「プフゥ! そんなまさか。清楚なヒーちゃんに限ってそんな事、あるわけないよ。ねえ? 萌ちゃん、光莉ちゃん」
「………ちょっと様子見てくるね」
「わ、私も行きます~」
「ちょっと! 2人とも何でそんなに慌ててるのよー!」
「あー! 幼馴染みトリオが拷問中の部屋にやばい状況にしかならないねえ~、これも兄貴がモテるのがいけまけんなぁ」
◇
《母の部屋》
俺は今、自分の母の部屋で、同級生の女の子に何をしているのだろうか?
婦警官のコスプレをしたMッ娘のお尻に優しくペチペチと鞭を打ち付けているんだが。
「これで分かったか?」
ペチッ!
「ニャンッ!」
「こうか?」
ベイッ!
「シャイッ! わ、分かったよぉ! 柊が全部勘違いしてたのが分かったから。もっとお尻を鞭で勢い良く叩いてほしいの。士郎くん!」
「じゅあ。俺との関係をフラットにしてこれからは友達として過度なスキンシップは取らないと約束をしなさい」
「それは嫌なの。絶対に別れないからね。士郎くん」
「この分からず屋がぁ!」
ピチッ!
「ヒゥーン! 最高なのぉ! お尻痛いよぉぉ!」
…………柊の奴。今、最高とか言ったのか? しかも何でそんなに嬉しそうな顔をしているんだ? つうか全然痛くないだろう? ただ鞭をお尻に優しく触れてるだけなのに、何でそんなにお尻をフリフリさせてるんだ?
「ハァーハァー、やっぱり。士郎くんは最高なんだから。絶対に別れないからね。このままゴールインするんだも♡」
綺麗な金髪を乱れさせて恍惚の表情を浮かべている。俺は今、小鳥遊柊の真の変態姓を引き出してしまったのかもしれない。
「くっ! 俺もなんだか柊をもっとペチペチしたくなって来たぞ」
「うん! 士郎くん。もっとしよう! 私のお尻をもっも優しくペチペチしてえぇ!」
「ああ! いくぞ。柊!!」
「来てえぇ! 士郎くん!!」
ガチャッ!
「「へ?」」
「なにこれ? どういう状況?」
「ヒーと士郎君がSMプレイで遊んでいるね」
「き、記念撮影しなくちゃ」
カシャッ!
「それで士郎にヒーちゃん? 可憐さんの部屋で何を変態ごっこしてるのかな?」
明らかにぶちギレている凪が、俺と柊の肩を握る。
「あっ……いや。凪、これは柊との交渉をだな」
「そ、そうなの。私の士郎くんと愛を確かめあっていただけなの! だから邪魔しないで! なーちゃん」
「ん~? 私の士郎君?……やっぱり。ヒーちゃんに任せたのが駄目だったね。ヒーちゃんは優しすぎるから、絶対に士郎にお仕置きなんてしないでイチャイチャし始めると思ってたんだ。だからね」
「ここからは……」
「私と萌ちゃんの2人で士郎とヒーちゃんをお仕置きしてあげるよ。撮影は光莉ちゃんにやってもらってね」
「ま、任せて」
ニコニコ笑顔で俺から鞭を取り上げる。凪。何この子。凄い怖いんだが。
「な、凪。俺達の話を聞け! 柊は悪くない」
「そ、そうだよ。なーちゃん。私の士郎くんは何も悪くないんだよ」
「………私達の前で夫婦漫才などしおって。成敗するうぅ!!」
ペチンッ!
「ニャアアア!! お尻がひふぁいよ! なーちゃん」「ギャアアア!! お腹を擽るな。萌萌」
その日の夜、俺の母親の部屋から。男女が叫び声を響いたと、数日だげ近所の噂になった。




