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第32話 俺は何もやってない


咲花さな先輩。桐生先輩の頭をなでなでしていいですか?」

「駄目よ。真奈美まなみちゃん、桐生君は私が最初に味見するんだから……やっと小鳥遊柊や朝比奈凪の目を盗んで連れて来れたんだから」


 何だ? さっきから女の子同士で、俺の事を話題にしてるのか? 


 確か食堂でカレーうどんをすすっていたら拘束されて、連れて来られる途中で変な匂いがするハンカチを口に当てられたんだよな。


 どうする? まだ意識が戻った事をさとられないように寝たふりをしてた方が良いんだろうか?


「………」

「桐生先輩。全然、起きませんねー! パンツ一丁にして、襲っちゃいますか?」


 襲う? どういう事だ? 風紀委員の奴等、俺に何をする気なんだ?


「……そうね。授業もバックレて、私達、ここに居るんだし。時間も無いものね」


 風紀委員会が率先りっせんして授業をサボってんじゃねえよぉ!


「それじゃあ。皆、我が学園の王子様の服を脱がし始めましょうか。学園の風紀を正す為に」

「「「「キャー! はい! 頑張ります。咲花さな様~」」」」

「キャー! はい! じゃねえよ。何、風紀委員会が男子生徒の服を脱がそうとしたんだよ」


 ツッコミ所が多く過ぎて、ツッコミの衝動に耐えられず。アホの子達についつい叫んでしまった。


「あら? 起きてるじゃない。飛鳥学園の王子様。さあ、ブレザーを脱いでYシャツをはだけさせなさい。記録として写真に残すから」


パシャッ!パシャッ!


 スマホのカメラを連写させているのは、榛原はいばら咲花さな。飛鳥学園の2年生にして、風紀委員会の委員長だ。茶髪にセミロング、はかなげが印象的たロリ巨乳だ。中学校からの俺の同級生だ。


「桐生先輩~、起きてるなら言って下さいよ~、危うくチュウしちゃう所でしたよ~」


 そして、隣の女の子は中学校からの後輩で、伏木ふぎ真奈美まなみ。赤髪かかった髪質で小悪魔的な性格をしている。


 そして、柊よりもその小悪魔性はSっけが強い。


「咲花っちに真奈美。相変わらず。真面目そうに見えて、頭ぶっ飛んでやがるな。何で俺が寝ている間に、俺の半裸写真を撮ろうとしてんだ? 風紀を守る風紀委員会がさあ」

「黙りなさい。これもあの人の為だし、それに風紀委員会の皆はアンタの裸のブロマイドが1人1枚は欲しいのよ」

「……お前等変態か? あの人って誰の事だよ」

「それは秘密ですよ~、桐生先輩~! でも~、最近、目立ち過ぎましたからね~、凪先輩。小鳥遊先輩。夏先輩も……飛鳥学園の王子とあんなに近付いてちゃって、あの人達を怒らせるなんて~、可哀想な人達~」


 は? 何だ? 何で凪達の名前が出てくるんだ?


「そうね。今日の放課後位には、他の委員会の子達も、それぞれのミッションに動き出すかもしれないわね」

「ミッション? 何の事を言っているんだ?」

「お花詰み。飛鳥学園の王子に手を出した罰って所ね。桐生君、貴方。もっと自分の立場や価値を知った方が良いわよ。モテるって自覚をね。女の子の嫉妬っていうのは本当に怖いんだから」


 咲花っちはそう告げると。クスッと笑った。何だ? 俺の価値? 本当にどういう事だよ。


「桐生先輩~、力ある上級生の嫉妬って本当に怖いですよね。小鳥遊先輩みたいに自分からグイグイ行けば良いだけなのに、影から見守るだけで良いとか言う人達ばっかりな人達で。いざ、桐生先輩に彼女さんが出来たらぶちギレるですもん」

「上級生の先輩達がぶちギレたのか? 何にだよ。何でぶちギレるんだ?」

「あれ? 知りませか? 飛鳥学園の2年生や3年生の間でずっと起こってたっていう、とある争奪戦を? 知らないって怖いですね。咲花先輩~」

「…………」


 咲花っちは俺を見つめて、何故か黙っていた。


「まあ、私はもうとっくに諦めて他に彼氏を作ったから良いけどね」

「え~、私はまだまだ若いんで諦めてませんよ~、だってこの顔とこの性格の良さ……誰がこんな良物件ほっとくと思うんですかね~?」


 真奈美は俺のほほをスゥーっと小指ででると、俺の唇に小指を乗せた。


「むぐ……止めろ。何してる!」

「あん! ただのスキンシップじゃないですか~、もうっ!」


 状況が本当に良くわからないが、最近、俺と柊が一緒に行動していたのを気にくわない上級生達がいたって事か?


 それで俺と仲が良い凪や夏が巻き込まれそうになってるって事でいいのか?


「まぁ、風紀委員会が命令された事は、桐生君の写真を撮ること。それでさっきの食堂の件はチャラにするって言っていたわ。ミナトは」

「あー、女先輩。桐生先輩の写真欲しがってましたもんね~、ど陰キャで、桐生先輩とまともに会話が出来ないとか言って~」

「ちょっと! 私の親友をド陰キャとか言うの止めてくれない? 光莉の悪口を言ったら怒るわよ!」

「え~、ごめんなさい~、咲花先輩~、わざとじゃないんです~、謝ります~」

「全然、誠意が込もってない気がするんだけど?」


 しめた。なんか口喧嘩をし始めたぞ。この隙に自分のクラスに逃げちまおう。


 ガラガラ……


 俺は急いで風紀委員室の扉を開けて廊下へと飛び出した。


「あっ! 咲花さん。桐生先輩、真奈美ちゃんが……」

「逃げてきます~」

「へ? あっ! コラかー! 待ちなさい」

「あ~、待って下さい~、桐生先輩~」


 人を半裸にさせて撮影しようとしてる奴等が迫って来てるのに、誰が待つか。


 俺は廊下に飛び出すと脱兎の如く。早足で廊下を駆け抜け、旧校舎まで移動し、一端、いつも柊と食事を共にしている場所までやって来た。


「ハァハァ、一端ここに隠れて何分かしたら、教室に戻って……」

 チリッ……ビリビリ!!

「がぁ? 何だ? 何でいきなり身体に電流が?」


ドサッ!


「…………フフフ。き、桐生君。捕まえた……や、やっと会えたね。フフフ」

《図書委員 彩希あき光莉ひかり (ヤンデレ)》

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