第30話 おはよう。士朗君、ちょっと何するの~
リビングで朝食を終えた俺は、自室に戻って学校に行く支度を整えている。
朝から激しいスキンシップにあった。
「それで何で、未だにシーツにくるまって俺の後を付いてきたんだ? 萌萌」
「んー? だってボクの制服。士朗君の部屋に脱ぎっぱなしだったんだもん。取りに来るのが普通だよね?」
未だに裸の状態でいる西蓮寺萌が俺の後ろに立っていた。
「じゃあ。早く、制服を着て学校に行くぞ。高校が隣だからってゆっくりしてたら遅刻するしな。テニス部の部活もあるんだろう?」
「今週はテスト期間だからないよー、ねー、それよりもさぁ。ボクのパンツ履かせてよ」
「はぁ? 君、何を言ってんだ?」
萌萌はニヤニヤしながら俺の方へと詰めよって来る。うす緑色のパンツを持ちながら。
「ボクの着替えるのが遅くなると遅刻しちゃうかも知れないんでしょう? ボク、着替えには凄く時間がかかる方だからさぁ。士朗君がボクの制服を着させてよ? お願い」
うす緑色のパンツを俺の目の前に持ってきて、パンツの両端を伸ばしている。そして、可愛らしくウインクして来やがった。
これで確定した。萌萌はドスケベな女の子だと。いやそんなの土日の風呂場のやり取りで分かってはいたが。こんな誘惑みたいな事をずっとされると────プツンッ!っと自分の中の理性の糸が切れる音が脳の中に響いた。
ガシッと萌萌の今日、履く予定のパンツを右手で掴む。
「へ? 嘘? もしかして本気で履かせくれるの? 嘘だよね? ボク、寸止めのつもりで言ってたんだけどさ……」
「萌萌。尻をこっちに向けろ。パンツを履かせてあげるよ」
俺はそう言うと萌萌の腰辺りに身体を近づけた。
「ちょ、ちょっと待って。どうしたのさ急に、ただのちょっと過激なスキンシップをしたいただけじゃないか」
パチンッ!
「シャアアア?! 何でいきなりパンツを乱暴に履かせるんだい?」
「うるさい。痴女、朝からこんな身体で誘惑しやがって」
「ちょっと! どこを触ってんの?」
「……そんな痴女には、お仕置きが必要だよな? 確か今日は朝練が無かったんだよな」
「う、うん。無いけどそれがどうかしたの?」
「なら時間はまだ少しあるな。少しお仕置きしてやるから覚悟しな。萌萌」
「へ? 士朗君? どこ触っているの? ちょっと駄目! 駄目だったらー!」
「全て因果応報だろう。萌」
「そんな所、触っちゃ駄目えぇぇ!」
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◇
《通学路》
「じゃ、じゃあ。ボク、あっちだから! そろそろ行くね。2人共……また家で会おう」
「おう。またな……」
俺はそう言った後、萌萌に静かに近づき。萌萌の耳元へと更に顔を近付ける。
「な、何? 士朗君?」
(萌萌って意外と早いんだな。さっきはびっくりした)
「つっ//// バ、バカ。お、覚えてなよ。今度はボクが早くい……つっ//// 士朗君のバカ~!」
萌萌は赤面しながら、莉桜高校がある方向へと走って行った。
「……士朗君。萌ちゃんに何を言って何をしたの?」
「んー? キツイお仕置き」
「キツイお仕置き? お尻ペンペンとか?」
「お尻ペンペン? んー、それの亜種みたいなものかな。前的なやつ」
「士朗君の説明がちょっと理解出来ないんだけど」
「そのうち分かるよ。それよりも早く学校に行こう。遅刻す……」
俺は柊の右手を握って一緒に歩こうとした瞬間。
「士朗!! ひー、ちゃんと萌が士朗の家に一緒に暮らすってどういう事よ! 可憐さんは何でOKしたの? 士朗のお世話ならこの私がいるじゃな…んぐ?!」
大声で人ん家のプライベート話をどうどうと叫ぶ凪が現れた。
「アホー! 何、朝っぱらから大声で叫んでんだ。学校の奴等に聴かれたら、また変な誤解が生まれるだろう」
「プハァー、大丈夫よ。それくらい今の時間、この通学路にはナッちゃんしかいないから」
「……おっは~、凪凪。さっきの叫び声ナイスだった。ばっかり撮れてた」
ポチッ!
〖士朗!! ひー、ちゃんと萌が士朗の家に………〗
「えー? 本当に嬉しいなー、ありがとう。さっきの撮影してたの?」
「撮られてんじゃねえか! ばっちり証拠動画を撮られてんじゃねえか、凪ー!」
そのスマホの動画に凪の叫び声が、バッチリと撮られていた。
「こらー、ナッちゃん。悪ふざけが過ぎるぞぉ! 消しなさい」
「……おふっ! 柊柊く、擽るのは反則ー! け、消す。消すから待ってて~」
夏は柊にお腹を擽られるとスマホで撮った動画を削除した。
「……全く。朝は始まったばっかりだってのに本当に毎日、騒がしい日々だよな。毎日」
俺はそう思いながら、その光景を微笑ましく見ていた。




